〈BD〉北米中心に利用者増加。プロイベントでも採用されているFargoRate(ファーゴレート)とは? 

https://fargorate.com/
https://fargorate.com/

 

130ヶ国24万人が登録。

約2千万の対戦データをもとに

プレイヤーのレーティング(レベル)を

出している

FargoRate(ファーゴレート)。

 

https://fargorate.com/

 

近年、北米を中心に利用者が増えていて、

その需要の多くは

アマ大会やアマリーグですが、

いくつかのプロイベントでも

公式に採用され始めています。

 

海外試合動画やレポートなどを通して、

日本にいても目にする機会が増えました。

 

公式サイトより:

“FargoRateは、世界中のアマチュア・プロのポケットビリヤードプレイヤーを評価する独自レーティングです。ローカルリーグ、地域、国、大陸にまたがるゲームの勝敗データを組み合わせることで、世界中のプレイヤーが同じ尺度で評価されます。”

 

FargoRateについて日本語で

書かれたものは見付からず、

なかなかBDで採り上げる機会も

なかったのですが、

 

カナダ在住のアマチュアプレイヤー、

森 覺摩(もり かくま)さんが、

レポートを送ってくださいました

(※森さんはこの夏発売された

ビリヤードメンタルの本

小さな動きの楽しさ』の

訳者でもあります)。

 

FargoRateのシステムや概要を

掴むのに役立つ内容ですので、

森さんの了承を得て、ここでシェアします。

 

以下、長文となりますが、

興味を持っている方の参考になれば幸いです。

 

…………

 

森 覺摩氏・記:

 

『ファーゴレートについて

 

● はじめに

 

日本のビリヤードでよく使われているクラス分けに【SA、A、B、Cというものがあります。長くビリヤードをプレーしていれば、このクラス分けがいかに大ざっぱなものかはご存知だと思います。ある地域でAクラスの人が他の地域ではBクラスだったり、その逆もあります。基本的に自己申告なので、トラブルとまではいかなくても、問題視される場合も多く、もうちょっと良い評価方法は無いものかと思っている方は多いと思います。

 

APA(JPA、CPA)で行われている9ボールのクラス分けはSL(スキルレベル)1~9までありますが、最高のSL9まで上がってしまうと、そこから先は、なんとか9に上がったというレベルの人も、プロレベルの人も同じ扱いになります。さらに、APAの8ボールではSL2~7までしか無いので、SL7はBの上ぐらいからプロレベルまで一緒という状態です。

 

FargoRateの開発者は、ビリヤードのような対戦型のスポーツには「イロレーティング」が向いているとしています。

 

…………

 

● イロレーティングとは?

 

Wikipediaによると、

 

“イロレーティング(Elo rating)とは、対戦型の競技(2人のプレイヤーまたは2つのチームが対戦して勝敗を決めるタイプの競技)において、相対評価で実力を表すために使われる指標の一つ。数学的裏付けのある最も著名なレーティングシステムである。イロレーティングは、もともとチェスの実力を表すために考案されたものだが、様々な競技に応用されている。囲碁将棋、サッカー(FIFAランキング)、ラグビー、テニスなどでも使われている。”

 

イロレーティングがどんなものか体験する手っ取り早い方法は、Chess.comで他のプレイヤーと対戦を行うことです(無料)。最初は暫定のレーティングが与えられ、対戦相手とのレート差により、その試合で勝った場合、引き分けの場合、負けた場合、それぞれに応じてレーティングがどう変わるか表示されます(例:勝ち +71 / ドロー +8 / 負け -55)。数10試合もすれば自分のチェスのレーティングが得られるのではないかと思います。

 

ビリヤードでのイロレーティングは、現在FargoRate(ファーゴレート)という形でアメリカを中心に広く使われていて、これにより広大なアメリカ国内はもちろん、他の国でも同じレーティングを使うことが出来ます。

 

…………

 

海外のビリヤード試合映像の画面でこのような数字を目にしたことがあると思います(名前の下の3ケタの数字)。これがプレイヤーのFargoRateです。D・アプルトンが「788」で、T・スタイアーが「750」
海外のビリヤード試合映像の画面でこのような数字を目にしたことがあると思います(名前の下の3ケタの数字)。これがプレイヤーのFargoRateです。D・アプルトンが「788」で、T・スタイアーが「750」

 

● FargoRateの数字が意味するものは?

