〈BD〉日本でも利用者が増える!?  FargoRate(ファーゴレート)の仕組みと実態・その2

 

“ジョシュア・フィラー ドイツ 840”

 

このように国際大会の試合中継や

告知・結果記事などで、

 

選手名に3桁の数字が付記されているのを

見かけることが増えて来ました。

 

この数字がFargoRate(ファーゴレート)。

公式サイト:https://fargorate.com/

 

130ヶ国30万人弱が登録。

約2千8百万の対戦データをもとに

プレイヤーのレーティング(レベル)を

数値化しています。

 

公式サイトより:

“FargoRateは、世界中のアマチュア・プロのポケットビリヤードプレイヤーを評価する独自レーティングです。ローカルリーグ、地域、国、大陸にまたがるゲームの勝敗データを組み合わせることで、世界中のプレイヤーが同じ尺度で評価されます。”

 

名前を出したジョシュア・フィラーは、

現在のFargoRateのNo.1選手です。

つまり、約30万人の頂点にいます。

 

このFargoRate、

日本でも名前は知られてきましたが、

日本支部など日本語対応の体制が

ある訳ではなく、

 

登録済みのプレイヤーと

一定回数以上、対戦を重ねないと

レーティングが確立(正常化)しない

システムだということもあり、

積極的に登録・利用している

日本選手はまだ少ないと思います。

 

BDでは2年前にFargoRateを紹介しました。

こちら

 

その後も着々と登録者数を伸ばし、

欧米ではスタンダードな

レーティングになりつつある

FargoRateの仕組みと実態について、

 

2年前の記事と同じく、

トロント在住のK. MORI氏に

解説していただきました。

 

今回はK. MORI氏が、

FargoRate代表のマイク・ペイジ氏に

行ったメールインタビューを軸に、

日本での普及可能性についても考えます。

 

…………

 

男女別のレーティングごとの登録者数を表すヒストグラム。男性の「山」である500あたりは「最初のラックでのマスワリ率が5%ぐらい」のスキル。女性の山の400あたりは「最初のラックでのマスワリ率が1%ぐらい。リーグで1シーズン1、2回マスワリが出るレベル」
男女別のレーティングごとの登録者数を表すヒストグラム。男性の「山」である500あたりは「最初のラックでのマスワリ率が5%ぐらい」のスキル。女性の山の400あたりは「最初のラックでのマスワリ率が1%ぐらい。リーグで1シーズン1、2回マスワリが出るレベル」

 

K.MORI氏記:

 

『続・ファーゴレートについて』

 

ファーゴレートについて2年前に紹介記事を書かせていただきましたが、ご存知ない方のために、改めて最初に簡単に説明させていただきます。

 

このようなレーティングは、「イロレーティング」(Elo rating)といい、そもそもチェスプレーヤーの強さを「数値化」するためのランキングシステムとして開発されました。今では、チェスはもちろん、将棋、ゴルフ、対戦ゲームなど色々なものに使われています。試合をし、対戦相手とのレーティングの差に応じ勝点を獲得し、レーティングが上がったり下がったりします。

 

ビリヤードがチェスと違うのは、チェスは【勝ち・負け・引き分け】なのに対し、ビリヤードは9ラック先取などで行われることから、結果が9-0なのか9-8なのか、【勝敗+スコア】によってレーティングの上下の値が変わります。このシステムによってプレイヤーの実力を「客観的」に評価できるとされています。

 

チェスには、国際チェス連盟(FIDE)が公式に認定しているレーティングがあります。FIDEレーティングは、主に公式大会での対戦結果に基づいて算出され、同じレートのプレイヤー同士はおおよそ同等の実力を持っていると見なされます。FIDEレートは、チェス界で最も権威のあるレーティングシステムの一つであり、世界中のプレイヤーの実力を比較する際に頻繁に使用されています。

 

ビリヤードにおいて、現在最も登録プレイヤーとデータが多く、算出システムと数値に信頼の置けるレーティングがファーゴレートだと言えるでしょう。興味を持っていただけたら、ぜひ前回の記事を読んでみてください。もう忘れた方もいらっしゃると思うので、目を通していただけるとこの先の理解が深まると思います。

 

今回、ファーゴレートの開発者であるマイク・ペイジ氏に、BDさんと私からいくつかの質問をしました。それに対する回答を中心にお届けします。

 

…………

 

Q:日本のビリヤードファンは現在のところ、FargoRateを「登録し、参加し、利用するもの」というより「プロの国際大会を視聴する際の指標」として活用している状況があります。日本が特殊でしょうか?(BDより)

 

