佐原弘子・第4〜7期女流球聖位

3度目の防衛に成功。長期政権クイーンが勝負を振り返る

2015年4月

佐原弘子(Hiroko Sahara)
佐原弘子(Hiroko Sahara)

 

女子アマ最高峰の戦い、

『第7期女流球聖戦』は、

 

今年も球聖位の佐原弘子が防衛に成功。

これで3度防衛で在位4期目となった。


好敵手、米田理沙を迎えての

ラストバトル「球聖位決定戦」は、

本人も周囲も全く想像できない

「ストレート勝ち」。

 

試合中の心境や勝負の分かれ目を

試合直後の本人に聞いた。

 

安定感と風格が備わった「女帝」は

いつまで勝ち続けるだろうか。

彼女を止めるのは一体……!?

 

取材・文/BD

写真協力/On the hill ! タカタアキラ

 

…………

 

Hiroko Sahara

第4期~第7期女流球聖位

2014年全日本アマチュアポケットビリヤード選手権大会優勝

他、優勝・入賞多数

1977年10月21日生まれ。

千葉県出身・在住。O型・天秤座

スピリット1(千葉県銚子市)所属

プレー歴は約12年

 

佐原弘子バックナンバー

2015年4月……女流球聖3度目の防衛前・談話

2014年11月……全日本アマローテ優勝時・談話

2014年4月……女流球聖2度目の防衛成功・談話

2014年4月……女流球聖2度目の防衛前・談話

2013年6月……女流球聖1度目の防衛成功・対談(with 米田理沙)

2013年4月……アメリカのアマ大会で優勝・談話

2013年2月……女流球聖1度目の防衛前・談話

 

大阪まで駆けつけた応援団と
大阪まで駆けつけた応援団と

あのゲームボールは申し訳ない気持ちでいっぱい


 

――率直な今の気持ちを。


「試合に勝てたこと、防衛できたことに関しては素直に嬉しいです。試合前にもお話ししたように、この試合だけは私一人で闘うものじゃなくて、応援してくれている周りの皆と一緒に闘っているという思いがとても強い試合。だから、勝てたことは嬉しいです。ただ、もう……」


――あの最後(第4セット・6-6時)のゲームボールですか?


「はい、何と言ってもあのゲームボールです」↓

 

 

「こんな外し方をしたら、普通はサイド穴前に残って相手に取られ、そこから一球の重みを思い知る展開になったりするものじゃないですか。特に相手は米田選手ですから。そんな痛恨のミスになるはずのものが……フロックという形で入ってしまった。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。相手選手に申し訳なくて泣いたことなんて今までなかったんですけど……初めて泣いて謝りました。あの終わり方が私にとってはすごく不本意で、悔しさも悲しさも自分に対する怒りも込み上げてきました」


――思い出したくもないかもしれませんが、このゲームボールはなぜ外れたのでしょう?


「いやいや、あれは思い出したくないどころか忘れちゃいけないことだと思ってます。ああいうミスもしてしまう自分がいるんです。あの最終ラックはバンクショットを2回入れてなんとか9番までたどり着き……ここで油断してはいけないと思いました。なので一呼吸置いて構えに入ったんですけど、緊張がマックスだったので、『お願い入って!』という気持ちで撞いてしまった感は否めません。それで、あんな撞き方――左コジリというか、フォロースルーで左に払ってしまった状態――になってミスしてしまいました」


――セットカウント4-0のストレート勝ちという結果については?


「結果だけで言えばかなり上出来ですよね。米田選手相手にストレートで勝てるとは全く思ってもいませんでした。結果だけ知った人は皆びっくりするんじゃないですかね。でも、試合を観ていた方なら、結果ほど圧勝という感じではなかったと感じると思います」


――カギとなったラックやセットはどこでしょうか?

 

「間違いなく第3セットです。2-5ビハインドという状況でしたので。運も手伝って6-5と逆転リーチをかけることができたんですが、最後の7番は攻めるか守るか悩む球でした。ポジションまで考えると難易度の高い球だったので。あそこで覚悟を決めて、攻めて成功したことが大きいですね(下図)」

 

第3セット・スコア6-5の時の7番
第3セット・スコア6-5の時の7番

今は球聖ですが、陥落したら忘れ去られますよ(笑)


 

――朝から観ていて、試合への入り方(第1セット)が良いように映りましたし、全体的に落ち着いて見えたのですが、内心はどうでしたか?


「良く見えました? それなら良かったです。私はスロースターターなので、序盤にポイントを取られてしまうことが多くて、悩んでいるんです。『ファーストセットはしっかりいかなきゃ!』っていう思いはありました。試合中の内心は……そうですね……色々な心の動きがありましたね。思いの外、落ち着いて撞けてるなと思う時もありましたし、上手くいかない時にはもどかしさも感じました。スコアが競ってきたら緊張感も増しますし、ミスしちゃいけないという思いはどうしても出てくるものなので、一層プレッシャーがかかったりしていました」


――プレーリズムや球の内容にばらつきがあまりなく、そこに経験値を感じたのですが、ご自身では今回の出来はどうでしたか?


「リズムやルーティンは普段通りにいこうと思ってましたので、その点は達成できたかなと思います。でも、絶好調と言える球ではなく、反省点も多々あります。普段の思考ができなかったり、視野が狭くなったりして、ショット選択や取り切り方のチョイスに課題が残りました。あとは今回ショットクロック(45秒)が入っていて、1ラックに1回のエクステンション(時間延長)が認められていたのですが、その使い方がまだ上手くできてなかったですね」


――課題はあれども、これで3度防衛に成功し、4期連続の女流球聖となりました。もはや大会の「顔」になっている現実がありますが、ご自身はどう思っていますか?


「数字的なものはあまり意識してないので特に考えたことはありませんね。皆さんが私に対して抱くイメージも……本人なので全くわかりません(笑)。皆どう思っているんですかね。今は女流球聖位という座に就かせてもらっているので、私の名前を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが……陥落したら忘れ去られますよ(笑)」


――最後に応援してくれた方へのメッセージを。

 

「今の自分がいるのは周りの人の応援や支えがあってこそ。球聖位の防衛は一人の力では成し得ないことです。励ましてくれた方、おめでとうと言ってくれた方、Ustreamで観てくれた方、会場まで駆けつけてくれた方……全ての人に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にどうもありがとうございました。これからもより一層努力して励んでいきます」

 

 

※「聞いてみた!」の他のインタビューはこちら