 

800オーバー:ワールトトップクラス。世界でも20人ぐらい。

 

700:地域トップクラスプレイヤー。アメリカ国内で300人ぐらい。またはワールドトップレベルの女性プレイヤー

 

600:3連マス(おそらく9ボール)を何度か出したことがあるレベル。4連マスも1度か2度。14-1のハイラン50~60点

 

500:最初のラックでのマスワリ率が5%ぐらい。FargoRate登録者の中央値がこのあたり

 

400:最初のラックでのマスワリ率が1%ぐらい。リーグで1シーズン1、2回マスワリが出るレベル

 

300:マスワリしたことがあるかないかぐらいのレベル。リーグプレイヤーの平均値あたり

 

200:ビギナーレベル。8ボールでのマスワリもなし

 

100:超初心者

 

(※上記はFargoRateのWebに書かれているものですが、おそらく初期の頃に作られたもので、あくまで参考程度とした方が良いと思います)

 

レーティングごとの人数を表すヒストグラム
レーティングごとの人数を表すヒストグラム
アメリカで用いられている他のクラス分けの方法との比較。一番下の100~800がFargoRate。APAは8ボールのクラス分けが使われています。アメリカ国内でもFargoRateがあまり使われていない地域もあるようです
アメリカで用いられている他のクラス分けの方法との比較。一番下の100~800がFargoRate。APAは8ボールのクラス分けが使われています。アメリカ国内でもFargoRateがあまり使われていない地域もあるようです

 

…………

 

● レートの差が意味するものは?

 

2人のプレイヤーの間のレートの差によって、それぞれがゲームに勝つ可能性が決まります。例えば、同じレートを持つ2人、つまり「300 vs 300」、または「600 vs 600」というような場合は、試合に勝つ確率は両者等しく、2人で複数のゲームをプレーする場合、1対1の比率で勝負がつく傾向があります。

 

一方で、2人のレーティングが100ポイント離れている場合、例えば「300 vs 400」の場合は、5ゲーム対10ゲーム、または50ゲーム対100ゲームのように、ゲームの勝率は1:2に近くなります。

 

200ポイント差がある場合、ゲームの勝率は1:4

300ポイント差がある場合、ゲームの勝率は1:8

400ポイント差がある場合、ゲームの勝率は1:16

 

……と、より両者の勝率に差が出てきます。

 

FargoRateは、日々新しいデータが加わり毎日アップデートされます。あるプレイヤーのレーティングが今日「500」だったとして、その選手がその日試合をしていなくても翌日に上がったり下がったりする場合があります。これは他のプレイヤーのデータが変化したことが間接的にそのプレイヤーのレーティングに影響を与えているためです。

 

…………

 

● 利点は?

 

FargoRateを使うメリットは何でしょうか?

 

◇地元以外でもある程度フェアなハンデマッチ/トーナメントに出られる

 

地元以外の場所でハンデマッチやトーナメントに出る場合も、FargoRateを使えば、例えるならAクラスの人が別のエリアでBクラスとしてトーナメントに出るというようなことがありません。または、同じBクラスでも、レベルの高い地域のBの人が、レベルの低い地域のB級トーナメントで楽に勝つということもなくなります。

 

 

◇アップダウンが数値で表現される

 

何年も同じクラスにいると自分の上達がわかりにくいもの。FargoRateでは自分のレーティングを数値で把握できるので、アップダウンがわかりモチベーションの向上に繋がります(Aに上がったばかりで、試合に負けてばかりの人がいたとしても、FargoRateでデータを取っていれば、負けていても上達=『レートが上がる』を確認できる場合があります)

 

 

◇真剣勝負が多くなる

 

チャレンジマッチなどで、プロプレイヤーがアマチュアと試合をする時に、FargoRateにデータ登録することができれば、真剣勝負をせざるを得ない状況になると思います。プロならなおさら自分のレートを少しでも上げたいと思うでしょう。また、アマチュア同士、例えばAクラスの人とCクラスの人が試合をする場合だとしても、そのスコアがレートに影響するとなれば、レベルが上の人が手を抜くことは無いでしょう。トップアマとプロとの差がどのくらいあるのかを数値で見ることもできます。

 

…………

 

● 欠点は?

 

◇実際の腕前よりもレートが高い(または低い)人がいる。

 

これについては完璧なシステムはありえないでしょう。また、『実際の腕前』と試合でのパフォーマンスが違う可能性もありますし、誰にでも『実際の腕前』のばらつきもあるので一概には言えません。

 

 

◇計算方法がブラックボックス

 

FargoRateの基本的なレーティングスキームについてはこちらに説明があります(Facebook内。英語)。ですが、難解です。

https://www.facebook.com/notes/349271919741780/

 

 

◇費用がかかる

 

FargoRateへの登録自体はお金かかりません。しかし、当たり前ですが、タダでこれだけのものを提供することはできないので、CSIリーグの費用の一部などが運営費に回されているようです。また、LMSというリーグ運営システムを作っていて、インディペンデントリーグであっても、プレイヤーが年15ドル支払うことにより、LMSを使ってリーグデータを管理すると同時にFargoRateに登録運用できます。

 

 

◇レーティングを得るまで200ラック必要

 

FargoRateに登録すると仮レートが与えられます。そこから、すでにFargoRateを持っている人と試合を行い、200ラック後にならないと「あなたの現在のFargoRate」は算出されません。これはイロレーティングの仕組み上、仕方ないと思います。