A:日本が特殊ということはありません。メインのユーザーは北米中心なので、他の国から入ってくるデータは、プロが出場している大きな大会のデータがほとんどです。

 

Q:現在ワールドトップ達のレートは800を大きく超え、数名のトップオブトップは830~840台に入ってきました。このまま進むと900台もあり得るでしょうか?(BD)

 

A:現在のトップ達のレート上昇は、レーティングの大幅なインフレ状態ではないと思います。おそらく、数年前に比べトップレベルでプレーするプレイヤーの人数が増えてきたことが要因だと考えています。確実なことは言えませんが、900超えは無いと思いますが、850~860台に入ることはあり得るのではないかと思っています。

 

2023年3月時点の「ワールドトップ100」。1位はフィラーで「840」。日本人最高位は17位の大井直幸で「812」
2023年3月時点の「ワールドトップ100」。1位はフィラーで「840」。日本人最高位は17位の大井直幸で「812」

 

Q:ファーゴレートの“ワールドトップ100”リストに載るには条件がありますが、「その条件に沿わないものの800オーバーのレーティングを持つプレイヤー」は現在何人ぐらいいるのでしょうか? 例えば、日本人のYaushiro Kijima(喜島安広。日本トップアマ)もその一人だと思うのですが。(K.MORIより)

 

A:おっしゃる通り、まず「トップ100リスト」に入るには、過去2年間に150ラック以上、通算300ラック以上のプレー実績が必要です。

 

ヤスヒロは通算210ラック、過去2年間では42ラック登録されています。いくつかの理由から、レーティングはかなり暫定的なものでもあります。200ラック程度のレーティングでは、統計的な不確実性から30~40ポイントの誤差が生じることがあります。その上、ヤスヒロの試合のほとんどは、レーティングが確立されていない相手とのものです。 彼のレーティングは、数年前の『ジャパンオープン』の予選での数試合から強い影響を受けています。 ベスト128で中国の強豪、徐小淙(Xu Xiaozong)に9-8で勝ち、ベスト64でカルロ・ビアド(フィリピン)に9-6で勝っている。しかし、彼が本当に正確なレーティングを得るには、有名な相手ともっと試合をする必要があります。

 

ヤスヒロの他、800を超えているものの300ゲームに満たない(レーティングに不確実性が残る)選手が4人います。中国の孔徳京(Dejing Kong)と薛珍麒(Xue Zhenqi)、フィリピンのエドウィン・ガマスとバセス・モカイバートです。 さらに、最近のラック数が十分でない選手も数人います。ちなみに、最も高いレーティングの持ち主は、バセス・モカイバートで「858」です。彼をググれば、フィリピンから出ないだけで、トップクラスの選手であることは明らかです。

 

…………

 

K.MORI氏記:

 

コロナも開けて、公式試合や国際試合も増えてきましたし、個人的には喜島さんを始めとして、世界でまだ知られていない日本人アマチュアトッププレイヤーの実力をファーゴレートを通じて世界に知らしめて欲しいと思っています。中国やフィリピン、おそらく台湾にもファーゴレートを取得していないものの、トップレベルでプレーするプレイヤーはごろごろいそうです。

 

質問を続けます。

 

…………

 

左手にスイッチしてもトップレベルの活躍を続けるカナダのモラ。そのレーティングの推移

 

 

Q:ジョン・モラ(カナダ)が2018年に右手から左手にスイッチしました。彼のレートがどのように変化したのか興味あるのですが。(K.MORI)

 

A:少し前にこの件についてFacebookにアップしたものがあります。上の表を見てください。2018年の春に彼は利き手を変えました。一時的に30ポイントほど落ちましたが、現在では右手でプレーしていたときとほぼ同じです。

 

…………

 

K.MORI氏記:

 

昔からホームの玉屋で練習しているジョンの姿を見ていて、彼の左手でのカムバックを応援していました。少し前のインタビューで、右手でプレーしている時よりも調子が良いと言っていましたし、メンタルのコーチングも受けているようです。今年あたり、左手でのファーゴレートが右手時代を超えるのではないかと期待しています。

 

さて、ここからが最も知りたかった事柄です。

 

…………

 

Q:現在、日本のプロもしくはアマチュアの公式試合のデータを定期的に入手していますか?(K.MORI)

 

A:ビリヤードウォーカー』で報告された試合結果を断続的に収録しています。『グランプリイースト & ウエスト』、『京都オープン』、『関西オープン』といった大きな大会のベスト16以上の試合結果が含まれています。これにより、日本のトップ選手の多くについては、ある程度正しい評価ができていると思います。

 

Q:もし日本の競技団体であるJPBAやNBAなどから、1回戦から全てのデータを提供したいと申し出があった場合、どのようなデータ形式が必要ですか? また、登録費用などは必要でしょうか?(K.MORI)

