私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
探偵業そっちのけで、
他の仕事に忙殺されていた。
オレが主戦場とする2026年4月開催の
『スーパービリヤードエキスポ』
(SBE。アメリカ・ペンシルバニア州)
行きをパスしなければならなかったほど
追い詰められていた。
詳しくは説明しないが、まぁ生きるだけで
精一杯だったと思ってくれ。
ピコン!
ん、BDからのメッセージだ。
久々に開いてみるか……。
『K、ご無沙汰しています。生きていますか?』
ベタな質問だな。
キュー探偵稼業はともかく、生きてはいる。
『2025年9月の超高級キュー展示・販売イベント、
(ICCS)のレポート以来、
8ヶ月が経ってしまいましたね。』
ふっ(遠い目)。
長い、いつもより長いバカンスを
取っていただけだ。
『キュー探偵“K”としてBDの連載開始が2016年。
よって今年で10年になります。』
そんなに月日が過ぎていたか(苦笑)。
『しかもこれまでのシーズン1から9までの
エピソードは合計99回。
今回がちょうど100回目となります。』
100回目か……! 遠くへ来たものだ。
『そこで、キュー探偵10年間の
振り返りをお願いします。
キューの歴史上、とても大きな変化が
あった時期ではないでしょうか?
キュー探偵Kとしての調査をまとめ、
100回記念としたいのです。』
100回、14-1やスヌーカーなら
センチュリーブレイクだな。
わかった、オレはキュー探偵K、
その仕事、引き受けた!
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Detective Kとは? 過去記事は?
→こちら
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1枚目:2016年「第1回」のキービジュアル
2:2016年デビューのPREDATOR REVOシャフトはキュー史の新章を象徴する製品
キュー探偵”K”~Cue Detective “K”の
開始は2016年8月。
season 1 episode 00(1)「"K"、登場」
2016年は、プレデター社の
プレーキュー用カーボンシャフト
『REVO』が市販開始された年。
まだシャフトは「ノーマル」か
「ハイテク」という、木製であることを
前提とした分類だった時代だ。
「カーボンシャフト登場」という、
キュー製作史における明らかな
分断点として記憶される年に始まったのだ。
キュー探偵”K”は、
玉を撞く道具に過ぎない「キュー」、
プレーヤーやコレクターがこだわるポイントは
何なのか?を調査し、様々な切り口から
レポートするコンセプトだ。
毎回面倒な依頼(笑)をBDから受け続けたのは、
オレ自身「キューが好き」だからだ。
ま、今ならAIに質問すれば、
オレを上回る答えが得られるかもしれんな。
オレとAIの違いは、
「キューが好き」な感情の有無、
そしてリアルに玉を撞くか否か。
AIはプレーヤーやキューコレクターにはならない。
「良いキュー」の基準や考えは人それぞれ。
主役は生身の人間。
オレは、それを整理し、補強するために
キュー探偵業を続けてきたのだ。
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1枚目:TAD Cues
2:デニス・ディックマン
3:Joss West
4:ビル・ストラウド(Joss West)
5:アーニー・ギュテレス(Gina)
6:ダン・ジェーンズ(Joss)
キュー探偵”K”は、
1960年代アメリカで生み出された
「カスタムキュー」、大雑把に定義すれば、
少量生産メーカーが製作したキューを
主な調査対象としてきた。
大手メーカーの量産品、いわゆる
「プロダクションキュー」と一線を画し、
各メーカー独自の工夫を施し、
特別に製作された「カスタムキュー」は、
プレーヤーが自らのウデを表現する
特別な道具であり、ビリヤードを「道」と
捉え極める大切な「相棒」。
アメリカでは、ロードプレーヤー、
いわゆる「ハスラー」として活動するうち、
「プロダクションキュー」に不満を感じ、