 

…………

 

● FargoRateのYouTubeチャンネル

 

最後に、FargoRateの動画を紹介します。

 

FargoRateには、2つのYouTubeチャンネルがあります。

 

◇ FargoRateチャンネル

 

FargoBilliardsチャンネル 

 

どちらもFargoRateについて色々な角度から説明しているのですが、その中から面白かったものを2本紹介します。

 

まず、非常に興味深かったのがこの動画です。

 

 

動画内に出て来る以下のグラフに着目しました。

 

左はアマチュアプレイヤーの「パフォーマンスの変動」(調子の波)の例。調子の良い日のレートは600を超えるが悪い日は400を切る。右は「プロはこうではないか」という予想図。きっとばらつきは少ないはず?
左はアマチュアプレイヤーの「パフォーマンスの変動」(調子の波)の例。調子の良い日のレートは600を超えるが悪い日は400を切る。右は「プロはこうではないか」という予想図。きっとばらつきは少ないはず?

 

ビリヤードでよく重要だと言われているのが”Consistency”、つまり、パフォーマンスのばらつきをいかに抑えるかです。プロやトップアマを見ていると、ルーティンをしっかり行うことなどでパフォーマンスを一定にする努力をしています。

 

当然プロはアマチュアよりばらつきが少なくて、上図の右側のような状態だろうとイメージしている方が多いのではないでしょうか? しかし、実際のデータから導き出されたグラフは次のようなものです。

 

実際のプロ達の「パフォーマンスの変動」。O・ドミンゲスとS・バンボーニングの場合
実際のプロ達の「パフォーマンスの変動」。O・ドミンゲスとS・バンボーニングの場合

 

プロ達でもアマチュアとそれほど変わらない程度にパフォーマンスの変動(ばらつき)は起こっています。こういったこともFargoRateが持つ大量のデータにより可視化することができたようです。

 

ビリヤードメンタルの本、『小さな動きの楽しさ』(Pleasures of Small Motions: Mastering the Mental Game of Pocket Billiards)の中で、著者のB・ファンチャー博士も「パフォーマンスの変動は避けられない」と書いていましたが、上記を見て改めて納得しました。

 

もう1本のビデオはこちらです。↓

 

 

ここではFargoRateを持たない仮想の選手(仮名:S・バンベルチング)が、トーナメントに出場した時のレーティングの変化について説明しています。

 

動画の後半でこの仮想の選手は、トッププロ、S・バンボーニングのデータを使っていたことを明らかにしています。

 

この時点でのバンボーニングのレーティング「822」は、約15,000ゲームを元に計算されていますが、仮にレーティングを持っていない選手だったとしても、バンボーニングがこの大会で発揮したのと同じパフォーマンスを見せた場合、200ラック後にはほぼ同じレーティングになるということを、バンベルチングという仮想選手を使って説明しています。星印が試合を行っていくに従って上がっていくレーティングを示し、オレンジの横線がボーニングの「822」ラインを表しています。

 

…………

 

● 追記:独自の「ワールドトップ100」ランキングについて

 

https://fargorate.com/top-ten-lists 2021年8月15日時点のFargoRateワールドTop100ランキング。フィラーが1位。以下、S・バンボーニング、呉珈慶と続く
https://fargorate.com/top-ten-lists 2021年8月15日時点のFargoRateワールドTop100ランキング。フィラーが1位。以下、S・バンボーニング、呉珈慶と続く

 

このランキングは、300ゲーム以上、そのうち2年以内に150ゲーム(ラック)以上がFargoRateに登録されている人が対象になってるようです(※プロ選手達は自分から登録申請しなくても、FargoRateが協賛・協力する試合に出ていれば勝手に登録される可能性は高いと思います)。1日1回データのアップデートが行われるので、このランキングも細かく変動しています。

 

「2年以内」となると、コロナ禍直前までのデータだけで上の方にいる場合もありそうです(特にアジアの選手)。

 

場合によっては、大きなトーナメントでなくても地方のトーナメントで結果を出していれば、レートが上がって行く可能性はあります。基本的にはFargoRateが協賛・協力している試合が対象だと思いますが、そうでない試合のデータも取り込んでいる可能性はあると思います。FargoRate協賛・協力かどうか確認していませんが、『ユーロツアーは対象大会として登録されているようです。

 

…………

 

私自身、全体像をぼんやりと理解し始めているところなので(数学的なところはさっぱりです)、間違いがあったらご指摘下さい。日本国内でもプロ(JPBA)の公式試合だけでもFargoRateに登録してもらえれば、海外に出ていないプロも世界のどのあたりにいるかを見ることができるので面白いと思いますが、どうでしょう? 

 

(了)

 

…………

 

森さん、ありがとうございました!

 

…………

 

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