〈BD〉「自分のやりたいことを手球に伝える時間が生まれる」――肥田明プロが語る『BIZEN TIP Ⅲ』の魅力【後編】

 

キャロムキュー用牛革積層タップ、

BIZEN TIP Ⅲ』の

発売記念企画第2弾。

 

肥田明プロ(JPBF)インタビューの

【後編】をお届けします。

 

※【前編】はこちら

 

…………

 

~8月5日掲載の【前編】から続く~

 

 

――牛革の一枚革タップは優れた性能がある反面、横(タップ側面)が膨らみやすいなど、メンテナンス性は豚革積層タップほど高くないとも言われます。

 

肥田:うん。『BIZEN TIP Ⅲ』は横が出てくることがかなり少ないけど、基本的に牛革タップは使ってるうちにどうしても横が出て来るから締めないといけない。そこが面倒と言えば面倒なんだけど、楽しみでもあるんだよね。手のかけ方次第で自分好みにタップを育てていけるから。どんどん良いタップに仕上げていけるのが牛革タップの特徴でもあるね。

 

――『Ⅲ』は一枚革ではなく積層ですが、その違いは撞いていて感じますか?

 

肥田:さすがに感じるね。例えば、一枚革の名品と呼ばれるタップと撞き比べたら違いはある。でも、豚革積層タップに比べたら段違いに感触がいいし、積層にしたことで当たり外れはだいぶ抑えられてる。全く個体差がないとは言わないけど、一枚革に比べたらとても少ないね。

 

肥田プロが所有する古い牛革タップを手に取りながら談笑する肥田明プロとBIZEN開発者・苫野裕氏

 

 

――横の膨らみについてですが、BIZENの初期のサンプルと比べると『Ⅲ』は少なくなっていると思いますか?

 

肥田:初期のものは膨らみやすかったけど、開発の過程でどんどん少なくなってきた。今の商品版の『Ⅲ』は1回横を切ってあげるとその後ほとんど出て来ない。初期のものは2、3回横を切る必要があったし、切っていくうちにだんだんタップ自体が弱くなっちゃって耐久性が物足りなかった。……ただ、僕個人の好みになっちゃうけど、今の商品版は完成させ過ぎてる感じもあるね。

 

――完成させ過ぎ、ですか。

 

肥田:もう1段階ぐらい前のものの方が、自分で育てられる余地が大きかったから僕は好きだね。やっぱりタップは自分で育てたくなっちゃうんだよ(笑)。今出てる『Ⅲ』の完成度の高さは、商品化のために安定性をかなり追求した結果だとよくわかる。多くの人がそれぞれ異なる環境で、最低限のメンテナンスで長く使えるように考えられたタップだと思う。

 

BIZEN開発者・苫野裕氏:まさにその通りで、完成度の高さを求めて磨きに磨きました。将来的には、肥田プロのように自分で育てられる人向けに、もっといじれる余地があるタップやカスタムメイドのタップも出せたらいいなと以前から考えています。

 

――肥田プロはどうやってタップを育てるんですか?

 

肥田:「撞き締めながら横を整えて行く」というのが基本だね。僕は曲玉(アーティスティックビリヤード。マッセにはじまり強烈な押し引き・スピンショットを多用する)もやってきているからハードショットもよくやるけど、タップを育てる時だけはハードに撞かずにコツコツやってるよ(笑)。撞き締めの時期に偏った撞き方をするとタップが歪んじゃうから、適度な加減で撞き締めて、撞き終わったら横を締めて……その繰り返し。何度も横を切る(刃物でカットする)と強度が失われちゃうから、横を切るのは最小限にして撞き締めて行くとだんだん弾力が出て来て食い付きが増してくる。特にタップ付け始めの1週間ぐらいは、丁寧にこの作業をやってあげると良いタップに育ってくれることが多いね。

 

『BIZEN TIP Ⅲ』
『BIZEN TIP Ⅲ』

 

――特に3Cプレイヤーは強靭な革タップを求めている印象があります。

 

