『ワールドゲームズ』で初めて
ビリヤードが競技種目に採用されたのは
2001年『第6回 日本・秋田大会』。
それから24年を経た
『第7回 中国・成都大会』で、
「キャロムスリークッション女子」が
初めて種目に加えられた
(※今回のビリヤード競技は全7種目)。
各国の強豪8名が参加した
そのキャロム3C女子で、
日本の宮下綾香が初代ファイナリストとなり、
銀メダルを獲得(金はオランダの
テレーズ・クロンペンハウアー)。
これまでワールドゲームズに出場した
日本のビリヤード選手たちの中で
最も上位の戦績を記録した。
メダルを日本に持ち帰って来た翌日、
宮下に大会を振り返ってもらった。
宮下は大会の余韻に浸ることもなく、
9月の『世界女子3C選手権』に向けて
気持ちを切り替え、練習を始めていた。
→ 大会結果記事はこちら
――銀メダルを獲って3日経ちました。今はどんな状況ですか?
宮下:まさに今現在のことを言えば、昨日帰国して、来月の『女子3C世界選手権』(スペイン。9月23日~)に向けて練習しています。今回の反省を踏まえてどういう内容、どういうメンタルが必要なのかを考えながらやっています。
――今回の銀メダルという結果については?
宮下:もちろん嬉しいのは嬉しいんですけど、ラッキーだったと思っています。そんなに当てていた訳ではなかったので、運良く決勝戦まで行けたなと。
――どんなところでラッキーを感じましたか?
宮下:そもそも今回のワールドゲームズにキャロム3C女子という種目が初めて採用されて、自分が日本代表として出られたことがまずラッキーでした。あと、予選グループリーグ(A組)で現世界チャンピオンのC・ソーレンセン(デンマーク)が2位になり、準決勝で私と当たらない組み合わせになったことも。そうやって色々な幸運が重なって獲れたメダルだと感じています。
――大会を通じて自分の力は発揮できたと思いますか?
宮下:いや、「もっとよく撞けていたらなぁ」と反省ばかりでした。それに初めての会場ということもあって、テーブルコンディションにはなかなか慣れなかったです。普段私はグローブは使わないんですけど、今回はすごく湿度が高くて全然キューが滑らない状態だったので途中からグローブを使いました。それも含めて「いつも(のキャロムビリヤードの大会)と違う」と感じることがありましたし、今後はそういった部分の対策もしていかないといけないなと思いました。
――大会前からメダルは意識していましたか?
宮下:もちろんです。何色でもいいからあの「パンダメダル」が欲しくて(笑)(※開催地の成都はパンダが有名。今大会のメダルはパンダの頭部を模した「耳付き」デザイン)。それを目標に練習してました。普段は店番(夫の宮下崇生プロと東京・調布『キューベスト』を営む)と子育てもあるので時間は限られてましたけど、その中で出来る限り一生懸命やってました。
――初の成都。現地での生活は?
宮下:何一つ問題なかったです。空港に着いた瞬間から大会スタッフが暖かく出迎えてくれましたし、宿舎や会場への移動や滞在もストレスはありませんでした。食事もバイキング形式で充実していました。何よりボランティアスタッフの皆さんがいつもニコニコ朗らかで優しかったので心穏やかに滞在できました。他の国の選手たちも落ち着いて過ごしているようでした。
――ワールドゲームズは総合競技大会です。今まで宮下プロが参戦してきたビリヤードの世界大会とは勝手が違っていたと思いますが、いかがでしたか?
宮下:たしかにビリヤードの大会とは運営や段取りなどが違っていたので、「あれっ」と戸惑う瞬間もありましたけど、スタッフの皆さんもビリヤードの試合に慣れてる方々ではないので、それはしょうがないという感じで受け止めていました。
――ひとつの会場にキャロム、ポケット、スヌーカー、ヘイボールという4部門のテーブルが勢揃いする光景もワールドゲームズだけ。
宮下:そうですね。でも、選手たちはやっぱり同じ種目同士の方が話しやすいのか、キャロムならキャロム選手同士でコミュニケーションを取ることが多かったと思います。私はペルー、コロンビア、ベトナムのキャロム選手たちと喋ることが多かったです。もっと言葉ができたら他の国・種目の人たちとも話せたのかなと。金メダルのT・クロンペンハウアーは同じオランダのK・イエッテンやデンマークのC・ソーレンセンといることが多かったですね。
――予選グループリーグ(B組)は2勝1敗で2位通過を決めました(4名中)。
宮下:「2勝1敗」は事前の目標通りではありました。クロンペンハウアーに勝つのはなかなか難しいのはわかっていたので、やはり「2勝」が現実的な目標でした。結果的にベスト4に進めましたけど、アベレージの低さ(3試合で0.523)は気になってましたね。特に2試合目のクロンペンハウアー戦は6-25(19 inn.)で負けたので大きく下げてしまって。予選通過のためには3試合目(vs K・イエッテン)で勝利と高いアベレージの両方が必要だなと。結局あの試合は私が後半もたついてしまい、相手に追い上げられました。なんとか逃げ切れたから良かったものの(25-23〈35inn.〉で勝利)、色々と反省点の多い試合でした。
――とはいえ、ベスト4進出が決定。ここで安堵の気持ちは?
