〈BD〉【寄稿】現地ビリヤード場オーナーにインタビュー。タイ・パタヤのビリヤード事情vol.4 by Ian

 

文化遺産・自然遺産やビーチリゾートなど、

観光スポット豊富な東南アジアの仏教国、タイ。

 

ビリヤード好きな人にとっては、

「スヌーカー強国」のイメージがあるでしょう。

 

ですが、プール(ポケットビリヤード)も

盛んだということはあまり知られていません。

 

首都バンコクだけでなく、

リゾート地として知られるパタヤにも

著名ビリヤード場が複数あり、

ローカルプレイヤーだけでなく、

海外からも多くのプレイヤーが訪れています。

 

今、熱を帯びているパタヤプール事情を、

現地に住む日本人、

「Ian」(イアン)さんがレポート。

 

4回目となる今回は、Ianさんが通う

ビリヤード場、『Mega Break』のオーナー、

Olly(オリー)さんに、

 

お店のことやオリーさん自身のことなど、

いくつか質問をしてみました。

その回答をお届けします。

 

また、原稿の最後に、

コロナウイルス感染拡大を受けて

警戒を強めるパタヤの街の様子も

教えていただきました。

 

…………

 

Ian記:

 

サワディーカップ(こんにちは)。

タイはパタヤに住むIan(イアン)です。

 

現在、3~4月のタイは、

過ごしやすかったハイシーズンも終わり、

1年で一番暑い時期になります。

 

今回は私が通うビリヤード場、

『Mega Break』のオーナー、

Oliver Downey氏に話をうかがいました。

私的感想を交えながら紹介していきます。

 

右がオリー
右がオリー

 

向かって右側がOliver Downey、

通称、Olly(オリー)。

 

向かって左側は、Scott Cooney。

彼については別の機会で紹介します。

 

…………

 

――オリー、まずあなた自身の事についてお聞きします。バックグラウンドを教えてください。

 

Olly : 1976年生まれの43歳。出身はイングランドのレスターだ。国籍はイギリスだよ。

 

――パタヤ在住歴は?

 

Olly : 約17年。

 

――ビリヤードはいつ始めたの?

 

Olly : 19歳の時。最初はアメリカで始めた。

 

※Ian補足:たしかにオリーはイギリス出身者にしては珍しく、フォームやストロークにスヌーカーの影響がほとんど感じられません。ブリッジもオープンだけではありません。

 

――好きなゲームは?

 

Olly : 好きな順に10ボール、8ボール、ワンポケット。まぎれ(紛れ)が少ないゲームが好きだね。

 

※Ian補足:実際彼が9ボールをプレーしてるイメージは私にはありません。ワンポケットが好きだったりするところはアメリカンプールの影響を受けているのでしょう。

 

――好きな選手は?

 

Olly : エフレン・レイズ。

 

※Ian補足:彼がレイズを語る時の口調は熱がこもってました。

 

――あなたの仕事は?

 

Olly : Mega Breakのオーナーだ。

 

――開業して何年になりますか?

 

Olly : 15年。

 

――どうしてプールホールを経営しようと?

 

Olly : 当然だが、ビリヤードが好きだから。そして、パタヤのロケーションが素晴らしいし、当時の貨幣価値から考えてチャンスがあると思ったんだ。

 

フィリピントップ選手のR・ガルシアは以前Mega Breakのスポンサーを受けていた
フィリピントップ選手のR・ガルシアは以前Mega Breakのスポンサーを受けていた

 

――毎年何人ものフィリピンプロプレイヤーが賞金稼ぎと、スポンサー探しを兼ねてパタヤを訪れています。Mega Breakは2015年から3年間ほど、R・ガルシア(2017年9ボール世界選手権準優勝)のスポンサーになっていました。今後も誰かを受け入れる事はありますか? 例えば、国籍問わずに日本の若手プロとか。

 

Olly : ハードな質問だな。今の段階では考えてないよ。知っての通り、選手はここを拠点に世界を転戦する。我々はその費用を含め全てを負担することになる。スポンサーの95%は損をするものだからね。

 

――次にMega Breakハンデキャップシステムについて。どうしてこの様な形式に?

 

Olly : これが一番民主的だからだよ。そう思わないか?

 

※Ian補足:彼は何度も "democratic" というワードを強調していました。公正・平等を追求した結果、このハンデキャップシステムが出来上がったのだと。

 

――日本ではここまで細かく分かれてないんです。

 

Olly : このシステムが、日本やアメリカで最適かどうかはわからない。少なくともここパタヤではベストだと思っているよ。

 

※Ian補足:クラス分けについての説明は以下で改めて。

 

――夢や目標は?

 

Olly : ここパタヤで私の娘に良い教育を受けさせたい。パタヤという街は全てが揃っている最高な所だよ!

