〈BD〉「さらばキュー探偵K」――Detective K season 3 episode00

 

オレの名は、K。探偵屋だ。

だから皆オレのことをDetective "K"と呼んでいる。

 

ビリヤードの道具、キューの調査なら任せてくれ。

しかし、もはやBDで仕事はない。

 

*****

 

前回までの流れ~

 

「これまでご苦労さまでした。

仕事の依頼はここまでです。」

 

がびーん!

キュー探偵K、これにてジ・エンド!?

 

*****

 

どうやらオレの運も尽きたようだ……。

 

これまでしのいできた、BDからの無茶な依頼が

走馬灯のように頭のなかを巡っている。

 

事務所をたたみ、キューケースをたたみ、

旅に出るぜ。

 

「ナニをぶつぶつ言っているんですか?

これから新しい仕事ですよ。」

 

クビ……じゃない?

 

「クビなんて言いましたか?」

 

そうか! 新しい仕事かっ!

もう探偵Kはヤメだな! ヤメヤメッ!

 

では、新シリーズ

「Kの艶っぽい玉竿夜話」を始めるぜ!

ワクワク……。

 

「そんなコラム頼むわけないでしょう!

早とちりしないでください。」

 

ということは?

 

「キュー探偵K、今回からシーズン3開始です。」

 

なるほど! 新たなシーズンの開始か。

 

「そうです。

今回は特別に、調査内容はフリーとします。」

 

そいつはありがたい。

では、「夜の黒光りカスタムキュー」を……、

 

「ダ・メ・です!」

 

わかった、わかった。

 

それでは

「伝説のアイディアマン、ビル・ストラウド」を

調査テーマとしよう。

 

*****

 

 

キューメーカー、

Josswest(ジョスウェスト)が

製作を止めて、かれこれ7年近く経つ。

 

1972年から2011年まで製作された

ジョスウェストは、今なお高い評価を保っている。

 

しかし作者、Bill Stroud(ビル・ストラウド)は、

現在消息すらつかめていない。

 

アメリカのメリーランド州ボルチモアで1968年、

Dan Janes(ダン・ジェーンズ)と共に

ジョスを立ち上げ、

 

1972年に袂を分かって旗揚げしたのがジョスウェスト、

というストーリーは良く知られている。

 

しかし、ビル・ストラウドが

キューメイキングの世界で果たした数々の

貢献については、意外と知られていない。

 

その一部を紹介する。

 

*****

 

 

★10山ピン

 

外径8分の3インチ、

長さ1インチ(2.54cm)あたり10個の山を持つネジ。

 

通称「10山」と呼ばれ、シャフトとバットを繋ぐ

ジョイントピンに使われる。

 

1969年代末、このネジを開発したのが、ジョスだ。

 

実はこんな仕様のネジ、工業規格には存在しない。

 

他メーカーのキューに使われていた、

長さ1インチあたり12個の山を持つネジを見て

パクろう同じものを使おうと思った

ビル・ストラウドとダン・ジェーンズが、

ネジ山を数え間違えたからだ。

 

その10山ネジが、好評を博した。

 

アメリカ大手量産メーカー、

マクダモットまで採用したほどだ。

 

今やメーカー問わず採用される規格。

それがビル・ストラウドのボケから始まった。

 

ところが、ジョスもジョスウェストも、

早々に10山ピンの使用を止めている。

 

構造か、部品調達の問題かは不明だが、

理想のネジではなかったのだろう。

 

その思いは約20年後、後述のユニロックや

ラジアルピンの開発につながってゆく。

 

*****

 

ICCSで公開されたコンピュータによるデザインの画面
ICCSで公開されたコンピュータによるデザインの画面

 

★コンピュータ

 

キュー製作におけるコンピュータ使用の草分けは、

ビル・ストラウドだ。

 

「その時代でベストな道具を使うのは当然」と

考えたのだ。

 

1980年代半ばには、

アップル社のマッキントッシュと、

キュー製作用にカスタマイズした彫刻機を接続し、

インレイ作業に使用している。

 

当時、キュー製作は

「機械使用=大量生産、手作り=カスタム」と

信じられていた時代。

 

「パンタグラフマシン」という、

テンプレートを手作業でなぞる彫刻機械の使用すら、

手作業より低く見られていたのだ。

 

コンピュータの使用なんてもってのほか、

と思われて当然だな。

 

