〈BD〉「伝説のキュー都市伝説」――Detective “K” season 2. episode 04

リチャード・ブラックのキュー
リチャード・ブラックのキュー

 

私はDetective K。

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

皆からは”K”、

あるいは「でっででK」と呼ばれている。

 

“Detective”は「探偵」という意味の単語だと

知らない連中が多いことに最近気付いた。

 

道理で「ヘンなこと調べてますね~。

探偵じゃあるまいし」とからかわれるわけだ。

 

ピコッ! 

 

ふむ。BDからメッセージだ。仕事の依頼だな。

 

『キューにまつわる都市伝説ってありますよね。』

 

とうきゅうでんてつ?

 

『そんなボケは不要です。

キュー、特にカスタムキューにまつわる

都市伝説を調査して欲しいのです。』

 

ウワサに過ぎない話ってヤツだな。

 

『信じるか信じないかはアナタ次第、でも構いません。

それが都市伝説ですから。』

 

わかった、オレはキュー探偵。

その依頼、引き受けたぜ。

 

*****

 

かつて紹介した

「サウスはストレートが最高?」

「ハギは長くて尖っている方が良い?」も、

いわゆる都市伝説だ。

 

だが、ネットが普及している現在、

都市伝説が生まれる余地は極めて少ない。

逆にフェイク・ニュースが

瞬時に拡散する時代でもあるな。

 

というわけで、かつて、

オレ自身が見聞きした伝説をいくつか紹介しよう。

 

*****

 

リチャード・ブラック
リチャード・ブラック

 

■リチャード・ブラック死亡説

 

時代は遥か昔、1995年。

 

知り合いから話のついで、という感じで

 

「そういえばリチャード・ブラックって

亡くなったそうですね。ご愁傷様です」

と言われた。

 

カスタムキューメーカー界の大御所が

亡くなったのであれば、一大事。

 

現存のキューは価値が上がり、

オーダー中の仕掛品は全てキャンセルだ。

 

しかし、不思議と騒ぎにはなっていない。

そこでオレはリチャード・ブラック本人に

確認すべく、電話のダイヤル回して手を止めた。

 

「本人があの世だったら、どうやって電話に出る?」

 

そう思い直して、テキサス州のキューメーカー、

ジム・バスに確認した。

 

「何を言っているんだ、K?

リチャードとは昨日、電話で話をしたばかりだぞ」

 

後日リチャードに会うと、開口一番

「私は生きているよ~」と笑顔で挨拶された。

 

どうやら、日本でキューの値上がりを目論む

誰かが広めたウワサだったらしい。

 

*****

 

ジェリー・フランクリン。1995年のキューカレンダーから抜粋
ジェリー・フランクリン。1995年のキューカレンダーから抜粋

 

■ジェリー・フランクリン生存説

 

1996年5月。サウスウェストの作者、

ジェリー・フランクリンが急逝した。

 

当時から人気の高いキューメーカーゆえ、

悲報はすぐにオレの耳にも入った。

 

そこで、親しい友人たちにその情報を伝え、

今後入手が難しくなるだろうし、

所有するサウスウェストは

大事にした方が良いとアドバイスした。

 

ところが数ヶ月後、

友人の一人から意外なことを言われた。

 

「ジェリー・フランクリンはまだ生きていて、

キュー製作も続けているそうですよ」

 

なんと、オレは

フェイク・ニュースの発信元にされていたのだ。

 

作者が亡くなったことを、どうやって証明するのだ?

 

困り果てたオレだったが、

やがて他のキューメーカーやキューディーラーから、

ジェリーを追悼するメッセージや、

亡くなった際の状況、そして、

残ったスタッフで製作を続けて行くことが

広く伝えられ、事なきを得た。

 

この噂、サウスウェストを安く買い取ろうとした

人物の仕業だろうか? 意図は不明だ。

 

*****

 

インディアンヘッドニッケル
インディアンヘッドニッケル

 

■ザンボッティのリングは5セント硬貨説

 

1988年に亡くなった、故ガス・ザンボッティ。

 

アメリカ東海岸における

カスタムキューメーカーの代表的存在であるゆえ、

その作品は高価で取り引きされ、

都市伝説には事欠かない。

 