 

――ありがとう。

 

…………

 

プレー中のオリー
プレー中のオリー

 

オリーはいちプレイヤーとして見ても

かなり上手い上級プレイヤーです。

 

技術力や知識の奥深さは

すごいものがあると思います

(下記のMega Breakのハンデシステムで言うと、

オリーは上から3番目の「A+20」です)。

 

オリーのプレーの参考映像。↓

 

相手は有名な元スヌーカープレイヤーで

現在は『Bangkok Hustlers』のオーナー、

スチュアート・ペットマン

(※プールの『全日本選手権』に参加経験あり)。

 

 

私はオリーと知り合って長いですが、

深く話をしたことはありませんでした。

 

パタヤという移り変わりの早い場所で、

パイオニアとしてプールホールを長年経営し、

色々と苦労もしてきたことが想像出来ます。

そんな彼を尊敬し、今後も応援しています。

 

…………

 

ある時の『サンデー9ボール』の選手別データ
ある時の『サンデー9ボール』の選手別データ

 

ここでMega Breakのクラス分け

(ハンディキャップシステム)に

ついての説明をします。

 

Mega Breakの9ボールや10ボールの

トーナメントでは、「26段階」に

分けられたハンデを採用しています。

 

下から順に、

B

B+

A

A+

A+1

A+2

……(中略)……

A+19

A+20

Pro

Pro+

……となっています。

 

BからA+ぐらいまでが日本で言う初級者とC級。

A+1からA+5ぐらいまでがB級。

A+6からA+12ぐらいまでがA級。

 

A+13以上はSAやプロ。

A+16以上ともなれば、世界的に

名前が知られている選手も入って来ます。

 

このハンデによって

全てのフォーマットが決められています。

 

例:A+4プレイヤー vs A+3プレイヤーの

対戦ではレース数は5-4。

 

例:Proプレイヤー+ vs A+4プレイヤーの

場合はレース数は8-3で、

さらにA+4選手には5番と7番がボールハンデとして

与えられます(9番や10番と同じ扱い)となります。

 

このようにMega Breakのトーナメントでは

どの選手にも勝つチャンスがあります。

というより、格上プレイヤーにとっては

勝ち上がるのがキツいと思われます。

 

しかし世界トップレベルになると、

このフォーマットでもさほど苦にしません。

 

Mega Break来店歴のある

「Pro」と「Pro+」ハンデのプレイヤーで、

日本の皆さんが知ってそうな

世界トップクラスだと、

M・イモネン、D・グレイブ、A・カザキス、

M・ヒー、R・ガルシア、A・ラガなど。

 

特にフィリピンプレイヤーは

自国で普段から同じ様な厳しいハンデを振って

撞いているので慣れています。

 

とはいえ、上級者にとっても厳しい試合に

なる事が多い為、相手が格下とはいえ

気が抜けないのは間違いありません。

 

このシステムの利点は下のプレイヤーが

勝てる確率が高い為に、

参加者が集まりやすいことです。

 

そして、勝つ事によりハンデが上がり、

モチベーションを保つ事が出来ます。

 

(※参加人数や順位をもとにしたポイント制に

なっており、一定のポイントに達すると

ハンデが上がる仕組み。久しぶりに参加した

プレイヤーなどはハンデを調整される場合あり。

これら全てをオリーが管理している)。

 

このあたりは日本のハンデ制トーナメントとは

異なるように感じています。

 

どちらかと言うと日本の場合は、

クラス数が少ない為に、上級者に有利で、

下のクラスには厳しいイメージがあります。

 

…………

 

パタヤの夜の町並み。以前(左)と現在(右)

 

 

最後に、3月22日現在の

パタヤの状況についてお知らせします。

 

現在、世界中の国が新型コロナウイルス

感染拡大という問題に直面しています。

日本の皆さんも色々と大変かと思います。

 

こちらタイでも刻々と状況が変化しており、

明日の予想さえつかない状況です。

 

現時点で日本(外国)からタイへは

事実上の入国禁止の措置が取られています。

 

そして、我々の普段の生活では、

外出禁止令こそ出ていないものの、

パタヤでは3月18日から3月末まで

全ての娯楽施設が閉鎖されています。

 

バーやマッサージ店、ボクシングジムや

スポーツジム、映画館などが閉鎖。

ビリヤード場もです。

 

レストランなどは開いてますが、

テイクアウトに限るなどの対応をしています。

 

バンコクや他の都市ではデパートなどの

商業施設も含めて、4/12まで休業となります。

 

近所のスヌーカーホールももちろん閉まっていて、休業を知らせる張り紙がされていました
近所のスヌーカーホールももちろん閉まっていて、休業を知らせる張り紙がされていました

 

私自身パタヤに6年住んでますが、

こんな事は初めてです。

 

この状況が長引けば、

世界でも有数の観光都市であるパタヤは

経済的にかなりのダメージを受けるでしょう。

 

それと共に人々の精神面が心配です。

普段は明るいタイの人達も不安がってます。

 

できるだけ早く街が活気を取り戻し、

日本そして世界中から、人々が安心して

タイに来られる日を待ちたいと思います。

 

(了)

 

…………

 

Ianさん、今回もありがとうございました。

体調管理と感染予防にお気を付けください。

 

…………

 

◆ Vol.1 タイ・パタヤ、トーナメント参戦記

◆ Vol.2 パタヤの『Mega Break』はこんなお店

◆ Vol.3 日本と違う? 似てる? パタヤのビリヤード事情

 

 

…………

 

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