〈BD〉「振りやすいことが一番大事」――西嶋大策、キューのこだわり【後編】

 

まず初めに。

 

西嶋大策プロがプロスタッフ契約を結んでいる

ADAM JAPAN(アダムジャパン)から、

先月末に新キューケース、

P24-94がリリースされました。

 

商品の特徴やヴィジュアルなど、

詳しくはショールーム MECCAのFBページにて。

 

さて、7月初旬に掲載して好評だった

「西嶋大策プロの道具のこだわり」について、

インタビューの後編をお届けします。

 

…………

 

↑西嶋プロのキュー。

プレーキュー(下)はMUSASHI

ブレイクキューはBENKEI

 

 

聞き手:BD

語り手:西嶋大策

 

 

――引き続きプレーキューについてうかがいます。

重さにこだわりはありますか?

 

「シャフトはほぼ110gにして使っています。

なんでかわからないけど、以前からずーっと

110gを理想の重さだと考えていて。

 

なので、アダムにシャフトを作ってもらう時は、

110g~115gの範囲内で作ってもらって、

そこから少し落としていく。

そうするとほぼ110gちょうどぐらいになります」

 

――そうなんですね。それは面白そう。

重さを落とすのはどうやるんですか?

 

「テーパーは、僕のデータ通りに

アダムで仕上げてもらっているので、

もちろんできる限りそこは変えずに、

 

こっち(ショールーム MECCAの工房)で

ほんの少し落としてもらってます。

 

まずニスを落とすと、

それだけで0.数グラム減ります

(※ニスというのは通称で、

ここでは「仕上げの塗装剤」の意味)。

 

それからキュー先の方から10~15cmと、

根本の方をちょっとだけ削ります。

中間はほとんど触りません。

そうすると僕好みの柔らかさが出て来るので。

 

でも、シャフトは木なので個体差があります。

同じ重さにしても、密度って言うのかな、

その違いがあるので、全く同じように

仕上げてもバランスは変わって来ます」

 

――ショールームスタッフは、

シャフトの調整と試打を繰り返している時の

西嶋プロの感覚によく驚くそうです。

「数gの違いを感じられるのがすごい」と。

 

「今はそこまで自信はないけど、

なんとなくはわかります。

 

10数年前、ショップで働いていた頃は、

重さの違いを結構な確率で感じ取れていたと思います。

シャフトを手で持ったら、

大体重さを当てられました(笑)」

 

 

――そうやってシャフトには手を掛けている

西嶋プロですが、タップは一回取り付けると

長いですよね。あれはなぜですか?

 

「それは単純な話で、

僕は古い『MOORI』(モーリ)を

愛用しているんですけど、

ストックがなくなりそうだから(笑)。

1個を1年ぐらい使ってます」

 

――そうだったんですね。古いモーリを好む理由は?

 

「純粋に食い付きが良いから。

 

ビリヤードを始めた頃は

定番の『プロフェッショナル』を使っていて、

それから『ブルー』も使ったけど、

モーリを気に入ってからは基本的にはそればかり。

たまにブルーに戻ることもありました。

 

モーリが出始めの頃は

『積層タップ』というもの自体に違和感があったけど、

少ししてから『モーリ』は良いなと思ったんです。

 

今使ってるシャフトも、家にあるシャフトも、

全て古いモーリが付いてると思います」

 

――まとめ買いしておいたのを今使ってるんですか?

 

「いや、自分で買ったものじゃなくて、

人から譲ってもらったものです。

で、そのストックがなくなりそうだから、

すぐには交換しないという(笑)」

 

 

――グリップ部についてはこだわりはありますか?

