熱い撞球人を紹介するインタビュー企画、
これまでは「競技ビリヤードと
畑違いの仕事を両立させている人々」
を紹介してきましたが、
今回は「畑違いのジャンルから
ビリヤードに急転身した人」
のお話です。
それが大阪の高木悠次プロ。
近畿エリアの『あそびば』各店舗で
勤務する高木プロは、
「音大出身」というビリヤード業界では
とても珍しい経歴を持っています。
ユーフォニアムからキューへ
相棒を持ち替えてPlayを続ける
高木プロの半生をどうぞ。
…………
高木悠次:Yuji Takagi
年齢:取材時44歳(1976年生まれ)
出身・在住:兵庫県・大阪府
血液型:AB型
職業:会社員 株式会社ナビス(ビリヤードを含む複合遊戯施設『あそびば』運営)
所属団体:JPBA(44期生)
所属店:あそびば各店舗
プレーキュー:プレデター『SPROT2 Ember』(REVO 12.4シャフト)
タップ:KAMUI Black H
プロ戦績:
2017年『グランプリウエスト第4戦』準優勝
2018年『同第5戦』3位タイ
憧れのプレイヤー:高橋邦彦、川端聡(ともにJPBA)
ビリヤード歴:約22年
ビリヤードを教えてくれた人(師匠):岩崎正徳プロ(元JPBA)、井上淳介プロ(元JPBA、元JBC)
…………
取材協力:あそびば真野店(滋賀県大津市)
――高木プロが「試合で『絶対音感スナイパー』というキャッチコピーで紹介された」という話を聞きました。
高木悠次(以下、高):あれは僕がまったく知らないところで命名されたんです。そもそも絶対音感ありませんから(笑)。
――では、どのような経緯で?
高:実は音大(大阪音楽大学)を出ているんです。ビリヤードと関係ないので話すことはありませんでしたが……。僕の大学の先輩でビリヤードをしている人がいて、たしか『日勝亭』へ買い物に行った時に、その先輩が(隣で運営しているビリヤードレッスン場『Poche』の)吉岡(正登)プロに「自分の後輩もプロをしている」と話したことでバレました。そこから試合の選手紹介に使われたという話です。
――聞きたいことが山ほどあります。音楽家系ですか?
高:まったく違います。実家は兵庫県の赤穂市というところで、両親が理容室を営んでいて、兄と妹の3人兄弟の真ん中で、全員がピアノを習ったとこともありません。僕は小3の時に友達に誘われてブラスバンド(吹奏楽)部に入り、以来ずっとユーフォニアムという金管楽器を吹いていました。
――吹奏楽部は身近ですが、音大は遠い世界。そう感じてしまいます(笑)。
高:確かに僕も音大に行くとは夢にも思っていなかったです。高校受験の時も「商業科に進んで簿記の資格を取って、理容室を継いだ時に生かそう」と思っていました。でも、すべり止めでどの高校を受けるか? という段階で、中学の吹奏楽の先輩や小学校からの先輩も行っていた吹奏楽が盛んな岡山の高校が浮上したんです。そして受かったら行きたくなるじゃないですか? それで高校の3年間も、1人暮らしをして音楽漬けの生活を過ごしました。
――ここまでは理解が出来ました。でも音大までは……(笑)。
高:そうですよね。でも実際に進路を考えた時に、(高校の)推薦で受けられる大学があるとなれば、受けてみようと思いません? 小学校からまったく同じ進路を歩んだ先輩もおられましたし、せっかく10年も楽器を続けてきたのだから、と。
――音大といえば全員が「3歳からピアノを始めて」というイメージは間違っていますか?
高:僕以外はそんな環境の人が多かったかもしれません。ただ、一般的に音大というと「お嬢様」とか「お坊ちゃん」をイメージする人が多いと思いますが、大阪音大のオーケストラ専攻金管楽器のグループは体育会系部活のような雰囲気でした。
――大学でも順調に音楽を?