中でも興味深いのは、飾りリングの材料として、

1910年代から30年代に鋳造された

5セント硬貨を使っている、というウワサだ。

 

そのデザインから、

「インディアンヘッドニッケル」あるいは

「バッファローニッケル」と呼ばれる硬貨で、

直径は約21.2ミリ。確かにジョイント部の

リングとして使えるサイズだ。

 

ニッケルシルバーのパイプを

薄く輪切りにする手間をかけるより、

古い硬貨を材料にした方が手っ取り早い、

というのは、いかにもありそうなストーリーだ。

 

しかし、真実はNo。

 

理由は単純で、鋳造年や鋳造所の違いで

バラツキがあり、しかも流通した古い硬貨は

摩耗したり曲がったりして、

ガス・ザンボッティが必要とした

精度を持つ素材ではなかったからだ。

 

ウワサの出所は不明だが、おそらく90年代初め、

アメリカの玉屋で誰かがテキトーなことを言って、

それが広まったのだろう。

 

*****

 

マジェスティカキュー。ワールドビリヤードマガジン1995年7月号から抜粋
マジェスティカキュー。ワールドビリヤードマガジン1995年7月号から抜粋

 

■マジェスティカのハウスキュー最強説

 

(株)三木のブランドと言えば、

『MEZZ』(メッヅ)か

『EXCEED』(エクシード)。

 

しかし、1995年、当初のブランド名は

『MAJESTICA』(マジェスティカ)

だったことを覚えているだろうか?

 

旗揚げしたばかりで、

まだ無名なブランドを広めるため、

(株)三木は様々な営業努力を行っていた。

 

その一つが、ビリヤード場への

マジェスティカロゴ入りハウスキュー供給。

 

ハウスキューに求められるのは、

安価かつ高耐久性で、

いわゆるプレイヤビリティは二の次。

メーカーの利益には貢献しない。

 

ところが、このマジェスティカは、

いわゆるノーマルシャフト装備の

キューとしては高性能という評判が広まった。

 

同時にそれはコストを度外視して

「良いメイプルを選んでいるから」、

「販売用モデルと同じ手間をかけて作っているから」

という噂も広まった。

 

何を隠そう、

「サウスは”ストレート”が最高、って何のこと?」

エピソードの時の、

 

一見客がオレのサウスと間違えたハウスキューが、

このマジェスティカだった(苦笑)。

 

しかし、当初海外向けブランド名だった

『MEZZ』に統一されたことで、

マジェスティカの名称は消え、

このハウスキューが持たされていた

認知度アップという役割も終えることとなった。

 

今や現存するキューもわずか。

当時、どれだけのコストかけて作っていたのか、

三木社長も覚えていないだろう幻の存在だ。

 

しかし、それは

「キュー好き、あるあるフレーズ集」パート1

取り上げた「EC最強」につながってゆく。

 

品質と性能重視の(株)三木ならではの伝説だな。

 

*****

 

とまあ、ネット普及以前、

古き良き時代の都市伝説を揃えてみた。

 

もし新たな都市伝説があったら、調べるぜ。

よろしくな、BD!

 

(to be continued…)

 

Detective “K”についてはこちら

 

…………
BD Official Partners :  
世界に誇るMade in Japanのキューブランド。MEZZ / EXCEED 
創造性と匠の技が光る伝統の国産キュー。ADAM JAPAN 
ビリヤードアイテムの品揃え、国内最大級。NewArt 
末永くビリヤード場とプレイヤーのそばに。ショールームMECCA 
カスタムキュー、多数取り扱い中。UK Corporation 
徹底した品質の追求。信頼できる道具をその手に。KAMUI BRAND
BAGUS 横浜西口店。2017年3月グランドオープン。BAGUS
カーボン繊維構造REVOシャフト発売中。PREDATOR JAPAN
大井直幸プロ使用OWLグローブなど販売中。OWL PRODUCTS
プレイヤーをサポートするグローブ&パウダー。TIE UP 
最寄り駅は中延(品川区)。工藤孝代プロ所属。Billiard Oops !
………… 
Cue Ball Samurai―ビリヤードサムライLINEスタンプ