〈BD〉カスタムの輝き・「ZEN(ゼン)」編

 

カスタムキューを多数取り扱っている

UK Corporation

 

その代表、大原秀夫氏が所蔵している

キューを見ていく本企画。

 

(※過去記事はこちら

 

今回紹介するのは『ZEN』(ゼン)です。

 

上海を製作拠点とするメーカーで、

代表は台湾出身の阿仁(アゼン)氏。

 

日本ではJPBAトッププロの

羅立文(ロ・リウエン)の

使用キューとして知られる『ZEN』は、

 

精緻でハイレベルな

インレイ&リングワーク、

アジアンテイスト香るデザイン、

そして、同じ程度に手の込んだ

アメリカンカスタムキューに比べると

求めやすい価格帯……が特徴です。

 

今回は、大原氏が昨年

中古で入手した『ナスカ』という

モデルを紹介します。

 

…………

 

この『ナスカ』は

2010年代後半に製作されたもの。

 

一見すると、

エボニー+シルバーインレイの

シックなキュー。

 

しかし、手に取って見ると、

フォアアーム・スリーブともに、

シルバー、カッパー、シェル(貝)を用いた

斬新かつ独創的なインレイワークが

展開されていて、その作り込みの

細かさに驚きます。

 

4つあるリングのうち2つは、

中国の伝統的な模様、

「雷文(雷紋)」で、

これは他のZENキューにも

採用されることが多いです。

 

 

大原氏・談:

 

「UK Corporationでは以前から

羅立文プロをサポートしているのですが、

ある日、彼のお店

(神奈川『POOL LABO』)に行った時に、

 

『このZENキュー、いいでしょう』と

羅プロが見せてくれたのがこれでした。

 

羅プロはZENの日本代理店もやっていて、

彼のもとにはZENの新品も中古もありますし、

オーダーも可能です。

 

私はZENの代表の阿仁(アゼン)とも

長い付き合いがありますが、

改めてZENキューを近くで見て、

価格を聞いて、本当に驚きました。

 

『これだけ多く、細かくインレイが

入れられたキューが

そんなに安くていいのか……』と。

 

アメリカンカスタムキューの感覚では

考えられない価格でした。

 

これはリフィニッシュ済みの

中古キューで、シャフト2本付き。

1本が普通のプール用で、

もう1本はチャイニーズ8ボール用でした。

 

購入してすぐ撞いてみたところ、

材質・構造・ジョイントなどが

相当しっかりしているのだと思いますが、

私にはシャフトもバットも

だいぶソリッドで硬く感じました。

 

タップを付け替えてみたら

多少撞きやすくなりましたが、

それでも私個人の感覚では

硬め・強めでしたね。

 

キューにパワーや、

ソリッドなヒッティング(打感)を

求める方には良いと思います。

 

私が初めて阿仁(アゼン)に

会ったのは、10年ぐらい前の

『ICCS』(アメリカ。

International Cue Collectors Show)に、

彼が初めてキューを展示した時です。

 

彼も私も喫煙者なので、

喫煙所で顔を合わせるうちに

色々な話をする仲になりました。

 

当時のZENキューは、

4剣や6剣のシンプルな剣ハギモデルを

中心としたラインナップだったと

記憶しています。

 

ただ、今以上に中華テイスト……と

言いますか、雷紋などの中国系の

モチーフの主張が強く感じられて、

あまり私の食指は伸びませんでした。

 

ですが、その後、

彼のビジネスパートナーであり、

元々キューコレクター、ディラーでもあった

チャディーという人物の働きが

大きかったのだと思いますが、

 

よりデザインが洗練され、

より精密で整ったインレイを持つ

モデルが増えていきました。

アジアンテイストのブレンド具合も

巧みになってきたと思います。

 

『抑えた価格で

オリジナリティ溢れる世界観を

表現しているメーカー』として

ZENの名前が広がりました。

 

また、納期が早いのも素晴らしい。

かなり凝ったモデルでも

約半年で出来上がると聞いています。

 

緻密で独創的なインレイのキューを

作るメーカーと言えば、

今ふと『マンジーノ』の名前が

頭に浮かびましたが、

 

仮にマンジーノに、

これだけインレイが入ったキューを

オーダーしたとしたら、

予算も時間も倍以上かかっても

おかしくありません。

 

おそらく上海のZENの製作拠点には、

ハイエンドな製作機械がたくさんあり、

腕が良くて勤勉なスタッフ達が

常時働いているのでしょう。

 

アメリカンカスタムキューの

個人工房とは比べられないほどの

生産性の高さだと思います。

大陸恐るべし、ですね。

 

キューディーラーの視点で言えば、

ZENは価格破壊レベルのキューです。

少なくともアメリカンカスタムキューとは

同列には扱いづらく、

値付けが難しいメーカーでもあります」

 

(了)

 

…………

 

○ UK Corporation連載企画

『カスタムの輝き』バックナンバーはこちら

 

 

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