〈BD〉「SBE 2024レポートその3【キュー調査報告編】」――Detective “K” season 8 episode 08

 

~4/30公開の【その2】より続く~

 

私の名はDetective K。

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

2024年4月11日から14日。

 

アメリカのペンシルバニア州オークスに

ある会場、『グレーター・フィラデルフィア・

エキスポ・センター』にて開催された、

 

年1回の『スーパービリヤードエキスポ』

(SBE)レポート。

 

今回は第3弾。

オレの本業であるキューの調査報告。

ブツに寄せたレポートだ。

 

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キューディーラーJersey Custom Cuesには「欲しくなる」逸品がずらり
キューディーラーJersey Custom Cuesには「欲しくなる」逸品がずらり

 

SBEで販売されているキューは、

コレクターであろうとキューディーラーで

あろうと誰でも購入可能。

 

量産品の中古から、

新品の超高級カスタムモデルまで、

1,000本以上のキューが揃っている。

 

その環境下、

1本も買わずに4日間を過ごすのは難しい。

 

ヴィンテージのバラブシュカやザンボッティ、

超高価なブラックボアやジナキューなど

普段見られないキューも販売されている。

 

全く知らないメーカーのキューを

実際に手に取って、試し撞きもできる。

 

また、あらかじめオーダーしておいた

キューをメーカーから直に受け取るにも好都合。

 

過去30年間で、

このイベントで出会ったり、ゲットしたり、

取り逃がしたりしたキューは数えきれない。

 

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1枚目=SBE最大のブースはプレデター。キューは販売せず製品紹介に徹していた

2=幅広いラインナップを揃えるJacoby

3=中堅アメリカンメーカーPechauer

4=SBEに欠かせないJOSS。安定した品質と多彩なデザインが特徴

 

 

大手メーカーでは、

プレデターが価格のトレンドセッター。

 

ヴァイキングやメウチ、マクダーモット等

「メイド・イン・USA」を標榜し、

セールスポイントとする量産メーカーでも、

同価格帯での競争を意識している様子。

 

キューは「工芸品」というより

「スポーツ用品」というイメージが

優先しているようだ。

 

とはいえ、それらより規模が小さい

ジャコビーやペシャウアー、ジョスなどは、

超高価なモデルから初心者モデルまで、

幅広い価格帯のキューをラインナップしている。

 

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1枚目=CUE LEE’Sのキュー。バット・シャフトそれぞれ別売が特徴

2=堂々たる存在感を放つHOW Cueのブース

 

 

HOW(ハオ)や

CUE LEE’S(キューリース)等の

中国メーカーは、

コストパフォーマンスだけでなく、

デザインやクオリティ面での進歩が著しい。

 

「100ドル以下のキューばかり作っている」

というかつてのイメージは、

もはや通用しない。

 

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1枚目=1990年代から地道にアメリカで販売を続けるイタリアのLongoni

2=日本のキューメーカーではアダムジャパンと早川工房が出展

 

 

イタリアのロンゴーニは、日本では

キャロムキューの方が知られているが、

アメリカで1990年代以降、

ポケットキューも含め

継続的に販売を続けている。

 

日本からはアダムジャパンと早川工房が

共同でブースを構えているぐらいだが、

「メイド・イン・ジャパン」の

イメージは今でも高い。

 

円安傾向の現在、

国産キューメーカーにとって

SBEは大きなビジネスチャンスに

つながるのではないだろうか。

 

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1枚目=ACAキューコンテストの1位~3位作品。左から、3位Cohen、1位Jacoby、2位Pechauer。

2=今や超高級キューの代名詞ともなったpfd

3=SBE初出展から10年。アメリカでも知名度が高いZen Cueブース

 

 

カスタムキューのブースを見ると、

「木工品」あるいは「工芸美術品」

という世界は健在。

 

ACA主催のキューコンテスト入賞作品や、

台湾(工房は上海にあるが)の

Zen Cueのような凝った作品は、

誰が見ても美しいと思える仕上がり。

 

超高価なキューを求める

コレクターの市場は健在で、

アメリカ経済の強さを感じさせられた。

 

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1枚目=「クワイエット・ラグジュアリー」(控えめな贅沢)の見本とも言える、銘木の美しさで魅せるDoug Beasley

