〈BD〉カーボンジャンプキューを自作! 『Y2-J』製作者の加藤さんに聞いてみた

 

SNSで姿かたちや製作風景が

随時公開されていたので、

ご存知の人もいるでしょう。

 

そして、既に30人以上のプレイヤーが

このキューで楽しく手球を

飛ばしているはずです。

 

…………

 

これまでにエクステンション、

キューホルダー、

タップRシェイパー(『R10 + C』)

などを自作してきた

ビリヤードDIY達人の加藤保広さんが

今回手掛けたのは、

なんとカーボンジャンプキュー。

 

シャフトもバットも主材料は

専門の工場から取り寄せたカーボンパイプ。

 

そこに3Dプリンタで作ったパーツ類を

組み込んで、調整しながら仕上げています。

 

ジャンプキューの名前は『Y2-J』。

 

先に記しておきますが、初回生産分は

既に全て希望者に譲渡済み。

 

「今のところすぐにまた作る予定は

ないですが、もし多くのご要望があれば、

今後また作るかもしれません」

(加藤さん)

 

おそらく日本初であろう、

「自作カーボンジャンプキュー」の

裏側を振り返ります。

 

…………

 

まずは『Y2-J』の仕様を。

 

長さ:1125mm

重さ:約235g

先角径:13.8mm

素材:シャフト・バットともにカーボン。

ジョイント:ラジアルピン

 

別売りエクステンション長さ:83mm 

別売りエクステンション重さ:約68g

エクステンション素材:レジン

 

問い合わせはこちらへ:

https://mobile.twitter.com/diy_billiards

 

 

エクステンションカラーは4色あります。

 

クリア

ブルー

レッド

スモーキー

 

…………

 

次に、製作の流れを

おおまかに教えていただきました。

 

こちらのTwitterも合わせて

ご覧いただくと、試行錯誤の様子も含めて

工程を理解しやすいと思います。

 

 

↑パーツデータ一覧と各部パーツ類

 

…………

 

◇ シャフト 

 

 

↑ バランスを調整するために、3Dプリンタで作った部品にネジを付けたものをシャフトの中に接着。

 

 

↑ 3Dプリンタで作ったラジアルピンのネジ山パーツをシャフトに接着。径は少し大きめにして、削って調整します。 あとは先端側に座とタップを接着し、削ればシャフトは完成です。 

 

…………

 

◇ エクステンション

 

 

↑ ネジ・接続部用パーツ・レジンで作ったエクステ本体を接着して、尻ゴムを付けます。 尻ゴムも3Dプリンタで作ってます。 ネジはビリヤード用品でよく使われる規格にしています。 

 

…………

 

◇ バット

 

 

↑ ジョイントピンを差し込むパーツを作成し、ピンを差し込み、接着します。 

 

 

↑ それをキュー尻側から差し込んで接着します。 

 

 

↑ そこにジョイントカラーパーツをはめ込みます。 

 

 

↑ キュー尻は、バランスネジを入れるためのパーツやカラーパーツを組み合わせて接着しています。 

 

…………

 

◇ その他

 

3Dプリンタは2種類使っています。見た目が鮮やかなパーツを作る用とジョイント部など硬いものを作る用とで分けています。 

 

 

↑ レジンを固めるタイプのプリンタで作ったカラーパーツ各種 

 

 

↑ 硬い部品を作るための3Dプリンタ 

 

…………

 

……という感じで、

 

加藤さんはいつもと変わらず

さらさらと説明してくださるのですが、

とんでもなく労力がかかっていることが

ひしひしと伝わってきます。

 

特にキューという道具は

ただ単にパーツを製作・成形し、

組み立てるだけでは

使えるものにはなりません。

 

加藤さんは普段は仕事をしているので、

製作やテストが出来るのは

余暇時間に限られます。

 

にも関わらず、初挑戦・短期間で

プロやハイアマも認める性能を備えた

ジャンプキューを自作出来たのは、

 

加藤さんの

プレー経験(Aクラスアマ)と

DIY経験をはじめ、

 

キュー性能・構造への理解、

材料やパーツに対する知見、

3Dプリンタを始めとする製作環境、

そして楽しんで作る気概、

 

こういったもの全てが

揃っていたからでしょう。

 

最後に加藤さんに

製作秘話をお聞きしました。

 

…………

 

――ジャンプキューを作ろうと思ったのは?