自らキューを製作するようになった
キューメーカー、あるいは、
プレーヤーからキューのリペアや
メンテナンスを請け負うことで経験を積み、
自らキューを製作するようになった
キューメーカーも多い。
その生い立ちや製作哲学が、
キューに反映されているのが魅力だ。
season 1 episode 05(7)「カスタムキューメーカー、いい人伝説」
season 2 episode 02(13)「短命、寡作。しかし超人気のメーカーを探せ」
season 3 episode 05(31)「追悼 デニス・ディックマン」
season 5 episode 06(48)「追悼 ビル・ストラウド」
season 5 episode 09(51)「撞いたら上手いメーカー、撞けないけど高評価なメーカー」
season 7 episode 13(79)「追悼 ダン・ジェーンズ」
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1枚目:メイプルのキューの数々
2:ローズウッドのキューの数々
3:2010年『ICCS』の「マリタイム・コレクション」。左端はEXCEEDの『航海』
4:バールウッドを用いたキューの数々
5:装飾されたカラーのAEキュー
6:様々なキュー尻
もう一つの魅力は、キューは多種多様な
木材から作られる「木工品」であること。
木目や杢(もく)と呼ばれる模様や色合いは
一本ごとに異なり、「ハギ」や「リング」など、
木材同士を接合するための構造は
キューデザインの一部。
さらに貝や石などをはめこむ
「インレイ」技法による装飾が、キューを
美術工芸品と呼ぶべき水準まで高めてきた。
season
1 episode 08(11)「キューに使われる人気の銘木、メイプルって?」
season 4 episode 05(38)「ローズウッドの憂鬱」
season 6 episode 08(61)「色っぽいキューの話【Part 2】~バット多色時代編~」
season
4 episode 08(42)「キューのインレイ学~21世紀編~」
また、シャフトとバットを接合する
「ジョイント」や、
リネン糸・革などが巻かれる「グリップ」、
バット後端部を保護する「バットエンドキャップ」、
「ラバーバンパー」など、
キュー各部位に関するトリビアを調査してきた。
さらに探偵”K”は、キュー好きの性癖
……いや違った、嗜好とこだわりに応えてきた。
season 5 episode 02(44)「カラーに口紅? ジョイントカラー論」
season 6 episode 11(64)「キューのグリップ学 ~糸巻き・革巻き・ノーラップ~」
season 7 episode 05(71)「キュー尻フェチの妄想~バットエンド&ラバー~前編」
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1枚目:1996年のスーパービリヤードエキスポで見つけた「プラスチック素材バット」のOliver Stops Originalのキュー
2:2017年デビューのPREDATOR BK RUSH。スポーツギア然としたデザイン
一方、プラスチック素材バットのキューは、
1990年代からすでに存在していた。
『Oliver Stops Original』という
ドイツのメーカーが製作し、
日本にも輸入されていた。
ただ、時代を先取りしすぎていて、
ごく短期間で姿を消した。
2020年代になるとシャフトだけでなく、
バットにもカーボン繊維を用いた
オールカーボンキューや、
人工素材を木目調デザインで
ラッピングしたキューも登場した。
今や「キューは木工品」という考えに固執せず、
「スポーツ用品」としての特性を
重視する時代となったのだ。
もちろん希少な木材を用いたり、
微細かつ複雑なデザインを施したりした
キューが絶えたわけではない。
「カスタム」「プロダクション」とも、
より凝ったデザインのキューが増え、
同時に価格を押し上げてきた。
美術工芸品としてのキューは、
10年後、コレクター市場や中古市場で
新品より高値で取引されるか、
こなれた値段で流通しているか、
どちらだろうか?