今は革巻きですが。

 

「昔は糸巻きのキューを使っていて、

今はずっと革巻きです。

革巻きの年数の方が長くなっています。

 

糸巻きも好きなんですけど、

夏場だと湿気を吸ってキューが重くなるし、

 

糸巻きのグリップで

『キューを手の中で滑らせて撞く球』を

使うこともあるんですけど、

滑らせて撞くと球質が軽くなる気がして。

 

色々と考えて、糸か革、どっちかに

固定しようと思って革にしたという感じです。

 

革の中でも色々な種類を試しています。

フィット感重視で選んでいて、

性能面はあまり気にしてません。

手に吸い付く感じが自分に合うものを

探していると言えばいいかな。

 

あとは、僕は手汗をかきますが、

かき方は時期によって違います。

手汗が少なくても多くても

同じように吸ってくれる革ならなお良いですね。

経験上、豚革はよく吸ってくれる印象です」

 

 

――キューから離れますが、

数年前からグローブを使うようになりましたよね。

なぜ使うようになったんですか?

 

「使うようになったのは2、3年前からかな。

 

その前はスピードスムーサーを使ってました。

僕はオープンブリッジの時は素手で撞きたくて。

スピードスムーサーなら、

使う・使わないの切り替えが楽でしょう。

 

その後、常にグローブをするようになったのは

3つの理由があって、

 

まず一つは、

スタンダードブリッジの『輪』が大きくなって、

スカスカになってしまったんです。

昔みたいに組めなくなっちゃった。

 

だから、指とシャフトの隙間を生地で

埋めたくてグローブを使っている(笑)。

 

もう一つは、スピードスムーサーは、

キューに付けっぱなしにしていると、

キューのデザインを隠してしまうことが

あるじゃないですか。それは良くないと思って。

 

あとは、ブリッジがラシャ上で

動いてしまうことが増えてしまったので、

それを避けたいなと思っていたということ。

 

そういうのがあって、なにかのきっかけで

グローブを使ってみたらしっくりと来て。

今はもうグローブなしじゃ撞けなくなっちゃいました」

 

――「シャフトの滑りを求めて」じゃなかったんですね。

 

「そう、滑りを求めて使い始めた訳じゃないです」

 

 

――ブレイクキューについてはいかがですか?

今は『BENKEI』ですが。

 

「ブレイクキューには全くこだわりがないですね。

基本的にアダムから提供していただいたものを

そのまま使ってます。

 

こっちでは重さも測ってないし、

シャフトの調整もしない。

タップを変えるぐらいかな。

プロになる前からブレイクキューに関しては

そんな感じです」

 

――それは意外でした。近年は

プロ公式戦も普通の9ボールだけじゃなく、

10ボールや、9オンフットの9ボールもあり、

種目に応じてブレイクキューのセッティングを

変える人もいますが、西嶋プロは変えませんか?

 

「はい、全く(笑)。

 

もちろん種目に応じたブレイクの練習はするし、

当て方とか、打ち方とか、手球コントロールは

考えてやっているけど、

ブレイクキューには全然こだわってません」

 

 

――わかりました。次が最後のテーマです。

西嶋プロはショップスタッフだった

時代もありますが、西嶋プロが考える

「キュー選びのコツ」とは?

 

「ビリヤード歴が浅くて、

初めてのマイキューを選ぶという人なら、

デザイン重視で良いと思います。

 

ある程度撞けるような人に言うなら、

バランス重視です。振った時のバランス。

僕としてはそれが一番大事」

 

――仮に試打ができなくても、

持って振ってみるだけでも良いですか?

 

「はい。ボールを撞けなくても、

ビリヤードテーブルに構えて振ることができたら、

バランスは感じ取れると思います」

 

――キューの世界でよく言う「前バランス」とか

「後ろバランス」のことですよね。

 

「そうです。

そのどちらが合うかというのはその人次第。

 

できれば、お店の人に、

極端に前バランスのキューと、

極端に後ろバランスのキューの

両方を出してもらって、

振らせてもらうのが良いと思いますよ。

 

それでどっちがしっくり来るかを見定めて、

選択肢を絞っていくと良いと思います。

 

実際、僕がショップスタッフだった頃は

そういう勧め方をしていました。

 

(※ショールーム MECCAスタッフ註:

キュー全体のバランスも極端に差が出ないよう

仕上げられているメーカーが多く、リクエストに

お応えするのは難しいかもしれません)

 

――ちなみに、西嶋プロ個人の好みのバランスは?

