小宮鐘之介・第29期球聖位

次世代の鐘を鳴らせ!

2021年10月

 

 

関東以外の試合に出ることが少なく、

いわゆる「全国タイトル」には

これまで縁がなかったものの、

 

ジュニア期からその名を知られ、

『全関東』『9ボールクラシック』で

複数回の優勝を誇り、

 

プロトーナメント

『グランプリイースト』でも

準優勝・3位・5位入賞のある

小宮鐘之介(こみや しょうのすけ)。

 

26歳になった小宮が

遂に大きなタイトルを手にした。

 

第29期球聖戦 挑戦者決定戦』と

同・球聖位決定戦』で見せた

落ち着きあるゲーム運びと

ソリッドなパフォーマンスには

長期政権到来の予感も漂う。

 

「第29球聖位」となったその夜に、

戦いを振り返ってもらった。

 

…………

 

応援団にやっと試合を見てもらえて良かった。


 

――初めて球聖位になりました。

 

小宮鐘之介:東日本A級戦』(2020年11月)で勝ってから、開催延期もあって今日までが長かったんで、まず「やっと終わったな」「応援してくれてた人達にやっと試合を見てもらえたな」というのが一番です。その次に「勝てて良かったな」という気持ちです。

 

――東日本A級戦から約11ヶ月。気持ちを保つのも苦労したと思います。

 

小宮:A級戦の頃は自分の中でだいぶ仕上がってた感覚があったんで、「このまま球聖位になれるんじゃないか」ぐらいの気持ちだったんですけど、開催日が決まらず、時間が経つにつれてだんだん自信がなくなって不安になりました。

 

――どんな調整をしてきましたか?

 

小宮:普段通りです。もともとあまりフォーマットとかテーブル・ボールとかを気にしてないというのもあると思いますけど、特別な対策はしてないです。ただ、開催が決まってからこの1ヶ月ぐらいはほぼ毎日撞いてました。仕事もあるのであんまり長い時間は取れないんですけど、短時間集中で一人で練習することがほとんどでした。

 

――日曜日の『球聖位決定戦』についてお聞きします。第1セットは両者まだ硬い印象でした。先に小笠原(晋吾)選手にセットを取られました。

 

小宮:朝イチが弱いのは自分でもわかってるんですけど、悪すぎました(苦笑)。身体も硬かったし、雰囲気も今までにないものだったし、全然噛み合ってなかったです。でも、そんなもんだろうと予想してたんで引きずることはなかったです。

 

2日間「決め事」を守れたことが大きかった。


 

――0-1から一気に5セット連取で勝利しましたが、プレー内容に対する自己評価は?

 

小宮:全然思うように撞けなかったです。ラシャが綺麗でポケットが渋いという、撞いたことのないようなコンディションでポジションが出なかったです。我慢して苦しい球を撞いてました。それにプレー中は周りがシーンとしていて他のテーブルの球の音もしないし、やりづらさもありました。試合を見てた人達から「いつもと全然違う感じだったね」と言われました。ひょっとしたら、それがいい方向に出たから勝てたのかもしれないですけど。

 

――そうでしたか。それでも慌てることなく自分のリズムで撞いているように感じられました。

 

小宮:たぶんリズムは普段とそんなに変わらなかったですけど、ショットセレクションは手堅くなってたと思います。いつもならもう少し強気にスパスパ行くところで抑えたショットが多かったかなと。それはたぶん、球聖戦は個人タイトルと言えば個人タイトルですけど、決定戦は応援団がすぐ近くにいてくれてるから、自分一人の戦いじゃない感じがすごくするし、皆をガッカリさせたくないという気持ちが出たんだと思います。僕、そういうところは気にしいなんです(笑)。

 

――終盤の第5、第6セットは小笠原選手の状態が良くなり競り合いになりました。プレッシャーはありましたか?

 

小宮:そこまではなかったです。長丁場なんでセットを取られることももちろんあるだろうし、毎セット競るだろうという前提でやってたんで、取られたらしょうがない、切り替えて次に行こうという感じでした。常にメンタル的にはそんな感じだったので、もしあの第5、第6セットを取られてたとしても、そこまでドキドキするみたいなことにはなってなかったと思います。

 

――ご自身が思う勝因とは?

 

小宮:自分の中での決め事を結構守れたことですかね。土曜日(挑戦者決定戦)そこを意識して撞いたら良い方向に出たので、日曜日(球聖位決定戦)もそのまま行こうと。今振り返ると、決め事に意識を向けていたおかげでメンタルやルーティンが崩れなかったのかもしれないです。ちょっといやな流れの時にマスワリが出せたりしたのも、そういうことなのかなと。

 

――「決め事」は具体的には?

 

小宮:「ブレイクはゆったり打とう」「ノリノリになってきたら勢いに任せていい」「展開が悪くなってきたら一呼吸置いてちゃんと考えよう」みたいな感じで、色々な場面に合わせたものがあります。

 

応援団に乗せられて自然とガッツポーズが出ました。


 

――勝利を意識した瞬間はありましたか?

