初めて物語/赤狩山幸男プロ編

2013年2月

 

よく言葉をかわすようになったけれども、

そういえば一度も聞いていなかった

カーリーとビリヤードの出会い。

 

後に世界チャンピオンになることに

なる赤狩山少年は、中1のある日、

いつものようにゲームセンターへ

テトリスをやりに行ったーー。

 

取材・写真・文:B.D.

 

 

ーービリヤードに出会ったのはいつですか?

 

中1ですね。偶然の出会いでした。よく行っていたゲームセンターがある日ビリヤード場になっててね。ゲームしようと思って行ったら、ビリヤードがあったという。

 

――ちなみに赤狩山少年が好きだったゲームは?

 

テトリス。安く長く遊べたから(笑)。

 

――突然そこに出現したビリヤード台を見て「じゃあ、やるか」と?

 

そう、友達と一緒に「じゃあやってみるか!」と。

 

――その時すぐに面白いと思いましたか?

 

そう……だったと思います。「音がいいなぁ」と思ったことは覚えてます。

 

――音。

 

ボール同士の当たる音も良かったし、的球がポケットに入る音も良くて、その音にすぐ惹かれました。

 

――その時はどんなゲームを? ナインボール?

 

ゲームをやったのかな? 覚えてないなぁ。見様見真似で何かをやった気はします。そして、結構強く撞いてたと思う。

 

――今のスタイルから全く想像できない(笑)。それはなぜ?

 

音を出したくて。ほら、今でも一般のお客さんでいるじゃないですか。とにかく強く撞いて、大きな音をさせる人。あんな感じです。僕、すごいうるさかったやろうなぁ(笑)。

 

――意外でした。その日以来、ビリヤードにどっぷりと?

 

何回かやる内にハマっていった感じですね。同じ店に繰り返し行って。

 

――まだあるんですか? そのお店は。

 

もうないんですよね。

 

――バッチンバッチン撞いてた赤狩山少年は、いつプレイヤーっぽくなっていったんですか?

 

その後、そのお店のアルバイトの人に教わってからかな?

 

――巧い人?

 

ちゃんとした経験者です。その人は強く撞いてなかったんですよ。「どうやってるんだろう?」ってチラチラその人の方を見たりしてね(笑)。その後、その人と喋るようになって色々と教わって。

 

――その頃教わったことって今も残っていますか?

 

そんなにないかなぁ(笑)。その時から身長も伸びたからフォームも違うだろうし。

 

――当時、何を目標に撞いてたんですか?

 

「巧くなりたいな」です。巧くなっていくことが面白かったですし。

 

――ビリヤードのプロがいて、競技の世界があるってことは知ってましたか?

 

中3の時には知ってましたね。奥村健プロとか戸田孝プロとか、有名なプロの名前も知ってました。

 

――そうだったんですね。

 

中3の時、プロの試合も見に行きましたからね。その時のファイナルが片岡久直プロとロサリオ(フィリピン)だったことも覚えてます(笑)。その頃僕はBクラスぐらいになってましたけど、「ああ、プロってすげーなぁ」と驚きました。

 

――その10年後、自分が24歳でプロ入りすることは想像できた?

 

まさか(笑)。その時はまだこの道に来るとは思いもしなかったですよ。

 

左手のピンキーリングがトレードマーク。最近は付けたり外したり
左手のピンキーリングがトレードマーク。最近は付けたり外したり
'12年春からBAGUS所属プロになった
'12年春からBAGUS所属プロになった

始めた当初と今ではプレースタイルは

だいぶ違うと本人は語る。

では、ビリヤードに対する想いは

どうだろうか? 

 

――ビリヤードを始めた頃と今、ビリヤードに注ぐ情熱に変化はありますか?

 

いや、そんなに言うほど変わってないです。純粋に楽しくて、面白くて、巧くなりたくて。これは昔も今もそう。その時その時の「一歩上の世界」を見たくなるところも変わりません。Bクラスで撞いていたらAクラスになりたくなり、Aの時はプロの世界を見たくなり、プロになってからは海外で戦いたくなるという。

 

――今はビリヤードのどんなところに魅力を感じていますか?

 

自分の考えと実際のプレーが一致するかどうかというところかな。例えば、ナインボールで1番から9番まで取り切って行くその取り方も、考えたプラン通りにできた時は嬉しい。

 

――取り切れたら結果オーライではなく?

 

そうですね。考えたプラン通りにならなかった時は、頭と腕、どっちに原因があるのか。そこを分析します。

 

――例えば、あの優勝した世界選手権のファイナルの時は、頭と腕は一致していた?

 

世界選手権の時? あんなん全部違いますよ!(笑) 最後の8番と9番だけですよ。

 

――単純に、今も的球が入ったら「楽しい!」って気持ちはあるんですか?

 

うーん、昔はそうだったと思いますけど、今は楽しみ方が変わってきたというか。ああ、でも、勝てば楽しいですよ、それは。でも、それだけでは物足りなくなって、より内容を見るようになったんでしょうね。自分で「うむ」っと頷けるようなプレーができた時が嬉しいですね。

 

――それはよく実現できているんですか?

 

いや、なかなかないです。難しいですよ。でも、それを増やしていかないと「形」ができませんから。

 

――最後に、ビリヤードを始めたばかりの人に向けて、上達のコツを教えてもらえませんか。

 

間隔を空けずに撞くことです。球を撞く数、撞く時間を増やすことです。それと、できれば誰かに教わった方が良いです。フォームやキューの持ち方など最低限だけでも。

 

――その心は?

 

ビリヤードはまともに手球を撞けないと面白くないので。そこだけでも早く越えた方が良いと思います。

 

――そこを越えた人にはどんなアドバイスを?

 

僕もそうでしたけど、自分より巧い人と一緒に撞くことでしょうか。巧い人のプレーを見て、撞き方やボールの動かし方を頭にインプットすることです。それを一人の時に練習すると良いと思います。

 

――ありがとうございました。

 

赤狩山幸男プロはこんな人→

 

2011年ナインボール世界チャンピオン。

ニックネームは「カーリー」。

1975年3月13日生まれ。

大阪府出身・東京都在住。

JPBA(日本プロポケットビリヤード連盟)32期生。

所属・スポンサーは、

TⅡFactory、Kamui、JAPAN FOOT WEAR、BAGUS、Just Do It、JPA