 

「どうだろう……。

今のキューで言うと、前と言えば前なのかな。

少なくとも後ろではないです。

 

でも、極端に後ろじゃなければ、

後ろバランスのキューでも使えます」

 

 

――シャフトのチョイスについてはどうですか?

今の時代はハイテクシャフトで

マイキューデビューをする人が増えていて、

『普通』(ノーマル)を知らない人が増えています。

 

「ああ、もうそれはそれですよ。

今はノーマルシャフト標準装備で売られている

キュー自体減ってきてますから。

 

というか、

どんなシャフトも撞き方次第じゃないですか。

 

ハイテクシャフトは、

パワーや切れをアピールしているものが多いけど、

その反面、パワーや切れが出すぎちゃって、

コントロールするのが難しい時もありますし、

基本的にパワーがあるシャフトほど

ズレやすくなりますから。

 

だから今も各社がパワーとズレのなさを両立させようと

色々なシャフトを開発しています。

 

球質で言っても、ハイテクには苦手な球もあります。

例を挙げると、多くのハイテクシャフトでは、

『割りに行きたい球』がやりにくいです。

 

また、一概にノーマルシャフトが

性能面で劣るとも言えません。

 

突っ込み方によってはハイテクより切れを出せるし、

色々な撞き方を使い分けることができるので、

様々な球種・球質を覚えることができます」

 

――今の西嶋プロは、

思った通りにコントロールするには、

ノーマルの方がやりやすいということですね。

 

「そうです。ノーマルの方が自分の意志を

反映させやすいというか、撞き分けやすいというか。

 

でも、これから初めてキューを買おうという人や、

まだまだキューの性能差を感じられない人は、

そこまでシャフトの性能は気にしなくても

良いんじゃないですか。

 

できれば実際にキューを手にして、

振りながらバランスとテーパーをチェックして、

振りやすいものを選べば良いと思います」

 

――今回のインタビューではたびたび

「振りやすさ」という言葉が出てきました。

西嶋プロが最も重視するのはそこなんですね。

 

「もう間違いなくそこ(笑)。

振りやすさが一番大事だと思う。

 

その振りやすさを決める要素が、

バランスとシャフトのテーパーです。

はっきり言えば、僕が重視するのはその2つだけ。

 

その2つは、仮に手球を撞かなくても、

構えて振ってみたらわかることでもあります。

僕はまずそこでキューを判断します」

 

――これが本当に最後の質問ですが、

今、木ではない素材のシャフトも出てきていますが、

西嶋プロは木を使い続けると思いますか?

 

「うん、僕は木のままでしょうね。

木の感触が好きだから。

これはたぶんずっと変わらないでしょう」

 

――質問は以上です。長々とありがとうございました。

 

「いえいえ、こちらこそ」

 

(了)

 

※前編はこちら

 

…………

 

Daisaku Nishijima 

JPBA37期生 

1976年1月8日生 東京都出身 

アマ時代の2003年に『ジャパンオープン』優勝 

『グランプリイースト』では優勝通算7回 

2011年『四国9ボールフェスティバル』優勝 

他、優勝入賞多数 

使用キューはMUSASHI( ADAM JAPAN

MECCA所属 

 

…………
BD Official Partners :  
世界に誇るMade in Japanのキューブランド。MEZZ / EXCEED 
創造性と匠の技が光る伝統の国産キュー。ADAM JAPAN 
ビリヤードアイテムの品揃え、国内最大級。NewArt 
末永くビリヤード場とプレイヤーのそばに。ショールームMECCA 
カスタムキュー、多数取り扱い中。UK Corporation 
徹底した品質の追求。信頼できる道具をその手に。KAMUI BRAND
BAGUS 横浜西口店。2017年3月グランドオープン。BAGUS
カーボン繊維構造REVOシャフト発売中。PREDATOR JAPAN
プレイヤーをサポートするグローブ&パウダー。TIE UP 
最寄り駅は中延(品川区)。工藤孝代プロ所属。Billiard Oops !
………… 
Cue Ball Samurai―ビリヤードサムライLINEスタンプ