〈BD〉「『来年3月を見てて。優勝するから』って言ってました」――全日本女子プロツアー第1戦優勝・栗林美幸の談話

Photo : On the hill !
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11日~12日に行われた

全日本女子プロツアー第1戦 in FJD HUSTLER(大阪)』。

 

優勝した栗林美幸プロの

談話をお届けします。

試合の翌々日に取材しました。

 

…………

 

――約3年半ぶりの優勝です(※前回の優勝は2019年8月の『全日本女子プロツアー第3戦 in BAGUS六本木』)。

 

栗林:嬉しいですね、うん。でも、案外さらっとしてたかな。コロナで試合自体が少なかったので、前の優勝から間隔が長く空いた感じもなかったし、待ちに待った優勝という感覚もなかったです。

 

――では、試合前に「絶対勝つぞ!」と気負うこともなかった?

 

栗林:なかったですね。……いや、私、昨年末から「3月に優勝するから」ってお店(栗林美幸・栗林達プロ夫婦で営む『KULICKS』〈東京〉)のお客さんとかに宣言してたんですよ(笑)。

 

――えっ、どういうことですか?

 

栗林:コロナ禍でも日々球は撞いてましたけど、気持ちの入った練習は出来てなかったと思います。もともと試合に向けて追い込んでいったり、特別な練習をしたりすることはないんですけど、それでも集中力が欠けていたなと。昨年開催された5試合に出てみて、やっぱりそのツケが回って来てるなと感じたので、12月から一生懸命やるようになりました。持論ですけど、「練習しないとすぐ結果に出るけど、練習した結果は3ヶ月後に出る」と思ってます。なので、「来年3月を見てて。優勝するから」って言ってました。謎の自信(笑)。

 

――有言実行でしたね。

 

栗林:自分でもよくわからないですけど、自分の状態や展開やラッキー……全てが噛み合ったということなんでしょうね。それと宣言をした手前、負けたら示しがつかんというか。それで頑張れたところもあったと思います。

 

――会場の『FJD HUSTLER』で撞くのは初めてでしたか?

 

栗林:いえ、1月の『関西オープン』の翌日に行きました。クリ(夫の栗林達プロ)と河原(千尋)プロを含めて数人で。『FJD HUSTLER』オーナーのR・ダブレオさんは以前うちの店に来てくれたことがあって、ご夫婦で『FJD HUSTLER』を引き継ぐことも知っていたので、会いに行きました。うちのお店にもダイヤモンドテーブルは1台ありますが、『FJD HUSTLER』にあるのは最新型(PRO-AM)で、うちのとはコンディションも違っていたので、行った時に撞いておいて良かったです。すごく渋いとかすごくクッションが跳ねるということもなく、試合当日もそこまで難しいとは感じませんでした。自分の気持ちが落ち着いている時はね(笑)。

 

――映像で見る限り、いつもの栗林プロらしくポーカーフェイスで落ち着いて撞いている様子でした。

 

栗林:2日間全体的には落ち着いて撞けました。でも、決勝戦はちょっと……。

 

――プレー内容の自己評価は?

 

栗林:決勝戦抜きだったら70~80点ぐらいかな。決勝戦を入れたら60点ぐらいになっちゃいますね。ダメでした。

 

――決勝戦の内容が良くなかった理由は?

 

栗林:まず試合前に、「初優勝のプレゼンターにはなりたくない」って思ってしまったのが大きいですね(苦笑)。最近初優勝の人がどんどん生まれて来てますけど、勝たせる側になるのは嫌だなって。そう思った時点でもう3割減ぐらいになってますよね。それと、奥田(玲生)プロのストロークが絶品で、私が嫌だなと思う球も迷わずスパッと入れてるのを見て、「いいな」って思った瞬間がありました。それもプレッシャーになってたと思います。

 

――終盤まで取って取られての競り合いになりました。

 

栗林:私がマスワリで1点取った後、2ラック目でなんでもない4番をミスしましたよね。あれは自分なりのダイヤモンドテーブル対策で気持ち厚めから狙ったんですけど、穴でブルブル(カタカタ)して止まりました。「えっ、ウソ」って驚いてしまってそこから心が乱れました。今思えば「こう撞けば入るだろう」っていう認識の甘さがあって、狙い倒せてはなかったですね。

 

――中盤、相手のペースになりかけたところで、相手にも9番ミスや9番インスクラッチなどがありました。

 