2=クワイエット・ラグジュアリーの中でもひときわ高価なAaron Astile(アーロン・アスティル)キュー

3=Aaron Astileの左側は、薄板リングを少しずつずらしながら数百枚も重ねて貼り合わせて作られた超絶モデル。右側は星占いの星座をインレイしたモデル

4=Mike Caponeの特徴的な長い剣ハギは息子が手伝う現在でも健在

5=Chris Nittiの娘婿、David Elliotが製作するElliot Cue。これからに期待だ

 

 

しかし、「プレーする道具」

としての実用性や性能も、

高いレベルで求められるのが現状。

 

ビリヤード場では、あまり凝り過ぎた

デザインでは実際のプレーには使いづらいし、

盗難のリスクも高い。

 

そこで複雑なインレイよりも、

銘木やグリップ素材の

自然な色合いや質感を生かした、

クワイエット・ラグジュアリー

(控えめな贅沢)が

カスタムキューのトレンド。

 

価格を抑えつつ(それでも高価だが)、

通常のプレーに使えるモデルは、

カスタムキューメーカーにとっての

重要な存在なのだ。

 

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1枚目=素朴でユニークなオハイオ州のメーカーMartin Cues。かつてはこのテの手作り感あふれるメーカーが多かった

2=お手頃価格の小規模メーカー、Carl Giuli Custom Cues。エキスポ土産にキュー1本と頼まれたらコレだった

3=竹の子ハギとウッドピンでポケット用・キャロム用両方製作するMariposa Cue

4=キューディーラーNew2YouQの面々。昔からの顔なじみだ

5=New2YouQの品ぞろえは古き良きエキスポのニオイがする

6=クラシックな4剣ハギのキューが売られていると、誰の作品か要チェック

7=Jersey Custom Cue Salesには最近注目のキューメーカーCarlos Collが5本並んでいた

8=超高価なBarry Szambotiのキューが2本。見られるだけでも貴重な体験

 

 

一方、かつてのSBEで数多く目にした

小規模なブースは、少ないながらも健在。

 

クオリティはまだ改善の余地があっても、

斬新で荒削りなデザインに可能性を感じる

キューメーカーや、

個人のネットワークで集めたキューを

販売するキューディーラーを見つけると、

うれしくなる。

 

現在メジャーとなったプレデター社や

多くのカスタムキューメーカーも、

このエキスポで最少スペースのブースを

開くことから始めたのだ。

 

未来の人気メーカー、

コレクターズアイテムとなるキューを

探す楽しみは、地下アイドルの「推し」を

見つけることと同じかもしれない。

 

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1枚目=アルミバットに樹脂のハギというアバンギャルドなBarnhartキュー

2=Barnhartのグリップは何とアルミワイヤ巻。キュー尻のエングレーヴィングはShelby Williamsの手によるもの

 

 

また、すでに定評のある

キューメーカーにとっても、多くの

プレイヤーやコレクターに直接アピールし、

会話できるSBEは貴重な機会。

 

皆を驚かせる「インパクト重視」の

作品を展示するメーカーも出てくる。

 

今回はウェストヴァージニア州の

キューメーカー、コーリー・バーンハートの

「ライトメタル」キューが注目を集めた。

 

細身のアルミニウムパイプ(内部に

メイプルコアが入っているとは思うが)を

樹脂製のハギに差し込んだ

立体的デザインのバット。

 

グリップは何と糸巻ならぬ、

アルミワイヤ巻という

インパクト抜群のモデルだ。

カーボン製のシャフトが付属する。

 

作者に「なぜこんなキューを作った?」と

追及(笑)したところ、

「他の誰もがやったことがないから」

というシンプルな答え。

 

売れスジを追求するだけでなく、

チャレンジ精神や遊び心に富んだ

作品が見られるところに、

アメリカの景気良さと懐の深さを感じた。

 

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さて、キュー調査を一通り終えたところで、

次回はSBEトーナメント&

こぼれ話レポート編だぜ。BD!

 

※ 2024 SBEレポート

その1【概要速報

その2【展示販売キュー・人物編

今回→ その3【キュー調査報告編

その4【トーナメント・その他もろもろ~前編

その4.5【トーナメント・その他もろもろ〜後編

 

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