〈BD〉寄稿【2025 SBEにおけるアメリカキャロム事情】 by 酔爺

アメリカ女子プールのレジェンドの一人、ジャネット・リー(左)とPREDATOR CRM担当のアイラ・リー(右) Photo : Detective K
アメリカ女子プールのレジェンドの一人、ジャネット・リー(左)とPREDATOR CRM担当のアイラ・リー(右) Photo : Detective K

 

4月中旬に

アメリカ・ペンシルバニア州オークスの

『グレーター・フィラデルフィア・

エキスポ・センター』で開催された

『Super Billiards Expo』

(スーパービリヤードエキスポ。以下SBE)。

 

そこに今年も「酔爺」(Yozy)氏が参加。

 

酔爺氏は以前Billiards Daysで

あなたの知らないキャロムキューの世界」を

連載していたことがあり、

その後もキャロム(競技/キュー)情報を

提供してくださっています。

 

そんな酔爺氏がスリークッション(3C)

プレイヤーの視点で昨年に引き続き

SBEの様子を教えてくださいました。

 

※ともにSBEに赴いた「キュー探偵K」の

2025 SBEレポートはこちら

 

………… 

 

酔爺・記:

 

【初日。キャロムテーブルを求めて徘徊】

 

4月10日(木)。初日朝、開場時間前から会場へと赴いた。

 

今回はキュー探偵「K」が、BD特派員として入場パスを手配してくれた(K、ありがとう!)、名前もしっかり「YOZY」(酔爺)となっているのを確認。

 

「Yozy」(酔爺)のパス
「Yozy」(酔爺)のパス

 

早速会場内を徘徊して「テーブル」を下調べする。

 

昨年は『PREDATOR CRM』(プレデター社のキャロムキューライン)のブースはあったのだが、キャロムテーブルは置かれておらず、プールテーブルでのカイルンでお茶を濁すという体たらくであったので気が気ではない。プレデターのブースにそれらしきものを見かけるが、カバーがかかっていてよくわからない。

 

しばらく探索を続けていると「Carom Sports」というブースを発見。そこには明らかにスリークッション(3C)用だと思われるサイズのテーブルが、カバーをかけられて鎮座していた。心の中でガッツボーズをする酔爺。ただ、まだ少し早すぎたのかブースには誰もいない。

 

開場後、Carom Sportsに再度訪れると、旧知のIra Lee(アイラ・リー。PREDATOR CRM担当者)を発見。昨年我々に懐いていた少年もいた。

 

ーーーーーー

 

【昨年なかったキャロムテーブル。今年は……】

 

早速アイラに質問する。

「『Carom Sports』って何?」

アイラ曰く「『Carom Sports』とはスリークッションの事だ」

いや、それは知っている(笑)。

 

「このブースの事を聞いてるんだけど、ここはディーラーなのか、それともスポーツ振興の為のNPOか何かなのか?」

アイラ宣わく「PREDATOR CRM全般を取り扱う代理店だ、すなわち私自身だ」との事だった。

 

「そうか、わかった。で、これはキャロムテーブルだよな?」

「そうだ」

「セットアップが終わったら、撞いてもいい?」

「もちろんだ。これはPREDATORキャロムテーブルだが、まだ古いバージョンだ。今度新しいバージョンが出るぞ。全体が白いデザインで超格好いいぜ」

 

PREDATOR CRMブースのテーブルで球を撞く酔爺
PREDATOR CRMブースのテーブルで球を撞く酔爺

 

プレデターのキャロムテーブルがスペインのメーカー『SAM』のOEMであるということはよく知られている事実だが、「白いテーブル」ということは今後はおそらく韓国『Hollywood』のテーブルをOEMするということなのだろう。

 

一応聞いてみた。「韓国製になるという話を聞いたけど本当か?」

アイラ「ああ、その通りだ」

なるほどと一人納得する。

 

ーーーーーー

 

【プレデターキャロムテーブルの特徴は】

 

そんなこんなしている間にテーブルのセットアップが完了。最初に撞かせてもらった。

 

プレデターのテーブルはすでに『3C世界選手権』などでも使われているが、実際に撞いてみるのは初めてだ。ニューテーブル、新ラシャらしく、やや滑っているが思ったほどではない。ややクッションからのヒネリの受けが難しく、いわゆるクッションに対して滑っているという状態だが、極端なコンディションではなかった。

