21日(日)の
(GPW-6)で優勝を飾った
稲川雄一プロの談話をお届けします。
2025年の国内プロ公式戦で
入賞回数(3位以上)が7回。
これは羅立文と並んでトップタイの記録です。
そして、年間最終戦で遂に
自身10年ぶりの優勝を決めた稲川プロ。
躍進の理由も聞きました。
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――約10年ぶりの優勝です。
稲川:「ここまで長かったなぁ」という気持ちです。10年は長過ぎました(笑)。今年は多くの試合で上位に絡めていて、周囲の方や選手達から「アベレージいいね」と言われてましたけど、自分としては「高いアベレージをキープするより、一つタイトルが欲しい」というのが本音だったんで、ほんと勝てて良かったなと思います。
――『ビリヲカ』によると、2025年に稲川プロはプロ公式戦で表彰台(3位以上)に7回上がりました。これは羅立文プロとともに最多タイだとのこと。
稲川:今回の優勝が7回目の表彰台なのは知ってましたけど、最多タイだったのは知らなかったです。この1年「ちゃんと試合ができていたな」と思う瞬間は結構ありました。だからこそ今大会の前は「(優勝を)来年に持ち越すんじゃなくて……(ここで決めたい)」という思いもありました。
――今回5試合プレーしました。よく撞けましたか? 点数を付けるなら?
稲川:配信テーブルで撞いた準決勝と決勝戦はかなり良い出来でしたけど、それ以外の3試合(ベスト32、ベスト16、ベスト8)は結構ミスも出てました。点数は……尻上がりに状態を上げて行けたことを考えると、85点ぐらいは付けられるかなと思います。
――決勝戦はトップジュニアの金澤蒼生選手(※2026年1月よりプロ転向)と対戦。大会の上の方でアマチュアと対戦するのはやりづらいものでしょうか。
稲川:やりづらいですね(苦笑)。『ジャパンオープン』の準決勝もそうでした(vs 中野雅之アマ)。中野くんは同級生ですし、知り合って長いので余計にやりづらかったです。金澤選手には前回の『GPW-5 in 大阪 DRAGON』の予選(ベスト32)で負けてます。わかってはいたけど、その時は「よく入れるなー」という印象でした。でも、そこで一度対戦したこともあったし、今回は自分の状態が良かったので、展開次第ですけど「今日は戦えるだろう」とは思ってました。
――決勝戦、良い状態で撞けていた実感は?
稲川:ありました。今回「これ」と決めていたブレイクがあって、1日中ずっとそのブレイクをしてました。良い配置になってくれることが多かったので、決勝戦も「自分のブレイク番のラックさえ取って行けたら戦える」という感じでした。
――最後は相手の2番ミスから取り切って上がりました(7-2で勝利)。穴前の2番から4番のあのポジションはラッキーだったのでしょうか?
稲川:はい。本当は2番にもっと厚く当てて、手球は短→長の2クッションで4番に下から触るか、通り抜けてもいいかなと思ってました。ただ、2番がかなりポケットの奥深くにあって角(つの)に手球が当たる危険性もあったので、理想は求めず、まずしっかり撞いてみてダメだったらその時考えようと。「まあ、隠れることはないだろう」ぐらいの気持ちでした。そうしたら手球が9番に当たってめちゃめちゃいい形になって。プランと全然違ってたんで自分でも笑ってました(笑)。
――そこからはプラン通りに取れましたか?
稲川:そうですね。4番はちょっと怪しい入り方をしてましたけど、ショット自体はイメージ通り。プレッシャーがあった訳ではなくて厚みが少しズレてました。大事なのは5番→6番→7番。7番は(狭い方に出して)遠いコーナーに取るしかなかったですけど、その組み立ては5番→6番で決まるなと。5番はほぼ100点のショットで6番にきれいに出せたので、6番→7番は厚みと加減を合わせてラインに乗せるだけ。6番を入れて、手球の1クッション目の出方を見た時点で「ああ、完璧にできた」という手応えがありました。なので、ラスト3球も冷静でしたね。8番→9番へは少し引きすぎましたけど、あれも「しっかり引けた場合はこの辺まで出ることもあるかな」というギリギリ想定内の場所だったので、そこまでプレッシャーはなかったです。
――ゲームボールを入れた瞬間の気持ちは?
稲川:めちゃくちゃ嬉しいという感覚ではなくて、「自分の状態が良かったな。しっかり撞けたな」ぐらいでした。
――この10年、優勝を強く願い続けていたのでしょうか?