宮下:いや、まだです。あと一つ勝たないとメダルは決まらないので、準決勝(vs ジャクリーン・ペレス)はすごくドキドキしました。
――準決勝は12-12まで競り、終盤に宮下プロが抜け出しました(25-17〈32 inn.〉で勝利)。
宮下:あ、そうだったんですね。スコアはほとんど覚えてなくて(苦笑)。準決勝は、終盤もたついてしまったイエッテン戦(グループリーグ3試合目)みたいにならないように意識してました。それが良かったのかもしれません。
――準決勝のワンモアは裏回し。当たった瞬間にメダルが確定しましたが、どんな心境でしたか?
宮下:もちろん勝つつもりでやってたんですけど、当たった時は「メダルが決まった!」と信じられないぐらい嬉しい気持ちになりました。「これでメダルを日本に持って帰れるぞ」という安心感も生まれてきました。
――決勝戦(vs クロンペンハウアー)は?
宮下:彼女が強いのは十分にわかっていること。でも、勝てると思ってなかった訳じゃありません。少なくとも1回目の対戦(グループリーグ2試合目)の時のような状態にならないようにしたいと思ってました。
――それは?
宮下:クロンペンハウアーは決断するのも撞くのも結構早くて、さくさくプレーします。振り返ってみるとそのペースにつられて焦って撞いてしまった場面がちょこちょこあったと思います。だから、決勝戦は彼女のペースに飲み込まれないように、自分のペースを保ちながらプレーしなくちゃと思ってました。でも……自分のビリヤードができたかというとあんまりだったかなと思います。いい配置をぽこぽこ外してましたし。
――敗れた瞬間、まず悔しさがあった?
宮下:そうですね。強敵なのはわかってるけど、もうちょっと自分のビリヤードで戦いたかったなという後悔がすごくあります。
――ですが、ワールドゲームズ銀メダルは日本ビリヤード選手史上一番の戦績です。
宮下:あ、そうなんですか。以前ポケットで大井直幸選手(2017年ポーランド・ヴロツワフ。9ボール銅メダル)と平口結貴選手(2022年アメリカ・バーミングハム。9ボール銅メダル)がワールドゲームズでメダルを獲ったことは知っていましたけど、種目が違いますし、自分が一番とかは全く意識してないです。
――ワールドゲームズは次回2029年にドイツ・カールスルーエで開催。そこでもキャロム3C女子が採用されたら、また出たいと思いますか?
宮下:もちろん出たいです! 今回キャロム3C女子がワールドゲームズ競技種目に初めて選ばれたことはビリヤード界にとってすごく大きな一歩だったと思ってますし、参加できてとても光栄でした。次回もあるならぜひ出たいです。選手選考については何もわかりませんが、ワールドゲームズに出るチャンスを掴むためにも、国内・国外の大会で良い結果を出し続けることが大事だと思っています。
――次は来月の『世界女子3C選手権』です。どんなテーマを持って臨みますか?
宮下:「勇気」です。私はいつも撞くのがすごく怖いんです。ストローク、撞点、スピードをきっちり思った通りに撞ければまあまあいいんですけど、勇気がなくてキューを置きに行ってしまい、外してしまうことがあります。勇気のなさが全部球に現れてしまう。だから、自分の決めたことをきっちりやりきる勇気を持って戦いたいと思います。
――わかりました。最後に応援してくれた方々へ一言。
宮下:約10年ビリヤードをお休みして、2023年に復帰してからの2年で『全日本選手権』『世界選手権』『アジア選手権』『ワールドゲームズ』と大きな大会に出場することができたのは順調すぎる気もしますし、全日本選手権で優勝、アジア選手権とワールドゲームズで銀メダルを獲得できたのは不思議な感じもします。でも、いつも皆さんが応援してくださるので、それが力になっているんだと思います。あまり上手くお伝えできなくて申し訳ないですけど、本当に皆さんには感謝しています。
また、今回監督として同行してくださった高山さん(On the hill !)には常にサポートしていただきました。高山さんがいなかったら私はちゃんと試合でプレーできていたかどうかすらわかりません(笑)。本当にありがとうございました。
来月の『世界女子3C選手権』をはじめ、他の大会でもいい結果が出せるようにこれからも頑張ります。またワールドゲームズに参戦できたら、金色はなかなか遠いですけど、もう一度メダルを獲りたいと思いますので、これからも応援よろしくお願いいたします。
(了)
以下は、宮下プロご本人提供の大会オフショット↓
Ayaka Miyashita
東京都出身
2011年JPBF入会
2006年&2007年『レディースオープン』優勝
2008年&2011年『アダム エメラルドカップ』優勝
2012年『世界女子3C選手権』(東京開催)3位
2024年『全日本女子3C選手権』優勝
2025年『アジア選手権 女子3C』銀メダル
2025年『ワールドゲームズ 成都』キャロム3C女子 銀メダル
所属店:東京都調布市『キューベスト』
使用キュー:ADAM JAPAN MUSASHI(シャフトはHAMA、タップはキングダイアモンド〈韓国〉)
金額は空白欄に適当に(15円から)書きこんで下さい(あらかじめ入っている金額はAmazonの設定なので気になさらないでください)。受取人は 「 billiardsdays@gmail.com 」です。よろしくお願いいたします。
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