〈BD〉【寄稿】2019『スーパービリヤードエキスポ』レポート by 「酔爺」

 

3月末にアメリカ・フィラデルフィアで

開催されていた

『Super Billiards Expo』

(スーパービリヤードエキスポ)。

 

日本のビリヤード企業も参加している

毎年恒例のエキスポです。

 

今年はそこに、以前BDで

あなたの知らないキャロムキューの世界」を

連載していた「酔爺」氏が参加。

現地レポートを寄稿してくださいました。

 

以下で早速どうぞ。

 

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酔爺・記:

 

 今回、久しぶりのSBEだったが、あろうことか成田空港でESTA(電子渡航認証システム)が失効していることが判明。すったもんだの末、飛行機に乗ることができたが、予定より大幅に遅れて、宿泊場所に着いたのは遠路はるばる18時間後だった。ちなみに今回、現地交通手段はUBER、宿泊はAirBnBと、10数年前に来た時にはなかったサービスを活用した。

 

 

 会場は、近年定番となっているペンシルバニア・フェニックスビルにある『Greater Philadelphia Expo Center』である。開場は朝11時となっているが、おそらく早く行っても入れてくれるはずと読んで10時過ぎには会場へと向かう。受付で4日間通し券のWeekendパスを購入。早速会場へと入ってみる。

 

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 最初に目に付いたのは『PREDATOR』のブース。社長のカリム・ベルハジが、何やら見覚えのある人物と黒いシャフトを手に話し込んでいる。誰かと思えばアメリカのキャロムプレイヤー アイラ・リー(Ira Lee)だった。

 

 彼とは、初めてこのエキスポに来た1996年に、当時サン・リー(故人。伝説的な韓国のキャロムプレイヤー)が経営していた『SLビリヤード』(現『キャロムカフェ』。ニューヨーク)で知り合った仲である。ということは、ひょっとして手に持っている黒いシャフトは……思わず聞いてみる。

 

酔爺「へい、アイラ。これはキャロム用カーボンシャフトか?」

アイラ「おぉ、そうだ。まだ試作品だけどな」

もろに喰い付く酔爺「発売はいつ?」

アイラ「まだ決まってない」

 

「本当か?」と今度はカリムにも聞いてみる。

カリム「うん、まだ何も決まってない」

そうか、残念……。

 

 「ちょっとこれで撞いてみる?」とアイラからの申し出。「もちろん」と答え、PREDATORに間借りしているMolinari(モリナーリ。PREDATORのキャロムキューライン)のブースにある、『ROK』という聞き慣れないメーカーのキャロムテーブルで撞いた。聞いてみるとROKはニューヨークに工場があるとのこと。クッションは『クレマッチ。最も速いタイプである。実際ラシャの関係か少し滑っていて、よく走るテーブルだった。

 

 カーボンキャロムシャフトで実際に撞いてみた感想としては、極端にトビの少ないシャフトでスピンもよく乗る感じである。現在酔爺はカーボンと木のハイブリッドシャフトを使用しているが、それよりもさらにトビが少ない印象だ。そのため当初は厚みを合わせるのに苦労したが、慣れてしまえば非常に強力な武器になりそうである。今後の発売が楽しみな製品だ。

 

 現在のキューのトレンドの一つは、間違いなく人口素材、特にカーボンファイバーを用いたシャフトであろう。キャロムシャフトに関しては、今年のSBEで見られたのはこのPREDATOR(Molinari)の試作品だけだったが、プールキューのカーボンシャフトに関しては『メウチ』、『ペシャウワー』といったメーカーも展示していた。この流れは今後も拡大して行きそうだ。

 

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 開場をぶらぶらしていると、最近日本でも人気上昇中のカスタムキューメーカー、『Treadway』(トレッドウェイ)のブースがあり、作者のジョシュ(Josh)がいたので話しかけてみた。彼とは初対面である。

 

酔爺「良いキューだね。これいくら?」

ジョシュ「xxxxドル」

酔爺「(結構いい値段だな……)そっかー、ふーん(買えなくはないけど今決めるのは性急だな)」

ジョシュ「ユーはどこから来たの?」

酔爺「フロムトーキョー、ジャパン」

ジョシュ「そっか。トーキョーから来たなら『K』を知ってるか?」

酔爺「知ってるもなにもめちゃめちゃ良く知ってるがな」

 

と、しばらくキュー探偵『K』の話で盛り上がる。結局、その場ではキューは購入しなかったのだが、最終的には結局いつもの悪い癖で、56インチ、ノーラップ、タップ径12mmのキャロム仕様キューを1本頼んでしまった。

 

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 そして、SBEの花形と言えば『ハイエンドキュー』。キューコレクターとして著名なケン・カーナーはそのまんま「ハイエンドキュー」という名前のブースを構えている。『TAD』、『カーセンブロック』や、幻のキューとも言われる『フランク・コスタ』などマニア垂涎の品揃えである。

 

