〈BD〉私の撞球ヒストリー『My Billiards Days』vol.5 高木悠次(JPBAプロ/インストラクター)│後編│

 

6月26日に掲載した

高木悠次プロ

(JPBAプロ/インストラクター)の

インタビューの後編をお届けします。

 

※前編はこちら 

 

…………

 

取材協力:あそびば真野店(滋賀県大津市)

 

 

――前編で「Bクラスにしてビリヤードの道を選んだ」というところまでうかがいました。

 

高木悠次(以下、高):そうなんです。前回も話したように、『情熱大陸』で見た高橋(邦彦)プロに憧れて本格的にビリヤードを始めたので、最初からプロ志望でした。そして『ウイリー』のスタッフになって5ヶ月くらいでHRC(兵庫ローテーションクラブ)に入り、当時の風潮として「クラブ員だからA級で」と、A級になりました。

 

――上達が早かったのですね。

 

高:いや、ギリギリAあるかないかのレベルだったと思います。自分は変な意味で「いつもちょっと先を行っている」んです(笑)。HRC時代も『都道府県対抗』の代表になったこともないですし、『JBC』(当時存在した競技プロ組織。NBA傘下ではない)に入った時も平凡なA級くらいの腕前でした。「人間は環境に適応できる」と思っているので、「まだ早い」とは思わずに飛び込んでいく方だと思います。

 

――JBCに入られたのはどのような流れだったのでしょう?

 

高:確か2004年だったのですが、前年に結婚もしていて「家庭も持ったんだから、腹を括ってプロとしてやったらどうや?」的な感じで、当時勤めていた『吹田中央』(オーナー)の井上(淳介)さん(当時JBC)に声をかけてもらって決めました。

 

――JBC時代のエピソードなどをぜひ。

 

高:色々ありましたが、一番忘れられないのは、竹中(寛)さん(現JPBAプロ)と高見(剛)さん(JPBAプロを経て現在はアマ)と一緒にアメリカへ行った時の話です。『IPT』(2006年~2007年頃華々しく行われたが短命に終わった8ボールプロツアー)の試合に参加したのですが、竹中さんが事前に国際免許を取って、現地のレンタカーで移動していたんです。その時にパトカーに止められて「免許証を見せろ」と言われた竹中さんがポケットに手を入れようとした瞬間に「Don’t move!」って銃を構えられたんです。

 

――日本人の海外あるあるみたいな話ですね(笑)。

 

高:今だから笑えますけど、あの時は「竹中さん、もうダメかもしれない」と本気で思いました(笑)。試合の後、僕は日本に戻りましたが、2人は残ってしばらく試合などに出られていました。あの遠征で「2人は海外でも戦えるレベルにある」と感じたことは、今でも覚えています。

 

――当時も『吹田中央』勤務でしたか?

 

高:いえ、その時は兵庫県のビリヤード場を借りて、一応ですが、自分がオーナーとしてやっていました。でも食べていくだけの収入にはならなくて、2008年に閉めました。そして「これからどうしよう? さすがに吹田中央には戻れないよな……」と思っていた時に、「JUN コーポレーション(吹田中央を運営する会社のビリヤード用品販売部門)の店長が辞めるので、誰か人材がいないか?」という電話をもらいました。

 

――すごいタイミングですね(笑)。

 

高:僕も驚きました。それから4年ほどショップの接客など、キューの販売がメインの仕事となりました。僕がビリヤードを続けてこられたのは、こんな数々の縁に恵まれたからだと思います。

 

 

――現在の職場(『あそびば』)へ入られたのは?

 

高:ビリヤード業界も冷え込んできて、ショップの会社も僕の仕事の条件を変えざるを得ない状況になり、これまた「これからどうしよう?」という時に、今の会社に面接をしてもらえて現在にいたります。気が付けば入社してもうすぐ10年になるんですね。結局、ウイリーに始まって、ずっとビリヤードだけで食べていけてるのだからありがたいことです。

 

――確かにビリヤード場経営以外でビリヤードだけを仕事にしているプロは少ないですね。

 

高:そういえばこの間、お客さんから面白いことを言われたんです。「高木プロって、そのレベルでビリヤードだけで食べていけるってスゴイですね」って(笑)。仲良しのお客さんで悪気とかまったくないんですけど、言われてみたら僕自身も「たしかに」と思いました。トッププロと呼ばれる人以外は、たいてい別の仕事をしていたりしますよね。

 

――ここでキュー遍歴について教えてください。

 

高:まず大学4回生の時に、ウィリーで岩崎プロからJ・ペシャウアーのキューを貰ったのが始まりです。次にHRC時代に中古のシンプルなリチャード・ブラックを6万円で譲ってもらいました。今思えば置いておけばよかったなと思います。

 

――手放してしまったのですね?

 

高:身近にオーメンのキューを持っていた人がいて、撞かせてもらったらいい感じだったので交換して、後にオーメンはMUSASHIと交換してもらいました。こうして振り返ると、わらしべ長者みたいですね(笑)。そしてプロになった時に氏橋(武士)さんにキューを作ってもらって、計2本を延べ10年使わせてもらいました。

 

――キューも仕事と同様に「ご縁のままに」という印象です。

 

高:確かにそうですね(笑)。その後にユニバーサルのキューを4年ほど使わせてもらい、去年から3本すべてプレデターになりました。

 

現在のキューは、プレー(中央)、ブレイク(下)、ジャンプ(上)、すべてPREDATOR
現在のキューは、プレー(中央)、ブレイク(下)、ジャンプ(上)、すべてPREDATOR

 

――音楽をされていたから、やはりサウンド重視でしょうか?