 

小宮:2日間を通して全然なかったです。スコアもほとんど気にしてませんでした。1ラック1ラック、一球一球、その時の自分のコンディションを踏まえて何をどう撞けば有利になるかは考えてたし、そのジャッジはだいたい上手くできたと思います。でも、「ここを取ったら勝てる」みたいなことは考えても意味がないので、頭が勝手にそういう考えを排除してたと思います。

 

――『球聖位決定戦』で記憶に残るショットとは?

 

小宮:最後のセットの最後の4番セーフティが一番印象に残っています(第6セット・6-6のダブルリーチ時。※上記動画に収録)。4番は穴前に残しちゃってますけど、手球は思った通りのラインで8番の裏に隠せました。

 

――ああ、小笠原選手のジャンプ(ミス)を誘う形を作ったセーフティですね。

 

小宮:そうです。ただ4番に薄く当てただけなんですけど(笑)、あの場面で空振り(ノーヒット)も寒いですし、薄すぎたらスクラッチもあるし、いろんなリスクがある場面で、決め切ってから撞けたことと、狙った厚みに当てて思った通りに手球を動かせたことが良かったです。もちろん相手に入れられたり返されたりする可能性もあるけど、それも覚悟の上でヒルヒルのあの場面で自分の考えを貫けました。

 

――相手のジャンプミスの後、4番から取り切って上がりました。緊張感は?

 

小宮:いや、なかったです。「これを取ったら球聖位だ」というのはもちろんわかってたんですけど、4番で自分が思うように撞けたことと、取り切れる形が回って来たことが嬉しくて、緊張感を覚えることもなくそのまま撞き切ったという感じでした。

 

――ゲームボールを入れた直後、大きくキューを掲げて応援団の拍手に応えていました。

 

小宮:単純に嬉しかったのもありますし、応援団がすごく喜んで拍手してくれたんで、それに乗せられて自然とガッツポーズが出ちゃった感じです(笑)。試合中からずっと皆の思いが届いていたから、自然にああいう反応が出ました。

 

防衛戦はプレッシャーが大きいと思いますが楽しみです。


 

――いわゆる「全国個人タイトル」を初めて手にしました。

 

小宮:素直に嬉しいです。でも、個人的に球聖戦は「全国」という感覚がそんなにないんです。開催地がずっと東京で、A級戦まで東日本の人達とたくさん戦って、西日本の選手と当たるのは挑戦者決定戦だけだったから、余計にそう感じるのかもしれません。例えば『マスターズ』とか『アマナイン』とかは、一箇所に全国各地から選手が集まって、色んな土地の人と対戦するので、わかりやすい全国タイトルだと思いますけど、球聖戦はそれとはまた違う印象です。

 

――今後別の「全国大会」での活躍も期待しています。

 

小宮:はい。できたらもっと全国タイトルを獲りたいので、もう少し試合に出る機会を増やしたいと思います。来月、初めて『アマローテ』に出ます。ローテーションの試合自体、初めてです(笑)。『名人戦』も出たことがないです。

 

――球聖戦で見付かった課題は何かありますか?

 

小宮:考えて撞くところと考えすぎちゃうところが、ちぐはぐになってたと思います。それで要所要所、下手なところがありました。頭の切り替えがもうちょっと上手くできてたら、もっと楽に取れるマスがあったんじゃないかと思います。

 

――考えすぎたところとは例えば?

 

小宮:今回のテーブルはポケットが渋かったんで、「クッションに触らずに入れないと」「真ん中から狙って」みたいなことを意識しすぎたせいで何回か外したり、苦しいポジションにしてしまってそれを挽回するために頑張らなくちゃいけなくなった時がありました。トッププロとか試合に勝てる人は、球の動かし方とかセレクションが他の人と同じだったとしても、シュートミスに繋がってしまうような雑念を排除できてるから結果が出るんだなと思います。大きい舞台ではそこの差が現れやすいんだろうと思います。

 

――わかりました。最後に応援してくれた人達へ一言。

 

小宮:2日間、長丁場の応援ありがとうございました。特に会場に来てくれた応援団に感謝しています。普段全然じっとしてられない人達がよく一日中応援してくれたなと(笑)。嬉しかったし、助かったし、つい漏れてしまった声に和んだし、本当にいい応援団だなって思いました。来年はホーム(千葉『ANYTHING』)で防衛戦をやるので、ぜひまた応援よろしくお願いします。たぶん自分のホームで防衛戦をやる時に初めて小笠原さんの気持ちがわかるんだと思います。絶対にプレッシャーは大きいと思いますけど、ホーム開催を楽しみにしています。

 

(了)

 

 

Shonosuke Komiya

1994年12月6日生まれ・東京都出身

所属店:『ANYTHING』(千葉)

プレー歴:約14年

職業:会社員

プレーキュー:『EXCEED』(シャフトは『Z-2』、タップは『エルクマスター』)

ブレイクキュー:MEZZ『Power Break』

ジャンプキュー:『J. FLOWERS』ジャンプ&ブレイクキューをジャンプ専用で使用

タイトル:『全関東』優勝、『9ボールクラシック』優勝。プロトーナメント『Grand Prix East』準優勝1回(2016年)、他、入賞多数

球聖戦出場歴:「おそらく今回が3度目」(これまでの最高戦績はA級戦ベスト16)

 

 

※「聞いてみた!」の他のインタビューはこちら

 

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