 また、『Gentry Cues』では、バリー・ザンボッティやジョン・ショーマンなど、キューの価値はもちろん、作者自身の体重も重量級の大物キューメーカーがブースを訪れ、さらに、今や「キュー業界一のインレイオタ」の地位を確立しているデニス・シェアリングといった超絶技巧メーカーも加わってキュー談義を繰り広げていた。

 

 

 日本でもおなじみの『マクウォーター』は、本数は5本だけとやや少ないものの、新しい純正エクステンションと合わせて近くのテーブルでデモを行っていた。また、ニューカラーのシルバースモークキューを展示していたが、これは早々と購入されていた。

 

 しかし、以前から常連だった『サムサラ』や『RC3』などのメーカーが来ていないのはさみしいものである。そんな中、もはや古参となった『ジャコビー』のブースに寄ってみると、何故か『シューラ―』のキューが置いてある。よくよく話を聞いてみると、もともとレイ・シューラ―で働いていた職人がブランドごと移って来たという。だから構造も、スペックもインレイパターンも全て同じだぞと笑っていた。確かに見てみるとシューラ―キューなのだが、工作機械が異なるからか、より洗練されているようにも見えた。

 

 

 引退すると言っている老舗キューケースメーカー、『Justis Cue Case』のジャック・ジャスティスも「最後の出展」と言って出ていた。辞める辞める商法かというとそんなことはなく、「これが最後に製作したケースだ」と言って見せてくれたケースが写真のものだ。最初は売り物として出していたが、結局このケースは1口$20のRaffle(くじ)の景品になっていた。

 

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 日本メーカーの展示についても触れておこう。今年は『MEZZ / EXCEED』、『ADAM JAPAN』、『Kamui Brand』、『Navigator』、『3seconds』が出展していた。『MEZZ / EXCEED』のブースには、三木一則社長を始めとして多くの海外スタッフや契約プレイヤーが訪れて積極的に動いており、にぎやかな一角になっていた。やはりカーボンシャフトが前面に取り上げられていた。

 

 『ADAM JAPAN』のブースにはニューヨークに住む李佳プロ(JPBA)がいて、また、同ブース内に『Navigator』や『3seconds』といったメーカーが同居する格好で、海外からのユーザーに積極的に対応していた。中でも3secondsのケースはそのユニークな構造と軽量さから好評を得ていた。

 

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 もちろん、SBEで売っているのはキューだけではない。キューを製作するための素材や様々なアクセサリなども販売されている。パーツメーカーの中でも最大手と言われている『Atlas Billiards Supply』は今回は出展を見合わせていたが、カスタムキューでもお馴染みの『プレーサー』が出展していた。

 

 実際、キュー製作に必要なパーツはここで全て揃えられると言っても過言ではない。ハギ入りのブランク一つを取っても、組み上がったハギ、組みあがる前のハギ、材木、べニアなど、パーツを組み合わせてキューを作りたいユーザーから、フルスクラッチで一から作成したいユーザーまで、あらゆるレベルに対応出来る品揃えとなっている。プレーサーでは、以前は全ての部品を網羅したカタログを配っていたが、今は全てオンラインで対応しているとのこと。これも時代の趨勢か。

 

 

 また、キュー素材としてバールウッドを専門に扱っている店も出展していた。昨今象牙に続き、木材もワシントン条約による規制が増えてきたが、そこは大丈夫なのかと聞いてみると、これは完全に加工済みの製品だから大丈夫とのことであった。

 

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 以下、駆け足となるが、SBEの他のトピックスをまとめてお伝えしよう。

 

 

◆People's Choice Cue Award(↑)

 

ACA(American Cuemaker's Association)が主催する、毎年恒例の『People's Choice Cue Award』が今年も開催。各メーカーが持ち寄ったキューの中から観客が選んだ今年のTOP3は、ピート・トンキン(画像右のキュー)、pfd Studio(中央)、ジャコビー(左)だった。

 

 

◆アマチュアトーナメント(↑)

 

SBEでは各種のアマチュアトーナメントが開催されている。ジュニアクラス(12 & under / 17 & under) 、ウーマン、オープン、シニアクラス(50 over)、スーパーシニア(65 over)……など。中でもオープンアマチュアクラスは1024の枠が全て埋まってしまうという大規模なトーナメントである。

 

◆Diamond Open Pro Tournament

 

SBEでは、テーブルメーカーのダイヤモンドが冠スポンサーとなってプロトーナメントも行われている。今年の優勝者は、男子がJ・アラナス(フィリピン)、女子がK・トゥカチ(ロシア)だった。

 

◆TAP

 

TAPは北米最大級のアマチュアリーグであり、ここ何年かはSBEに合わせて「ラリー」(集会)と呼ばれる大規模な大会を開催している。話によると今年はさらに規模が拡大していたそうだ。シングル戦とチーム戦が行われていた。

 

(了)

 

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酔爺、ありがとうございました!

 

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※酔爺のキャロムキューの話

 

※2018年のエキスポレポート

(by キュー探偵『K』)はこちら

 

 

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末永くビリヤード場とプレイヤーのそばに。ショールームMECCA 

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