〈BD〉「『つらいままやる』戦い方を認められた」――大井直幸に聞くコロナ禍のイギリス遠征と『CLP』5位。【後編】

© JP Parmentier - Matchroom Pool 2021
© JP Parmentier - Matchroom Pool 2021

 

3月の新9ボールイベント

『Championship League Pool』

(以下「CLP」)で5位。

 

イギリスから帰国し、自宅で

自主隔離期間を過ごしている

大井直幸プロ(JPBA)の

インタビュー【後編】です。

 

…………

 

~4/14掲載の【前編】から続く~

 

 

――5位タイという結果については?

 

「もちろん勝つ気で行ってたし、あの時できることを精一杯やれたと思うし、その上での結果だと思ってます。勝負は時の運とも言うから……『運』っていうか、あれだけ次から次へと試合をこなすフォーマットだと、良い時もあれば悪い時もあるという感じかな。もちろん自分が悪い時に負けた試合が多いんで、テンションとか精神状態とかを『上げていかなくちゃ』というふうに考えた瞬間もありました。でも、最終日(優勝決定リーグ)は途中から『悪くても戦えてるな』と実感したところがあって。あの状態、あの精神面を忘れずにいられたら、今後マッチルームのイベントで優勝するチャンスもあるんじゃないかなと思いました」

 

――自分の『最高』は求めないと。

 

「普通は試合をしながら一番良い状態に持って行こうって考えますよね。でも、『それって違うんじゃないか。それは必要ないな』ってことに気付けました。今までやってきたことを信じて撞けば普通に戦えるだろうし、今の僕は状態が悪かろうが良かろうがもはや結果は大きく変わらないんじゃないかってことが見えてきた感覚があるんです」

 

――人事を尽くして天命を待つ。

 

「そうそう。焦る必要はないっていうか、気持ちとか状態とかを無理に上げようとしないでいいなと。今回の5位という成績も、自分の何かが足らなかったというふうには思ってないんですよ。もうこれを繰り返すだけなんだろうなと。もちろん僕以上にレベルの高い選手達はいるし、今回出てないトップ選手達もいるんですけど、それでも大会で僕がやることは変わらないなって。その時の状態のまま落ち着いて戦うしかないし、そうすれば勝つチャンスも巡ってくるんじゃないですか」

 

――大会登場初日(Day 4)に、圧勝と言える展開で初戦から4試合連続勝利を収めました。あの時『調子に乗れてる』ような感覚はありましたか?

 

「ありました。調子に乗ってることに気付いたから、リーグ5試合目から意図的にブレーキを踏みました。『勢いだけで行きたくない』って思っちゃったんですよね。『これって実力なのかな。もしこの勢いのまま勝ち進めたとしても、それは何か違うな』って。そう思ってブレーキを踏んで勢いを落としたら、そこで見えた『世界』が本当に面白くて、『こっちの世界で撞きたい』と思ったんです。『こっちの世界』を知った後の自分なら、もっとその時の状態と感情のままに撞けるようになって、調子に乗って撞く自分のことも認められて、次からはブレーキを踏むこともなくなるのかなって。言葉にするとすごく変ですけど(笑)、そんな精神状態でした」

 

――そんな葛藤があったんですね。

 

「そう。だから、Day 5(大井プロ登場2日目)は、一旦自分の中で勢いを落としちゃってるんで調子という意味では朝から悪くて。まあ、それはキューのシャフトを間違えてたってのもあるんだけど(笑)。『ぐちゃぐちゃになってもいいからそのままやってやろう』って腹をくくったんです。そうしたら徐々にいいパフォーマンスが出てきて、ぐちゃぐちゃなりながら勝ち抜けられました」

 

――Day 5で1位通過を決めて、2日間の休みを挟んで、大会最終日(Day 8。優勝決定リーグ)を戦いました。

 

