〈BD〉「どれだけ自分の限界を越えて行けるか」――世界のトップオブトップへ。大井直幸インタビュー

大井直幸 Naoyuki Oi © PBS 2026
大井直幸 Naoyuki Oi © PBS 2026

 

日本のエースプレイヤー、大井直幸。

年初から続いた海外遠征に

一旦区切りをつけて東京に戻り、

現在は5月のイギリス遠征に備えています。

 

2月『カラバオインターナショナルオープン

(インドネシア)優勝時以来となる

インタビューです。

この約2ヶ月を振り返ってもらいました。

 

なお、大井プロのここからの予定ですが、

・5月『UKオープン』(WNT.メジャー。9ボール。イギリス。26日~)

・6月『PBS ザンクトヨハンイムポンガウ』(10ボール男子オープン&ミックスダブルス。オーストリア。16日~)

への出場は確定。

 

その前後に別大会

(WNT.系スコティッシュオープンや

ユニバーサルオープンなど)に

出る可能性もあるとのこと。

 

7月は日本で過ごし、

8月はアメリカ国内を転戦する予定です

(WNT.メジャー×3〈フロリダオープン、アリゾナオープン、USオープン〉他)。

 

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――2月『カラバオインターナショナルオープン』(インドネシア。結果記事談話記事)で優勝した後、乗り継ぎの都合でやむを得ず一瞬日本に立ち寄りましたが、すぐアメリカ国内(『PBSラスベガスオープン』『8ボール世界選手権』他)とボスニアヘルツェゴビナ(WNT.『ヨーロピアンオープン』)の6大会を巡る遠征に向かいました。そして、4月中旬に帰国。約2ヶ月の遠征でした。

 

大井:もう全然記憶がないよね(笑)。でも、最初は大変だったことは覚えてます。今まで何度も海外に行ってるけど、こんなに行きっぱなしというのはなかったから、言葉や文化の違いにストレスを感じる時もあって慣れるまでに少し時間がかかりました。でも、アメリカに2箇所、ホストファミリーというか友人宅というか、安心して滞在できる拠点があったので精神的には結構楽でした。そこで海外生活と英語生活に馴染む時間も取れたし、かなり助かりましたね。

 

――『カラバオ』で優勝してすぐの遠征だったので、各地で注目されていたと思います。そして、大井プロ自身も良いメンタリティで試合に臨めていたのでは?

 

大井:オーディエンスやプールファンからの注目度はより高くなっている感じはありました。僕自身はどうだろう……ちょっとは自信が付いていたかな。全体的に悪くない感触でプレー出来ていたと思います。まあ、それで勝てるほど簡単じゃないんですけど。

 

――BD調べでは大井プロは今年1月から4月までに9つの大会に出場して、57戦46勝11敗(勝率約80.7%)という戦績です(※個人戦のみ)。

 

大井:うん、全然わかんない(笑)。でも、「11敗してたのか」とは思いますね。「ジョシュア(・フィラー)だったら同じ試合数で6敗ぐらいなんだろうな」とか。それに、僕の「57戦」も悪くはないと思いますけど、同じ期間により多くの試合数、60~70戦やっているプレイヤーもいるだろうなって。やっぱり大会数・試合数は大きいですよ。海外で試合経験を積めば積むほど強くなれるチャンスがあるから。

 

――現時点で大井プロはWPAランキング7位/WNT. ランキング15位/FargoRate 18位(829)という位置にいます。

 

大井:WPAとWNT.、どちらの大会も厳しいフィールドなのは間違いないし、自分としては常に「これ以上は無理かな」みたいな感覚でいるけど、それでも今のところ上位を維持できてるのは悪くないと思います。そして、ランキングは1回の大会結果で大きく上下することがあるけど、FargoRate(ファーゴレート)は相関関係のレーティングだから、そこまで一気に動かない。なので、FargoRateの方が選手の位置付けをより正確に表している気がします。結構納得できる数値になってるから面白いですよね。課金できる訳じゃないけど、ゲームっぽい感覚もあるし。

 

――3月のWNT.系『インザボックスオープン』(Inthebx Open。ニューヨーク)は準優勝でした。3度目のWNT.ランキングイベント優勝の期待がかかりましたが、決勝戦でL・フラカッソバーナー(アメリカ)に敗れました。

 

大井:決勝戦は最後までテーブルコンディションに合わせられなかったですね。ベスト8と決勝戦の2度あのテーブルで撞いたけど、何をどうやっても全然合う感じがしなかった。後から考えても合わない理屈が結局よくわからなかった。それは不思議だったけど、すごく緊張してた訳ではないし、僕としてはテーブルに合わないなりにやれることはやったかなと思います。

 

2月『PBS ラスベガスラウンド ミックスダブルスターボ』。魏子茜とペアを組み準優勝
2月『PBS ラスベガスラウンド ミックスダブルスターボ』。魏子茜とペアを組み準優勝

 

――2月【PBSラスベガスラウンド】の『ミックスダブルスターボ』では、台湾トップクラスの魏子茜(ウェイツーチェン)と組んで準優勝でした。ダブルス戦で決勝戦を撞くのは初めてだったでしょうか?

 

大井:たしかに初めてでしたね。決勝戦は相手(フィラー夫妻)が強くて、悔しいけどどうにもならなかった。僕らは初結成のペアでしたけど、お互いにリスペクトがあり、普通に撞けていたと思います。

 

――互いに任せるところは任せて?

