20日(日)、愛知で行われた
『東海レディースグランプリ』で
プロ入り初優勝を飾った
奥田玲生(おくだ たまみ)の
談話をお届けします。
大会2日後に話を聞きました。
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――優勝から2日経ちました。今の心境を。
奥田:まだ興奮状態です(笑)。今まで3回優勝に届かなくてそれを思い出すこともあったので、今は優勝できてホッとしている気持ちが一番大きいです。
――お祝いのメッセージもたくさん届いたのでは。
奥田:はい、とても嬉しいです。少しずつ上位進出のアベレージは高くなってきてますけど、やっぱり周りからは「優勝してね」と言われることが多かったので、「早くしなきゃ」と焦る気持ちもありました。今回ようやく期待に応えられて嬉しいです。
――2日間よく撞けましたか?
奥田:う~ん、あんまりでした。相手に先行されたり競り合う展開も多くて、「すごく良かった」と言えるほどではなかったです。今年は中国のヘイボール(チャイニーズ8ボール)の大会に3回行かせていただいて、この『東海グランプリ』の前にも行って来たばかりだったんですが、テーブルの高さ、クッションの出方、ゲーム性の違いなどに対応しきれてはいなかったなと思います。
――それでも優勝できたのは?
奥田:ヘイボールに備えて改めて基礎を意識しながら練習していたことと、向こうで連日長い試合をしていたおかげで体力が付いたのかもしれません。
――そもそも中国式テーブルは難しいですし、そこで8ボールをやるのはタフだと思うので心身が鍛えられそうです。
奥田:はい、もともと8ボールに慣れてないので考えることも多いし、ポケットは狭いし、緊張もしたし……1日3試合を3日間連続でやっていたらあまりに疲れすぎて「もうこんなにたくさん試合をすることは人生でないだろうな」って思うぐらい体力的にはキツかったんですけど(苦笑)、TVテーブルでも撞かせてもらえましたし、すごく良い経験ができました。おかげで体力が付いたのか、いつもだったら日本の試合では土曜日(予選)が終わった時点で「疲れたー」って思うんですけど、今回は2日間一度も「疲れた」という言葉が頭に浮かばなかったです。
――決勝戦(vs 府川真理)は奥田プロがリードしたまま進んでいましたが、相手も追い掛けてきていました。どんな精神状態でしたか?
奥田:決勝戦は時々スコアや展開を意識する時もありましたけど、基本的にひとつひとつの球に集中してしっかり取ることで頭がいっぱいでした。目の前の球と自分の精神状態しか見えてなかったです。
――6-3で迎えた第10ラック。奥田プロは8番カットをミスして一回上がりそこねました。
奥田:あの時は「ここで決めに行こう」という気持ちが出すぎてました。入れ繋いで行って勝負をかけた8番が全然違うところに飛んでしまって(苦笑)。勝ち急いでいたと思いますし、セーフティも使いながらもっと冷静に戦わないといけなかったなと今は思います。でも、あの8番ミスを引きずることはなかったです。
――相手に1点差(6-5)に迫られた時、緊張感は?
奥田:すごく緊張してました。過去に優勝を逃した時の感覚も顔を出して来て、「ああ、またこのパターンか」「またミスしちゃうんじゃないの?」みたいな。そんな時に「まだ自分が1点リードしている」と思うと、「早く楽になりたい」という気持ちが襲って来るような気がしたので、「もうここがヒルヒル(6-6)だ」と思って目の前の球を取ることだけに集中しようとしてました。
――最後の1番からの取り切りは思った通りに撞けましたか?
奥田:あのダイヤモンドテーブルのクッションの出方もイメージできていて、ほとんど思った通りに撞けてたんですけど、6番→8番は手球が少し転がりすぎました。8番が思ったより薄くなってしまい、8番から9番へは2クッションで出さないといけなくなって。手球の加減を意識すると8番を外してしまいそうですごく緊張しました。あそこは8番により厚く手球を出して8番→9番を1クッションで出したかった。それなら8番も9番ももっと落ち着いて撞けていたと思います。
――結果的に8番→9番はきれいに2クッションでポジションできました。あの時優勝を確信したのでしょうか?
奥田:いや、半分ぐらいです。8番は「上手く撞けた」と思いましたし、結果的に手球はクッションから少し浮いてくれたので良かったですけど、仮に手球が土手撞きになっていたら9番はだいぶ緊張したと思います。
――ゲームボールを入れた直後に一瞬座り込みました。あの時はどんな感情が?
奥田:「やっと優勝できた!」という気持ちが一気に込み上げてきました。直近で決勝戦を撞いた『関東オープン』(4月)は、優勝に手が届きそうなところまで行ったのに自分の出しミスで逃してしまうという経験をして(※河原千尋に6-7で敗戦)、「まだまだ優勝は遠いのか……」と思いました。なので今回は「本当に自分が優勝できたんだ!」と。
――奥田プロはコロナ禍の2020年にプロ入り。2020年~2021年は女子のランキング対象大会は開催されず、2022年が実質的な競技活動デビューでした。今までに準優勝が3回あり、ランキングも着実に上がって来ていますが(2024年4位)、「優勝」の二文字は意識していましたか?