栗林:あれがなければ私は負けてました。だからラッキーだったと思います。でも、4-4に追い付いた後のブレイクは良い形にならず、自分も下手だったし、すっと行ける展開にならなくて苦しかったです。

 

――6-4に出来るところで栗林プロに9番ミスもありました。

 

栗林:自分でもビビりました(笑)。8番から9番の出しが想定より遠くなってしまって、それでも冷静を装ってすっと構えたんですけど、スパンと行きたかったのに、体ごとぬる~っと撞いてしまって……「ああ、私はまだこんなことするんだ」って。直後にタイムアウトを取って、自分に喝を入れて戻って来ました。

 

――続くラックは3番からの取り切り。そして最後はマスワリでした(7-5で勝利)。

 

栗林:最後のブレイクは決勝戦で一番良かったかもしれません。やっと取り出し(2番)が見えてて。2番はミドルレンジで厚くて、ポジションを考えるとちょっと嫌な球でしたけど、今度はぬる~っと行かず、ちゃんと我慢して撞けました。その後の5番から6番、6番から8番なんかもポジションはベストじゃなかったですけど、フリや撞点とか球のことだけ考えながら淡々と撞けてたと思います。全く「勝てる」とか思うことはなかったですね。

 

――ゲームボールは?

 

栗林:8番が微妙に厚くなったので、「どこに出ても9番は入れてやる」って思いながら押し球で出しました。そしたら9番は土手撞きになったんですけど、落ち着いて撞けば入ると思ってました。9番がポケットに向かって転がって行くのを見てやっと「勝った」と。握手した後、「やったー!」ってバンザイしました(笑)。

 

――今回は若手の「壁」として相手の挑戦を退けました。

 

栗林:勝ち上がって来る若いプロがいるのは嬉しいことです。皆上手なので、純粋に試合をするのが楽しいですし、若い世代が出て来ないと日本全体のレベルが上がらないですから。今回はベスト16の村松(さくら)プロ戦もかなり気合い入れてました(7-1で勝利)。昨年の『ジャパンオープン』のベスト32で7-2から逆転負けしたんです(7-8)。彼女のプレーがナイスで、美しくまくられました。そんなこともあったので、今回はかなり集中して最後まで気を抜かずに撞けました。さっき「初優勝プレゼンターになりたくない」って言いましたけど、裏を返せば「自分が優勝したい」という気持ちの現れかもしれません。

 

――2023年ももう3月ですが、今年はどんな年にしていきたいですか?

 

栗林:今年もマイペースで、さぼらずに頑張ります。今よりもっと上手くなりたいです。

 

――ランキングや結果など数値的な目標は?

 

栗林:う~ん、なんでしょう……「1位になりたい!」と意気込んで撞くのではなく、年間を通して良いプレーが出来て、終わってみたら1位だったというのが理想です。だから、結果を意識するよりも先にプレーを磨きたいです。あとは、海外にも行きたいですね。家族がいるので簡単に決められることではないですが、今年1回は行きたいなと思います。

 

――わかりました。最後は応援してくれた方々へ一言。

 

栗林:同じ日に埼玉でアマチュアの大会がありましたよね(『セスパ東大宮店』・10ボールチャンピオンシップ)。うちのお店からも何人か出てたんですけど、皆、試合の合間に私の試合のライブ配信を見て応援してくれてたみたいです。そういうのを聞くと本当に嬉しいし、ありがたいなと思います。そして、コロナ禍で試合がなかった時期も含めて、いつも支えてくださるスポンサーさんやファンの方々にやっと良い報告が出来たのですごく嬉しいです。もちろんいつもサポートしてくれる家族にも感謝しています。これからもよろしくお願いします。

 

(了)

 

Miyuki Kuribayashi

JPBA37期生

1979年1月13日生

香川県出身・東京都在住

2007年・2008年・2016年『ジャパンオープン』優勝

『関西オープン』6勝(3連覇含む)

『東海グランプリ』3勝

『北陸オープン』2勝

『大阪クイーンズオープン』4勝(※前身大会合わせて)

『九州レディースオープン』3連覇(通算4勝)

『全日本女子プロツアー』5勝

『第1回 CPBA Queens Open in 札幌』優勝

2017年『全日本選手権』準優勝

他、優勝・上位入賞多数

2013年後半に産休からトーナメント活動に復帰

使用キューはEXCEED & MEZZ

所属店:『KULICKS』(東京)

所属・スポンサー:(株)三木、(株)JUST DO IT

 

 

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