 

そして、もう一つの目玉がテーブルライト、『プレデターアリーナライト』の『Black Widow』仕様である。

 

このテーブルライトには、アメリカの人気女子プールプレイヤー、ジャネット・リーの二つ名である「Black Widow」のロゴがあしらわれ、内側にはカメラが取り付けられており、ストリーミング配信が可能だ。さらにレーザーも仕込まれており、ラシャ上に照射されたラインに沿って構えることによりプラクティスが出来るようになっている。また、ライトの色も場所に合わせて調光できるという代物である(※以下のジャネット本人の動画でライトが紹介されている)。

 

1枚目:PREDATORキャロムテーブルと特別な「Black Widow」仕様のテーブルライト『プレデターアリーナライト』

2:ラシャ上にレーザーでショットのラインを照射できる

 

 

個人的には、カメラとレーザーが付いているのなら、残ったボールのポジションを再現できるようになればいいのにと思うのだが、現時点ではそういった機能は実現できていない。

 

しばらくスタッフの少年と撞いていると周りに観客が集まってきた、3C(スリークッション)をあまり見たことがないらしく、物珍しそうに見ている。また、アイラには観客から「これは一体何をやっているのか」といった質問も飛んでいた。

 

経験上、大体アメリカ人は空クッションで当てると受けがよいので(笑)、積極的に空クッションを狙ってみる。たまたま上手くいくと「Oh my god!」といった声が聞こえてくる。

 

ーーーーーー

 

【ジャネット・リーが3Cをプレー】

 

このCarom Sportsにはジャネット・リーのブースも構えられている。そこではジャネットが、握手会とサインボールやサイン入り書籍等の展示即売会を行う予定になっている。

 

しばらくすると、アジア系の女性がやってきた。ほぼすっぴんなので認識にしばらく時間がかかってしまったが、その後メイクを終えた姿はどこからどう見てもジャネット・リーであった。ジャネットは以前アメリカで開催された3C『ワールドカップ』にも参加したり、3C世界選手権覇者のT・ブロムダール(スウェーデン)が訪米した際にコーチを受けたりしていて、3Cにも比較的明るい。

 

しばらく握手会をやっていたジャネットが、やおら自撮りを始めこちらのブースにやってきて、スポンサーのCarom Sportsの紹介を始めていた。ずっと3Cを撞いていた酔爺は、そこでなぜか「スタッフ」として紹介されてしまう。この時の動画はジャネットのFacebookでも公開されていた。リップサービスもあってではあろうが、3Cを「最も素晴らしいゲーム」と紹介してくれていた。

 

 

ーーーーーー

 

【Day2以降】

 

2日目からはアイラと来場者のチャレンジマッチが始まった。5点先取で、勝つとPREDATOR 3C用REVOシャフトかPREDATOR CRMのバットが当たるRaffle(くじ)に参加できるということだ。

 

最大25人まで。当然参加してみる。初戦で初球2点を当て、その後のイニングでセーフティを挟みつつ3点を取り切り、くじの参加権を得ることができた。当選者には別途連絡が来ることになっているが現時点で来ていないので外れてしまったようだ。

 

ジュニア選手もチャレンジマッチをしていた
ジュニア選手もチャレンジマッチをしていた

 

アイラは25人に負けるまで延々とこのチャレンジマッチを続けていた。彼くらいのレベルになると、5点マッチとはいえ一般的なプレイヤー相手ならそうそう負けることはないと思うので、のべ100人くらい相手にしていたのではないだろうか。その体力には恐れ入る。

 

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【ロンゴーニのブースにて】

 

実は今回のSBEではキャロムキューを1本購入しようと考えていた。現在、木とカーボンのハイブリッドシャフトを使用しているのだが、それがいつまで持つかわからず、また、替えのシャフトもないため、今後も安定供給が見込まれるPREDATORか、ヨーロッパキャロムキューの雄、LONGONI(ロンゴーニ)のカーボンモデルの購入を検討したいと思っていた。

 