 

高:撞いた時に奏でる音にこだわる方おられますよね。残念ながら、僕は根っからの人工素材派なんです。だから今もカーボンシャフトをとても気に入って使っています。スポーツの道具はそうあるべきだと以前から思っていたので。期待に応えられずすみません(笑)。

 

――ゴルフやテニスのように、人工素材が使われることを以前から望まれていたのですね。

 

高:はい。「そうならなければおかしい」くらいに思っていました。実際にゴルフのドライバー(のヘッド)もパーシモンから金属に変わった時に「音が」、「打感が」と抵抗した人も少なくなかったようですが、今では完全に人工素材になりましたよね? テニスのラケットも木のフレームとか存在しなくなったのではないでしょうか?

 

――おっしゃる通りです。

 

高:だからいずれタップも人工素材になると思います。変形しなくて状態が常に同じで、交換の必要もない。もしかすると、チョークを塗る必要もなくなるかもしれません。そうなればプレイヤーにとっては最高だと思います。ただメーカーはそれでは商売にならなくて困るかもしれませんが……。

 

――現在のお仕事内容を教えてください。

 

高:『あそびば』5店舗を順番にまわって、17時から26時の間、ビリヤードに関する業務全般を行っています。インストラクターとしてレッスンや相撞きもしますし、タップ交換やチョーク削りも僕の仕事です。ビリヤードに関することなら、ラシャの張り替え以外は何でもします(笑)。ちなみに、あそびばは京都、大阪、奈良、滋賀の計5店舗で70台のビリヤードテーブルがあります。西日本ではかなり大きい方ではないでしょうか?

 

――確かに最大級かと思います。お客さんの層はどのような感じでしょう?

 

高:バリバリの競技レベルの方もおられますし、マイキューを持たないグループの方もおられて、一般のビリヤード場に比べると客層は幅広いと思います。「生まれて初めてビリヤードをする」という方のレッスンをしたこともあります。でもマイキューを持つ方も多く、割合で一番多いのが競技層という現状です。もっと若い人にビリヤードを始めて欲しいですし、そこは他のビリヤード場と同じで今の課題です。

 

――学生のグループなども多いように見受けました。

 

高:一般のビリヤード場よりは多いと思います。でもその分、競技層の方にとってうるさかったり、テーブルの周りに立って邪魔になってしまったり、そういう苦情が出ることもあります。僕がいればテーブルを移動してもらったり、「周りに立たないで」といったお願いも出来ますが、5店舗をまわっているから不在の日の方が多いので、なかなか目が行き届かない点もあります。ただし5店舗中4店舗は、「マイキュー所有者専用エリア」を設けて棲み分けを行っているので、一定の効果は出ていると思います。

 

――レジャー層の方が競技者になるケースもありますか?

 

高:決して多い例ではありませんが、そういった方もおられます。この仕事をしていて一番嬉しい場面ですね。あと、あそびばにいて感じるのは、「ビリヤードは根強い人気がある」ということです。未経験者でも興味を持っている人が常に一定数いるな、って。ただし、そこから真剣に競技としてやるところまで導くことは難しさを感じています。

 

――イベント等は開かれていますか?

 

高:毎月(5店舗)持ち回りで3種類のトーナメントも開催しています。ハウストーナメントは川端(聡)プロと2人で出場しながら運営をして、「ノーハンデバトル」という川端プロが考案した大会は川端プロが参加しながら運営、そしてBCLトーナメントは僕が運営を担当しています。

 

 

――あらためて普段の業務を具体的に教えてください。

 

高:時間のウェイトが大きいのは相撞きです。お客さんの要望に応じて、基本的にどんな種目でも対応します。9ボールや10ボールはもちろん、14-1やワンポケット、JPAルールの9ボールなども撞きます。あとはご要望に応じてレッスンもしています。そして意外と多いのが「僕と話しに来てくれる」お客さんです。一緒に撞くことはなくて、単におしゃべりをする時間を楽しんで下さるんです(笑)。

 

――何となくわかるような気がします(笑)。今後の展望などをお聞かせください。

 

高:お店としては幅広いお客さんの層に対して、今以上に個々のニーズに応えたいと思っています。そして今はご時勢的に難しいですが、いつかは僕のような仕事をするプロをあと1人2人と雇える時代が訪れて欲しいですね。そうなるともっと色んなイベントを開いたり、より良い空間にしていけると思います。お客さんが100人いて100人に喜ばれることは簡単ではないですが、会社としてはそこを求めているだろうし、努力は続けていきたいと思います。

 

――最後にプレイヤーとしての抱負をお願いします。

 

高:海外の試合に出場するなど、目標は山ほどありますが、まずは公式戦で優勝をしたいです。これまでもそこそこの成績が出るとお客さんも喜んでくれたので、優勝すればもっと喜んでもらえるのだろうな、と。プロとしてもインストラクターとしても努力し続けていきたいと思いますので、今後ともあそびばと高木悠次をよろしくお願いします。

 

(了)

 

 

…………

 

My Billiards Days :

Vol.1 今村哲也(Tetsuya Imamura)前編後編

Vol.2 酒井大輔(Daisuke Sakai)前編後編

Vol.3 青山和弘(Kazuhiro Aoyama)前編後編

Vol.4 北田哲也(Tetsuya Kitada)前編後編

Vol.5 高木悠次(Yuji Takagi)前編後編

 

 

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