 

大井:そう。お互い自立してる感じで。僕の中で「そのチョイスは違うな」と思っても彼女がそれを選ぶならそれでいい。自分に合う合わないは気にせず、互いの判断を尊重しながら普通に撞いてました。でも、今回初めて魏子茜と一緒に撞きましたけど、彼女があんなに上手いとは思ってなかった。おかげで想定していたよりはるかに上のレベルで撞けていたと思います。

 

――最近PBSを含めダブルスやチームのイベントが増えていて、大井プロもたびたび出ていますが、ダブルスやチーム戦は好きですか?

 

大井:出る時は楽しんでやってますけど、向いてるか向いてないかで言えば、もともと僕は向いてないと思います。ビリヤードは基本個人戦で、どこまで行っても個人主義でしょう。僕にはそれが向いてます。なので、ダブルスやチーム戦に出る時も、個々で自立して撞くスタイルの方が僕には合っている気がします。

 

――協調性や和を重んじて結果を出してる国やペアもありますね。

 

大井:そうですね。僕も協調して撞くのが苦手というほどではないんですけど、個々のカルチャーが入ってくると難しさは感じます。それでもダブルス戦は出たら出たで楽しいし、個人戦以上に優勝のチャンスがあると思うし、いい感じで撞けたら個人戦の自信にも繋がるから、自分なりにどうパートナーと合わせて行くのが良いのかを考えながらやってます。6月のオーストリア(PBS ザンクトヨハンイムポンガウラウンド)のミックスダブルスには河原千尋プロと出る予定です。河原プロと組むのは初めてなんですごく楽しみです。

 

――今後の海外戦が楽しみな反面、中東情勢は緊張が続いていて、大会開催や選手の渡航に不安があります。

 

大井:アメリカ遠征は旅費が高いとは言え、まだ飛行機が飛んでるからいいけど、日本からヨーロッパに行く時が微妙ですね。いつもだいたいドバイとか中東諸国で乗り継ぐから、今後どうなるか不安です。航空券の価格も上がる一方だし。あと、各国の選手達と話をしてますけど、今年はたぶん中東開催のビッグゲーム、例えば、『9ボール世界選手権』(サウジアラビア。初夏)や『WPA カタールワールドカップ』(秋)は開催されないだろうね、と。9ボール世界選手権は優勝賞金25万ドル(約4,000万円)だし、すごく良い大会だから、開催されないのはすごく残念だけど……。

 

――どうしようもないことですね。それでも大井プロの海外大会中心の競技活動スタイルは変わらない。

 

大井:そうですね。海外のデカい大会で優勝するというのがずっと目標だし、どれだけ自分の限界を越えて行けるのかを楽しんでます。前から言ってますけど、今の活動スタイルやポジションは長くは続かないから、一生懸命やれる時にやるだけです。自分のやり方には後悔はありません。……ただ、最近ますます「自分のことだけでいいのかな」とも思ってます。

 

――それは?

 

大井:日本のビリヤードが世界からおいていかれてる感がすごくあって、このままずっと離されっぱなしになるのは嫌だなと。自分一人でどうこうできる問題じゃないけど、何か自分に出来ることがあるんじゃないかなと最近よく考えてます。例えば、ジュニア世代の育成と活性化に繋がることとか。

 

――近年海外のビッグイベントでは一般の部と一緒にジュニアの部も開催することが多いですね。

 

大井:そう、たくさんやってます。現地で見てると海外のジュニアプレイヤー達は皆楽しそうなんです。ドイツのF・フォーゲル(現ジュニア10ボール世界チャンピオンであり、一般世代の大会でも上位に進む次世代スター候補)なんかもそう。彼、本当に幸せそうに撞いてるんですよ。僕自身小さい頃からビリヤードをやってきて、今でも「やってて良かった」と思ってるんですけど、そういう選手が日本からもっとたくさん生まれてほしいなと思います。大きな言い方ですけど、それが日本ビリヤードの復興に繋がるんじゃないかなと。……そんなことを考えながら5月後半からまた遠征に行ってきます。応援よろしくお願いします。

 

(了)

 

▶ 大井直幸インタビュー:

2026年2月(カラバオインターナショナルオープン優勝時)

2025年12月(2025年振り返り・2026年展望)

 

Naoyuki Oi

JPBA40期生/1983年1月10日生/東京都出身

JPBA年間ランキング1位・6回(2006年、2012年、2014年、2015年、2017年、2018年)

2007年『ワールドカップオブプール』3位

2012年『9ボール世界選手権』3位

2014年『全日本選手権』準優勝

2015年『ワールドカップオブプール』3位

2017年&2018年『ジャパンオープン』準優勝

2017年『ワールドゲームズ・ヴロツワフ大会』銅メダル

2017年『USオープン9ボール』5-6位

2018年『CBSAツアー 中国・密雲戦』優勝

2019年『ジャパンオープン』優勝

2021年『チャンピオンシップリーグプール』5位

2021年&2024年『10ボール世界選手権』準優勝

2021年『USオープン』3位

2023年『プレミアリーグプール』3位

2024年『ヘルシンキオープン』優勝

2025年『ヨーロピアンオープン』準優勝

2025年『カタールワールドカップ10ボール』3位

2026年『カラバオインターナショナルオープン』優勝

他、優勝・入賞多数(2024年11月現在国内44勝。こちらへ)

使用グローブはOWL

使用プレーキューはHOW(ハオ) 

使用ブレイクキュー、ジャンプキューはUnlimited(アンリミテッド)

使用タップは斬(ZAN)

所属:Shop FLANNEL、Flannel Pool Studio

スポンサー:Owl products、Session、catalyst、Andy Cloth、ココカラダ、姫路ミルキーウェイ、アルシオ、競輪ニュース AOKEI

 

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