そこでLONGONIのブースに向かってみる。旧知の社長、ピエルイージ・ロンゴーニが息子と一緒に忙しく動き回っていた。昨年は彼一人でブースを切り盛りしていたのだが、それで懲りたらしく、今年はアメリカのディーラーと一緒になって、9フィートのプールテーブルを置き、契約プロである元9ボール世界王者のニールス・フェイエン(オランダ)を招聘してチャレンジマッチを行っていた。実は私もニールスのYouTubeチャネルのファンである。

 

1枚目:ロンゴーニブースにて

2:プロトーナメントで優勝したLONGONI契約プロ、ニールス・フェイエン

 

 

この後のプロトーナメント(『2025 ダイヤモンドオープン プロフェッショナルプレイヤーズチャンピオンシップ』)でも、ニールスは激闘を制して優勝することになるのだが、そこは以前の記事を参照されたい。

 

また、知人よりシャフトの依頼も受けていたためピエルイージに聞いてみると、なんと今回は「キャロムキューは持って来ていない」とのこと。何ということだ。昨年はキャロムキューばかり持ってきていて、キャロムテーブルがないことにブーブー言っていたのに。

 

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【CRM P3 Bocoteを買う】

 

傷心のまま、Carom Sportsのブースに戻るとPREDATOR CRMシリーズのキューが何本も置かれている。

 

中にはバット全体が金色に光る『CRM P3』もあったが、さすがに手を出す気にはならず(キュー探偵「K」は興味を持っていたが)、物色しているとソリッドなデザインでボコテのプレーンに近い艶消し仕上げの激渋『CRM P3 Bocote』が目に入った。早速アイラと値段交渉、折り合いのついたところで購入を決断する。

 

酔爺が現地で購入したPREDATOR CRM P3 Bocote Carom Cue
酔爺が現地で購入したPREDATOR CRM P3 Bocote Carom Cue

 

下手すりゃトランプ関税で来年は2倍以上になっているかもしれないから、今が買い時である。また、アイラにはこれまで何度か値段だけ聞いて購入を見送るという不義理をしていたので、それの埋め合わせ的な意味合いも含めて良い買い物ができたと思っている。

 

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【最終日】

 

最終日。最後にアイラに「アメリカで3Cのプロトーナメントは今後行うのか」と聞いてみた。彼はこれまでもNYの『Carom Cafe』で開催されていた『フルホーブンオープン』や『サンリ―メモリアルトーナメント』などのビッグマッチでトーナメントディレクターを任されていた。

 

PREDATOR CRMのアイラ・リー(中央右側の笑顔の男性)
PREDATOR CRMのアイラ・リー(中央右側の笑顔の男性)

 

そんなアイラによると、結局のところ現在はUMB(キャロムビリヤード世界連盟)と韓国のPBAとの確執の影響でアメリカ国内で大規模な大会の開催が難しくなっているとのことであった。アイラとは再会を約束して、今年の私のSBEは終了した。

 

今回は3Cテーブルがあったため、非常に楽しく過ごすことができた。また、食事などをしていても声を掛けられることも多く、来場者の3Cへの興味を得ることができたのではないだろうか。個人としても大変充実した4日間を過ごすことができた。願わくばまた来年も参加してみたいものである。

 

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【余談】

 

SBEに行く前に届いたトレッドウェイのキュー(マッチングジョイントキャップも付属)

 

 

昨年の記事の最後に「注文しているキャロム仕様のキューが2024年6月に送られてくる予定だ」という話をした。結局届いたのは今年の3月であった。オーダーしてから4年ほど待つことになったのだが、出来てくるだけましと言えよう(大昔に頼んでいた別の某キューメーカーは体調不良のためキューが作れなくなってしまっていた)。

 

また、出来上がったものは期待以上の素晴らしい仕上がりで、それについては大変満足している。トレッドウェイのキューだが、スペックは3C用に寄せて長さ56インチ。そして、現在のシャフトが使えるようラジアルフラットフェイスとなっている。そして素晴らしいことに頼んでいなかったマッチングジョイントキャップが付属していた。やはりキューはジョイントキャップである。

 

(了)

 

…………

 

酔爺、ありがとうございました!

 

…………

 

※酔爺のキャロムキューの話

 

※酔爺の2019年SBEレポート

 

※酔爺の2024年SBEレポート 

 

 

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