おそらく、どれだけの文化的・地域的な
特徴を備えたキューなのかが
判断基準になるとオレは思う。
アメリカや中国、日本など、
それぞれの国で製作されたキューが自国で、
あるいは他国でどう評価されるのかがカギだ。
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1枚目:2025年スーパービリヤードエキスポのアマトーナメントエリア
2:2016年TOC Nippon
3:2017年FMCC
キュー探偵”K”は、情報収集や調査のため、
国内外のイベントに足を運んできた。
特にアメリカのペンシルバニア州で
毎年4月に開催される
『スーパービリヤードエキスポ』(SBE)は、
1994年の初回から、定点観測という
意味合いもありほぼ毎年顔を出してきた。
season 9 episode 2(93)「スーパービリヤードエキスポ2025 現地速報~コレがオレの生きる道~」
しかし、コロナウィルス禍や
個人的な事情により、数年欠席しているうちに
ビリヤードを取り巻く情勢は大きく変化した。
この10年を端的に言えば、
中国やベトナム、インドネシアなどの
アジア市場が急成長する一方で、
アメリカ製品はインフレによる大幅な価格上昇、
日本は円安やデフレにより、
ビリヤード製品を買い負けるようになったことだ。
国内メーカーが製作するキューやタップですら、
国内よりも海外への輸出が増え、
日本国内では手に入りづらくなってしまった。
season 8 episode 11(91)「キューの価格~外国為替円高円安編」
かつてスーパービリヤードエキスポで、
金で買えるものは全て買い取った
日本の勢いはない。
中国やベトナムは、ビリヤード用品の
消費地であると同時に生産地でもある。
海外での競争に力を注いでいる
国内メーカーにとって、
相対的に日本の市場は縮小している。
この状況を打開するため、
キュー探偵”K”としての提言は、
国内に眠る「カスタムキュー」の取引活性化だ。
国内には、半世紀以上に渡り製作、
輸入された名品が数多く残されている。
グリップを交換し、タップやシャフトを換え、
エクステンションを装着できるよう
改造すれば使える。
新品が手に入らない状況からすれば、
中古やヴィンテージを入手して
「カスタマイズ」するのはアリだ。
キュー好きが集まる国内イベントは
しばらく絶えているが、今後に期待だ。
season 1 inside story(5)名キューが東京に大集合! 「TOC Nipponに潜入せよ!」
season 1 inside story 2(9)「秘密指令! FMCCを探れ!」
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1枚目:装飾がバット全体に施された高級キューの数々
2:ZEN Cue
3:リチャードブラックのケース付きキュー
キュー探偵”K”は、素材、構造、デザイン、
そして撞いた際の特性を「個性」と捉えるのが
キューとの付き合い方、と常に思っている。
理想の一本に出会うまで何本でも試すのも良いし
(その結果コレクターになる)、
身体に馴染むまで撞き込むのも良い。
道具として使える美術工芸品、
英語では「Functional Art」と
呼ばれる存在であり、
一本ごとに異なる個性を持つからこそ、
惹き付けられるのだ。
そして、材料が
天然素材であろうと人工素材であろうと、
キューが無ければ玉は撞けない。
プレーヤーに、「他より優れたキュー」
「自分だけのキュー」が
欲しいという欲求があるうちは、
キュー探偵”K”の調査は続くだろう。
ま、カーボンシャフト付きのハウスキューが
登場したら、その時は引退だ(苦笑)。
時代の流れには逆らえないからな。
season 5 episode 03(45)「キラキラキューを探せ!」
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というわけで10年間を総括してみた。
新しいシーズンに期待してくれ、BD!
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Detective Kとは? 過去記事は?
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BD Official Partners :
世界に誇るMade in Japanのキューブランド。MEZZ / EXCEED
国内外著名ブランドのビリヤード用品販売中。Billiard Square
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HOW(ハオ)、Unlimited、Owlなど取り扱い中。SHOP FLANNEL
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抜群の撞き心地と性能。カスタムオーダーキュー&シャフト。Geez Tech
首都圏中心に洗練されたビリヤード&ダーツ店舗を展開。 BAGUS
最終第9巻発売中! ビリヤード漫画『ミドリノバショ』





























