 

加藤:カーボン材料を、工場にテーパー・厚み・長さなどを指定して作ってもらえることがわかり、3Dプリンタでパーツも作れそうだったので、この組み合わせで「キューも自分で作れるのでは」と思ったことが始まりです。実はその前に、バットのみですが、レジンを使って3Dプリンタだけで作れるのかなと思って試したんですが、それだと耐久性がなく、打感も悪かったので、カーボン材料を買って作ろうと思いました。ただ、プレーキューより短いジャンプキューの方が作りやすいと思い、ジャンプキューにしました。

 

――どんなジャンプキューを作ろうと考えていましたか?

 

加藤:コンセプトは「キュースピードが無く、背が低い方でも飛ばしやすく、手球が暴れにくい」ということです。キューを重たくすれば飛ばしやすくはなるのですが、手球は暴れやすいと思ってます。また、重たくなると力がない方には飛ばすのが難しいと思います。なので、『軽く、簡単、暴れない』という点を重視していました。その上で性能も追求していました。DIYで作るものであっても他のジャンプキューと同程度とか劣るものだと面白くないので、逆の意味で期待が裏切れるように工夫しました。

 

――キュー製作は未知の領域。苦労も多かったのでは?

 

加藤:まず今の仕様に落ち着くまでに時間がかかりました。バランス、タップ、座の組み合わせ……そういったところのテストを何度も重ねました。それと、当初はエクステンション無しの予定でしたが、付けた方がロングジャンプでの方向性が上がりますし、要望も多かったので、途中から作ることになりました。ですが、エクステンションも当初は耐久性が無く、パーツ変更をして今の形になりました。

 

 

加藤:この画像(↑)のような感じでシャフトウエイトを変えたり、タップ・座を変えたりしながらテストしていました。結果、ウエイトはセパレートタイプとしてシャフトの内部に入れるようにしました。さらに、キューを真っ直ぐにするのは苦労しました。3Dプリンタだとどうしてもジョイントパーツの水平が0.01~0.02mmほどずれるので、ジョイントを繋げた時に真っ直ぐになりません。なので、シャフト側のジョイントを0.01mm単位で削って真っ直ぐになるように調整するのが大変でした。そういったこともありながら、合計35本を1ヶ月ちょっとで作りましたので、ペースとしては早い方だったのかなと思います。

 

――約1ヶ月、仕事以外の時間はかかりきりだったのでは?

 

加藤:はい、「思ったより大変だった」というのが今パッと思い付いた感想です。「DIYでも頑張ればキューを作れる」と言えばそうなのですが、もっと簡単に部品を組み合わせるだけで出来るものだと思ってました(笑)。ただ、性能には非常に満足しており、『グランプリウエスト第1戦』(6月・愛知)に出た時に自分でも使いましたし、プロから「簡単に飛びますよね」というコメントをいただけたのは嬉しかったです。既にプロ・SAクラスアマ含めて30人以上の方に使ってもらえているので、作って良かったと思いますし、DIYキューなのに選んでくれて感謝してます。

 

――今後は?

 

加藤:おかげさまで高い評価をいただき、用意した分は全て完売となりました。もっと作りたいのですが、かなり労力もかかるため、ご要望が多ければ少しづつですが作れるかなとは思っています。また、今度はブレイクキューもDIYで試作したいとは思ってます。

 

(了)

 

…………

 

加藤さんのビリヤード用品DIY企画:

 

◆ 2022年4月「タップシェイパー、R10 + C」

◆ 2021年8月「3Dプリンタも活用。エクステンションの作り方」

◆ 2021年8月「カーボン板でキューホルダーを作ってみた!」

◆ 2020年5月「練習用テーブルを作ってみた」

 

 

………… 

 

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