 

A:データを提供いただけるなら大歓迎です。費用はかかりません。下記のような表形式フォーマットでデータをお送りください。過去のデータも登録可能ですが、時間が経てば経つほどレーティングへの影響は小さくなります。

 

 

Q:ビリヤード場が地区の小さいトーナメントを開き、そのデータを登録してもらうようなことは可能でしょうか?(K.MORI)

 

A:ローカルトーナメントのデータを登録したい場合には、事前に我々と打ち合わせをしていただく必要があります。さらに大会結果などのデータがネット上のソフトウェアで公開されていて、誰でも確認できる状態であることが必要です。望ましいソフトは『CUESCORE』です。このシステムを使っていただけるとこちらでデータを簡単に取り込めます。

 

Q:月単位で行われるローカルトーナメントなどで、誰もファーゴレートを持っていない状態のデータを登録し続けた場合、どこかの時点で正確なレートが出るのでしょうか?(K.MORI)

 

A:一人も確立されたレートを持っていない場合は正確なレーティングは出ません。しかし、そのローカルトーナメントに出ているプレイヤーの一部が大きな大会でファーゴレートを既に確立していれば、ローカルトーナメント全体のプレイヤーのレーティングも確立されます。

 

…………

 

日本のデータが一部登録されているのは知っていましたが、どういう経路で、どの程度のデータなのか、今回ようやくその実態がわかりました。現状では「大きな大会」「公式大会」のベスト16以上でなければデータはFargoRateに登録されていないようなので、日本の全てのプロが登録されている訳ではないようです。

 

ここまでの内容を踏まえて、ファーゴレートを段階的に日本で普及させることを考えると……

 

◇1:国内競技団体の公式試合データをFargoRateに送付する仕組みを作る。

 

※例えばNBAに登録し(CS会員になり)、試合に出た人は、追加料金なしでFargoRateに登録するという手もあるでしょう。将来的には自分のレーティングが出るという特典にもなりますし、レーティングで試合参加資格をコントロールすることも可能になります(現在のABCクラス制からの移行。例:『参加資格:ファーゴレート400~500』など)。

 

※プロ(JPBA)も1回戦から全データをファーゴレートに送付するシステムを構築するのが良いと思います。プロのファーゴレートが確立すれば、プロが参加するチャレンジマッチやハウストーナメントなどから、アマチュア選手にも波及効果が期待出来ます。

 

◇2:1により全てのプロとある程度の数のアマチュア選手がファーゴレートを確立していれば、ローカルトーナメントなどでもファーゴレートにデータ登録することを前提としたトーナメントを開いても、何名かは既にレートを確立したプレイヤーの参加が期待できます(登録者数の拡大と確実性の向上)

 

こう書くのは簡単ですが、実際に作業するのは競技団体の中の人になると思うので、動いてもらえるかどうかは全くわかりませんが、私も言い出しっぺとして出来ることがあれば協力させていただきたいと思っています。関係者の方で質問等あれば遠慮なくご相談ください。

 

冒頭に記したように、チェスでは国際チェス連盟(FIDE)が公式に認定しているレーティングがあります。ビリヤード界も世界的に統一された一つのレーティングに基づいて強さを評価されるようになると良いと思っています(公式レーティング以外のレーティングやランキングが存在するのもありだと思います)。

 

最後に、日本ですぐにファーゴレートを確立する裏技を。

 

Salotto https://salotto.app/
Salotto https://salotto.app/

 

実際、これは裏技でもなんでも無いのですが、北米で使われている『Salotto』というプレイヤーマッチングアプリがあります。この機能の一つに“ファーゴレートに試合を登録する”という有料機能があります。ファーゴレートに名前を登録後、Salottoを使って既にファーゴレートを確立しているプレイヤー(プロ、トップアマ、海外でCSIリーグしていた人など)と試合をし、そのデータを登録することができます。

 

Salottoは将来的に英語以外の言語への対応も考えているとのことです(いつになるか未定)。最近、Salottoがスポンサーする選手の中に大井直幸プロが入ったようなので、今後日本での広がりも期待しています。

 

また、これはSalottoの方からの情報ですが、ファーゴレート登録直後のプレイヤーには、“スターターレーティング”という暫定的な数字(レーティング)が与えられていましたが、最近ではレーティングのない「記録」を登録していき、リーグ戦、トーナメント等を通じてゲームに参加し、ある程度データが溜まった時点でそのプレイヤーのパフォーマンスからレーティングが「確立」されるようです。

 

(了)

 

…………

 

K.MORIさん、ありがとうございました!

 

………… 

 

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