「朝起きた時からナーバスというかシリアスになってて元気はなかったです。それでDay 4の序盤みたいな勢いが欲しくて『上げていこう』と思いながら試合に臨んで、3試合ぐらいして『やっぱり違うな』と(苦笑)。『これは“つらい”のままやるべきだ』と思ってそうしたら、4試合目ぐらいからパフォーマンスが上がってきて、『こういうことなのか。悪くても戦えてるな』と。結局プレーオフには進めなくて5位で終わったけど、『勢いで行かない』『つらいままやる』という戦い方を認められたことがものすごく自信になったし、その体験を日本に持って帰れてよかったと思います」

 

――勢いで勝つスタイルも大井プロには備わっているように思いますが……。

 

「勢いだけで勝てた大会は日本ではあります。でもそれは勝ててしまっただけだし、嫌なんです。海外ではその戦い方は通用しないから。もう何度も外に出ててわかってるけど、海外では調子に乗ったまま優勝まで行ける大会はないし、必ず吐きそうなぐらい追い込まれる時がある。そのつらさを感じながら撞くのが楽しいんです。僕は世界の舞台で勢いで撞くんじゃなくて、全ての物事をわかった上で自分をコントロールして勝ちたいんだと。今回そこを再確認できたことが本当に大きいし、僕にとって財産になったと思います」

 

――試合に臨む心構えが固まりつつありますね。

 

「自分でも言うのもあれだけど、プロスポーツ選手っぽい考えになってきてるなと思います。何年掛かってるんだよって話だよね(笑)。今回は向こうでも日本でも一人で考える時間がいっぱいあったけど、やっぱり今話したところに行き着くんです。ビリヤードでこういう経験ができてる人はそんなに多くないだろうし、その時その時の全てを楽しんでやるしかないよね。そんなふうに活動できるのも、日頃から支えてくれたり、応援してくれてる人達のおかげなので、ファンの人達やサポートしてくれている企業の方々には感謝しています。特に今回はOWLさん、ZANさん、Sessionさんに助けてもらいました。ありがとうございました」

 

――次は5月の『ワールドカップオブプール』。今回と同じようにPCR検査や帰国後の隔離期間もあるでしょうし、タフな遠征になりますね。

 

「楽しみしかないですよ。PCRや隔離はそりゃもちろん嫌だし、しんどいし、マジ地獄だけど(笑)、試合後のことなんて今から考えたってしょうがない。まず試合を楽しむだけです。『CLP』が終わってからまだ球は撞いてないけど、全く気持ちは途切れてないんで、球の状態はすぐ普通に戻ると思います。以前経験したことがあるけど、気持ちがビリヤードから離れるとホントひどいことが起きちゃうからね。今の僕はそれは一切ないんで、いい状態でまたイギリスに行けると思います」

 

(了)

 

 

Naoyuki Oi

JPBA40期生

1983年1月10日生 東京都出身

JPBA年間ランキング1位・6回('06年、'12年、'14年、’15年、’17年、’18年)

2012年『9ボール世界選手権』3位

2014年『全日本選手権』準優勝

2017年&2018年『ジャパンオープン』準優勝

2017年『ワールドゲームズ・ヴロツワフ大会』銅メダル

2017年『USオープン9ボール』5-6位

2018年『CBSAツアー 中国・密雲戦』優勝

2019年『ジャパンオープン』優勝

2021年『チャンピオンシップリーグプール』5位

『関西オープン』優勝1回

『全日本ローテーション』優勝3回

『北陸オープン』優勝5回

『北海道オープン』優勝3回

『東海グランプリ』優勝4回

『グランプリイースト』(GPE)優勝7回(2018 GPE MVP)

『グランプリウエスト』(GPW)優勝16回

『ワールドカップオブプール』3位・2回

他、優勝・入賞多数

使用グローブはOWL

使用キューはHOW(ハオ) 

使用タップは斬(ZAN)

所属:Shop FLANNELPool & Darts FLANNEL

スポンサー:ココカラダ、Andy Cloth

 

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