稲川:もちろん優勝したいのはしたいんですけど……う~ん、難しいですね。「チャンスがあれば」ぐらいだったかもしれません。今振り返ると、少し前まではどちらかと言えば「ビリヤードを極めたい」とか「上手くなりたい」みたいな思いが先行しすぎちゃってたのかなと思います。でも、最近は「どうすれば勝てるか」を真剣に考えるようになりました。
――変化のきっかけは?
稲川:明確なものの一つは、G2(オープン戦)などの大きい試合の前に、後輩の神箸渓心プロと練習することが定例化したことですね。これは今でも続いています。もともと神箸久貴プロ(愛知『JIN』代表。渓心プロの父)がセッティングしてくれて。当初は「いやいや、僕じゃ相手は務まらないでしょ」ぐらいに思ってましたし、実際初めの頃は特にシュートに差があるなと感じてました。でも、そんな気持ちじゃ渓心にも申し訳ないですし、試合で勝つのも無理なので、「上位で活躍しているプロ相手にどうやったら勝てるのか」というところを本気で考えながらやるようになりました。それがきっかけとしては大きかったと思います。
――スキルというよりも心構えの面で。
稲川:そうですね。気持ちの持って行き方とか戦い方の部分です。「どうやったら勝率を高められるんだろう」とかなり考えました。当たり前ですけど、めちゃくちゃ一生懸命やらないと渓心には勝てない。なので、以前は「自分の満足の行く球を撞く」という意識で試合をしてましたけど、「ビリヤードで勝つってそうじゃないよな」と考えを改めることが出来ました。それにはスポンサーさんの存在もあります。
――どういうことでしょうか?
稲川:今年から『東海テック株式会社』様のスポンサードをいただいて、社長にビリヤードのレッスンをしたりしています。社長はビリヤードを始めてそんなに長くはないんですけど、だからこそ、一般の人に近い視点でプロとしての僕の評価や立ち位置を見ておられます。その“稲川雄一評”を教えていただいたことで、僕も自分自身を客観的に見られるようになったと思います。
――ちなみにその“稲川雄一評”はどんなものでしたか?
稲川:意外なことに「トップの方で戦えている人」というものでした。だから、「頑張ったらもうちょっと上に行けるんじゃないか」と自分でも思えるようになりました。社長自身がすごく前向きな方なので、その姿勢に感化されて自分を認めて推せるようになったというのもあります。それも含めて、色々な方々とのお付き合いが自分に良い影響をもたらしている感覚があります。先日は師匠の2人からアドバイスをいただきましたし、様々な意味で戦う環境が整ってきたというか。
――好循環に入ってきた。
稲川:そうですね。極めつけは、今大会の前に川端聡プロにみっちり稽古をつけていただけたこと。あれはめちゃくちゃ大きかったです。スポンサーさんを通じて少し繋がりが出来ていたので、『全日本選手権』(11月)の時に川端プロに思い切ってお願いしたら受けていただけて。(大阪から)岐阜までお越しいただいてガッツリ撞けました。僕のいる所(岐阜県大垣市)は田舎なので、試合以外で試合ぐらいのテンションで撞ける機会はめったにないのでめっちゃありがたかったです。8時間ぐらい撞かせていただいてクタクタになりましたけど(笑)。あとは、同郷の後輩、杉山功起プロの存在もすごく大きいです。あっという間にこちらが追い掛ける側になっちゃいましたけど(苦笑)、彼の頑張りは励みになります。「もうちょっと食らい付いていかんとな」と。そんなふうにやる気を出させてくれる人が周りに増えてきたから良い状態で戦えているのかもしれません。本当に人に恵まれているなと思います。
――最後に2026年の目標を。
稲川:今年一つ勝てたので、来年は2つ、3つと優勝したいなと思ってます。そして、なかなかランキングを上げるのは難しいことですけど、一つでも上に行けたら嬉しいです(※2025年11月度ランキングは6位)。今回皆さんの応援が励みになりましたし、勝った瞬間から本当にたくさんの方から連絡をいただき、すごく嬉しかったです。来年ももっと連絡をいただけるように頑張りたいと思います。
(了)
※ 10年前(2015年)、プロ初優勝時の談話はこちら
Yuichi Inagawa
JPBA44期生
生年月日:1983年9月25日生
出身・在住:岐阜県
所属店:岐阜県大垣市『ANY』
主な戦績:
2015年『グランプリウエスト第4戦 in 京都 サンク』優勝
2025年『グランプリウエスト第6戦 in 佐賀 sessionn』優勝
他、入賞多数
キュー一式:早川工房(プレーシャフトはSAIGEN、タップはNAVIGATOR)
スポンサー:東海テック株式会社、早川工房、NAVIGATOR
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◇ 2025年GPW ※リンクは結果記事と談話記事
今回→12月:GPW-6 佐賀 session 稲川雄一/金澤蒼生
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