肥田:そうだね。『Ⅲ』もそうだけど、優れた牛革タップは「パワー」は当然として「弾力」と「食い付き」を兼ね備えている。そうするといわゆる「球持ちが良い」タップになるし、自分のやりたいことを手球に伝える時間が生まれる。長く持ちすぎるのもいけなくて、全然持てないのも良くないんだけど、『Ⅲ』は早く離したいと思ったら早く離せるし、長く持ちたいと思ったら長く持つことも出来る。豚革積層タップではそこのコントロールが難しいと思う。

 

――BIZENなら撞き手のタッチやニュアンスを伝えやすいと。

 

肥田:うん。ちょっと話が逸れるけど、初心者にはどんなタップやキューが向いてるかって言うと、撞いた時に手球をあまり長く持たないで早く離すタップやキューの方が良いと僕は思う。ストロークに変なクセがあろうがコジろうが、その影響が出る前に手球は転がってるから。でも、BIZENを含めた牛革タップは、手球を長く捕まえようと思えば長く捕まえられるから、クセやコジリが球に出ちゃうことがある。その意味では玄人向けのタップだとも言えるね。

 

BIZEN開発者・苫野裕氏:ユーザーさんからの声でもたまにありますね。「ストロークエラーを許してくれないタップだ」と。

 

――敏感に反応してくれるから、扱いがシビアなんですね。

 

肥田:そう。そこが牛革タップらしさだと思う。キャロムプレイヤーが牛革タップを好むのは、豚革タップより球持ちが良くて、自分でコントロール出来る余地が大きいからでしょう。

 

今も肥田明プロや肥田緒里恵プロが使う、オールド革タップが取り付けられた曲玉(アーティスティックビリヤード)用のキュー達。マッセ、スピンボール、切り引きなど極端なショットを可能にし、その衝撃に耐えてくれる。左端のキューは約30年前にタップ交換をしてそれきりだとのこと

 

 

――肥田プロはお店にいる時にお客さんからタップの相談をよく受けると思います。ハウスプロとしてBIZENは勧めやすいタップですか?

 

肥田:常連さんのタップの好みはだいたい把握してるけど、よそから見えたお客さんの場合は好みをお聞きするところから始めますね。硬いのがいい、柔らかいのが好き、自分でメンテナンス出来る出来ない……。その結果、豚革積層タップを付けてあげることもあります。でも、今はもう自信を持ってBIZENを勧められるね。『Ⅲ』より先にポケット用BIZENが出たじゃない。あれも良かったよね。キャロムのお客さんも含めてうちの常連さん達のキューに付けたら、皆「良いね!」って。この『Ⅲ』も間違いなく気に入ってくれると思う。

 

――わかりました。最後に『Ⅲ』をどんな人に楽しんでもらいたいですか?

 

肥田:それは「みんな」になっちゃうんだけど(笑)、今言ってきたように、タップのことが少しわかってきて、牛革ならではの感触と性能を体験してみたいという人にはぜひ使ってもらいたいね。『Ⅲ』はものすごくパワーがあるから、女性などパワーがない人にもとてもいい。特に3Cはボールをたくさん走らせるゲームだから、これだけパワーがあれば少しは楽に撞けると思う。僕としては「パワーがありすぎじゃないか」と感じるほどだけどね(笑)。

 

――そこまでですか。

 

肥田:うん。特に最近のシャフトはパワーのあるものが多いから、そこに『Ⅲ』を付けると「やりすぎ」になるかもしれないね。そして、メンテナンスに興味が出てきて、育ててみるのも面白そうだと思った人にも『Ⅲ』はいいと思う。「タップを育てる」って言葉は今の若い人達にはピンとこないかもしれないし、『Ⅲ』は初めから完成されてるから育てる余地が大きい訳ではないんだけど、タップにはそういう楽しみ方もあるっていうことを『Ⅲ』に触れて感じてもらえたら嬉しいよね。

 

(了)

 

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