奥田:去年ぐらいから意識しまくりでした(笑)。初めて決勝戦を撞いた頃(2023年3月『全日本女子プロツアー第1戦』)はまだプロの世界で結果を出せるかどうかとかをほとんど意識してなかったので、「決勝戦に残れちゃった」みたいな感覚でしたけど、そこから表彰台に上がる機会も増えてきて、昨年の『全日本選手権』で3位(日本勢最高位)になれたこともあり、「2025年は絶対優勝したい!」と強く思うようになりました。
――その思いの強さは逆にプレッシャーになりませんでしたか?
奥田:気付かないうちになってたと思います(苦笑)。上位のプロ達は何度も優勝している人達ばかりなのに、私は未勝利。アベレージの高さは大事ですし、プロ同士ならその価値もわかりますけど、やっぱりそこ(初優勝)を超えているのと超えてないのでは差が大きいと思うので、早くそこを超えた上で第一歩を踏み出せるようになりたいと願ってました。葛藤している日々が長かったと思いますし、決勝戦を特別なものに捉えすぎて恐怖症になりかけてました。だから、今回優勝できて本当に良かったです。
――初タイトルを手にした今、これからの目標は?
奥田:『ジャパンオープン』(9月)と『全日本選手権』(11月)というビッグイベントがこれからあるので、そこで良い戦績を残したいです。特にジャパンオープンはまだ最終日(ベスト8~)を撞いたことがないので、特設会場で撞きたいです。海外も、またヘイボールの試合に行けるなら中国に行きたいですし、他の大会も機会があれば行きたいです。
――これからもっと高めていきたいところとは?
奥田:ヘイボールに出るようになったおかげで、基礎と自分のプレースタイルが良い形で磨かれてきているのを感じているので、引き続きそこに取り組んでいきたいです。私はもともと基礎やフォームの一つ一つにこだわって練習を重ねてきました。さらにそこを突き詰めていって、周りから見て「あの人は球が外れそうにないよね」って思わせられるぐらいまで高めていきたいです。
――最後に、応援してくれている人達へ一言。
奥田:名古屋の地でプロ初優勝を飾ることができてすごく嬉しいです。東海グランプリの開催と運営に尽力されていた皆様に感謝しています。そしてまず、いつも応援してくれている両親に感謝したいです。今回両親は会場に見に来られなかったので、終わってすぐ電話をしたんですけど、泣いて喜んでくれていたので私もつられて泣いてしまって(笑)。今までずっとサポートしてくれていたので、少し恩返しというか親孝行ができたのかなと思っています。そして、いつもお店(アストロ鶴ヶ峰店、Link相模原店)で応援してくれている方々や、サポートしてくださっているスポンサー様方にも感謝しています。準優勝が続いてもどかしい思いをさせてしまっていたと思うのですが、ようやく胸を張って良い報告ができてホッとしています。今回の優勝に奢らず、もっともっと自分を磨いて行き、2回3回と勝ち続けられる選手になっていけるように努力します。今後も応援していただけたら嬉しいです。
(了)
奥田玲生 Tamami Okuda
2002年3月18日生
神奈川県出身・在住
JPBA54期生(2020年プロ入り)
主な戦績:
◇ ジュニア&アマ
2016年『全関東選手権』(女子級)優勝
2017年『全日本ジュニア9ボール』優勝(他、準優勝2回)
2019年『9ボールアジア選手権』ジュニア女子ダブルス優勝
2019年『9ボールアジア選手権』ジュニア女子シングルス3位(2018年も3位)
2019年『都道府県選手権』(鹿児島国体記念大会)女子級優勝
2019年『世界ジュニア』女子の部銀メダル ※日本代表4回
◇ プロ
2023年『全日本女子プロツアー第1戦』準優勝
2024年『全日本女子プロツアー第3戦』準優勝
2024年『全日本選手権』3位
2025年『関東レディースオープン』準優勝
2025年『東海レディースグランプリ』優勝
プレーキュー:KeithAndy(シャフトはトリニティカーボンS/タップはNISHIKIブラウンM)
ブレイク:BlackJack
ジャンプ:BlackJack
ケース:3seconds
グローブ:NISHIKIグローブ ネイビーMサイズ
所属ビリヤード場:『アストロ 鶴ヶ峰店』、『Link相模原店』(ともに神奈川県)
スポンサー:anything、Japan CSI Pool League、アマリファミリーサロン、KeithAndy、NISHIKI BRAND、リネアカンパニー、3seconds
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◇ 2025 JPBA女子プロ公式戦
1月『関西オープン』 ソソア(韓国)/河原千尋
3月『全日本女子プロツアー第1戦 in 千葉 BEEP』 河原千尋/平口結貴
5月『全日本女子プロツアー第2戦 in 横浜POOL LABO』 平口結貴/栗林美幸
今回→ 7月『東海レディース』 奥田玲生/府川真理
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