高:そうですね。副科ピアノという必須の科目は相当苦労しましたけど(笑)、それ以外はおよそ順調な方だったと思います。(奏者として)全国で個人の賞はもらえなかったけど、西日本などエリアでの賞はいただいたりしました。
――音大生の進路はどのような感じですか?
高:楽器奏者の場合は、交響楽団や音楽団に入ったり、自衛隊や警察などの楽団に籍を置いて食べていく道があります。もちろんレッスンをするなどして収入を得る人もいます。自分のパートに空きが出ないと応募することもできないので、そういう点では厳しい世界だと思います。
――高木プロはいかがでしたか?
高:ちょうど大阪市音楽団に――例の橋下市長の時に民営化になった楽団ですが、ユーフォニアムに欠員が出たので、オーディションを受けに行きました。1つの枠に40~50人が応募する狭き門でしたが、帰り道で立ち会われた現役の団員の方たちと一緒になって「春から一緒に頑張ろう」と言われて「これはいけるのかな?」と期待を持ちました。しかし当時は市の音楽団だから公務員の試験も受けなければならず、筆記テストが壊滅的な結果で散りました。
――それ以外の就職活動は?
高:他のオーディションを受けることはなく、卒業後は大学でアルバイトをしました。パートの空きを待つなど、就職に制約がある分野なので、大学側も就職支援的な意味合いを含めて、卒業生を学校事務などで雇うという習慣があるんです。情報も入りますし、エキストラ出演や練習など演奏者にとって良い環境も整っていますので。
――その頃にビリヤードはしていたのですか?
高:まさにハマっていた時です(笑)。僕は全然いいんですけど、「ビリヤードの話をしなくていいのかな?」とずっと気になっていました(笑)。
――知らない世界の話なので、つい引っ張ってしまいました。ではビリヤードの出会いからお願いします。
高:出会いは大学に入ってからで、カラオケやボウリングのように遊び感覚でやっていました。それで4回生の時にテレビの『情熱大陸』で高橋(邦彦)プロの回が放送されたんです。とにかくカッコよくて憧れましたし、しかも大学近くのビリヤード場が『ウィリー』(高橋プロがビリヤードを覚えた店)で、オーナーの岩崎(正徳)プロ(当時JPBA)に丸め込まれて一気にハマりました。あの情熱大陸があと1~2年早く放送されていたら、僕は大学を卒業できていなかったと思います(笑)。
――4回生でハマったのが不幸中の幸いだったと?
高:結局、卒業して大学でアルバイトをしている1年の間に、完全に頭の中がビリヤードに染まってしまって、進路を変更すると決めました。大学の課長さんに「もう1年働く?」と聞かれて「いや、僕はビリヤードの道に行きます」と返事をしたのを覚えています。
――音楽に未練はありませんでしたか?
高:どうなんでしょう? 未練を断ち切るため、という訳でもなかったと思いますが、その頃に楽器はすべて処分しました。「手元に置いていたら中途半端なことをしてしまう」。そう思っての行動でした。
――楽器を手放したのが23歳の春。当時のビリヤードの腕前は?
高:B級ですね。春からウィリーで働いて、5ヶ月くらいでHRC(兵庫ローテーションクラブ)に入ったのですが、その時点でクラブに入会したからA級を名乗ろう、というくらいのレベルでしたので。
――計14年間積み上げた音楽の道から転身したことを不思議に思います。
高:普通に考えて無謀な話ですよね(笑)。ただ、ひとつ言えるのは、音楽はどこまでいっても『他人の評価』なんです。奏者の手応えといった自己採点は酌まれることなく、審査員や観客の評価が全ての世界。これに長年モヤモヤしていた部分があって、ビリヤードはその真逆で、自分のプレーの結果が全て。勝敗に他人の評価が入る余地がない。そこに魅力を感じたことは間違いありません。
(前編了)
※後編はこちら
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My Billiards Days :
Vol.1 今村哲也(Tetsuya Imamura)前編/後編
Vol.2 酒井大輔(Daisuke Sakai)前編/後編
Vol.3 青山和弘(Kazuhiro Aoyama)前編/後編
Vol.4 北田哲也(Tetsuya Kitada)前編/後編
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