ところが、手作業が最高と信じる連中からすれば、

コンピュータは理解を超えた存在。

 

ジョスウェストを軽んじる風潮は生まれなかった。

 

現在は、生産本数の大小を問わず、

デザイン・機械制御にコンピュータは不可欠。

 

ビル・ストラウドは時代を先取りしていたというわけだ。

 

*****

 

ユニロックの部品
ユニロックの部品
ラジアルピン
ラジアルピン

 

★ユニロック/ラジアルピン

 

今やバットとシャフトをつなぐジョイントとして、

幅広く使われているユニロックとラジアルピンにも、

ビル・ストラウドが関わっている。

 

1990年代初め、

既存のジョイントピンに不満を感じた

精密機械メーカーの社長、ポール・コンスタンが

ビル・ストラウドに協力を求め、

開発されたのがユニロックだ。

 

さらにその後、シャフト側の雌ネジを

木部に直接彫る構造が持つ弱点を解消した

ラジアルピンも共同で開発している。

 

当初は少量生産メーカーの高級オプションだった

ユニロック/ラジアルピンは、1990年代末には

量産メーカーも採用し、ごく普通のパーツとなった。

 

ちなみに、ラジアルピンの普及には、

日本における高評価が一役買ったことも

付け加えておこう。

 

*****

 

★技術指導

 

ビル・ストラウドは、他メーカーとの交流や

技術指導を積極的に進めていた。

 

「ユーロウェスト」や、「ユニバーサル」など、

ヨーロッパやアジアのメーカー立ち上げまで

サポートしたほどだ。

 

その中で、アダム・ジャパンに対する

「日本のメーカーなら、製品名に日本語をつかうべき」

というアドバイスは、記憶に留めるべきだ。

 

高級キューラインナップ『MUSASHI』、

神代木を使った『JYOMON』、

ブレイクキューの『BENKEI』、

ジャンプキューの『TENGU』など、

その名前と共に海外、特にアジアで高く評価された

(伝説のジャンプキュー『青い空』は例外で、

また別のストーリーがある)。

 

やがて、アダム・ジャパンに限らず、

日本製のビリヤード用品の多くが、

優れた「メイド・イン・ジャパン」の代名詞として

日本語の製品名を与えられた。

 

日本の陶磁器をはじめとする美術品にも

深い造詣を持ち、客観的に日本を評価できた

ビル・ストラウドならではの影響だな。

 

*****

 

ICCS会場風景
ICCS会場風景

 

★ICCS

 

2002年、キューコレクターが

自らのコレクションを公開する機会を設け、

同時にコレクター同士やメーカーとの交流を図るため

企画したのが、『インターナショナル・キュー・

コレクターズ・ショー』(ICCS)。

 

それまでは、キューメーカー主体の

展示即売会イベントは開催されていたが、

コレクターを主役に据えた点が画期的だった。

 

一番の成果は、他のコレクションを目の当たりにした

コレクターの所有欲を強く刺激したところ。

 

「次回はもっとすごいキューを展示したい」という

欲求から、より高価なモデルが求められるようになった。

 

同時にそれは、キューメーカー間の競争をあおり、

レベルアップにもつながった。

 

ビル・ストラウドは2009年までICCSを主催し、

その後はコレクターの有志による運営に引き継がれている。

 

今日のカスタムキュー市場を形成し、

日本で行われているTOCNFMCCというイベントにも

少なからず影響を与えたってわけだな。

 

*****

 

様々な規格に対応するユニバーサルジョイントもビル・ストラウドのアイディア
様々な規格に対応するユニバーサルジョイントもビル・ストラウドのアイディア

 

常に変化を求め、およそ10年ごとに

アメリカ各地を転々とし、キューのデザインや構造を

頻繁に変えてきたビル・ストラウド。

 

なぜかアメリカのコレクターやキューメーカーは、

彼の功績を称え、

表彰しようなどという動きは見せていない。

これだけの大きな影響を残しているにもかかわらず、だ。

 

そのウラに、様々な利害関係が絡みあうことによる、

何らかの不都合な真実があると、オレはニラんでいる。

人間関係ってヤツは難しいものだぜ。

 

*****

 

……というわけでSeason3スタートだ。

引き続きよろしくな!

 

(to be continued…)

 

Detective “K”についてはこちら

 

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