〈BD〉「キュー、初見のポイントは?」――Detective “K” season 2. episode 01

 

私はDetective K。

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

皆から単に”K”、

あるいは「なんちゃらK」と呼ばれている。

 

「でぃてくてぃぶけい」と発音すると、

舌を噛みそうだからだ。

 

「美人割引あり」の看板を出しているため、

割に合わない依頼も数知れず……なんちゃってな。

 

ピコッ! 

 

ココのブログ主、BDからメッセージだ。

調査の依頼だな。

Season 2ともなれば、電話はかけてこないらしい。

 

『キューの目利きが、お初のキューを見る時の

ポイントは何か、調べてください。』

 

春先から、ざっくりとしたテーマだな。

 

『メーカーと価格と製作年度はわかっている前提で、

キューショップやエキスポなどに行き、

ブースでカスタムキューを見る。

あるいは、ネットオークションなどで

中古キューを見るシチュエーションにおいて、です。』

 

素性が割れているキューの評価、ということだな?

 

『そうです。

そこからどういう順序で、

何を見て購入を決断するのかを知りたいのです。』

 

ナニ? 購入を前提とした評価ということか?

オレはキューを買わなくとも、それをオカズに、

チャーハン2杯はイケる。

 

『チャーハンは、オカズなしに食べられます!

買いもしないキューを見て時間をつぶすヒマ人はいません。

Season 2も一話完結、さっさと調査してください。』

 

わかった、オレはキュー探偵。

引き受けるぜその依頼。

 

*****

 

キューは球を撞く道具だから、

初めての一本を買う以外は買い替えが前提だ。

 

ところが、買い替えを前提としないのが「コレクター」。

一本手に入れたら、また次が欲しくなる連中だ。

その見地から、キューを買う時のポイントを整理しよう。

 

*****

 

ポイント整理の前に、

まず大前提の「誰が作ったキュー」か。

 

同じ材料、同じデザインであっても、

メーカーが異なれば価値=価格が異なる。

 

その点、市場の評価が定まっているメーカーの

キューならば、安心。

 

日本のアダムやメッヅ、アメリカのプレデターなどの

大手メーカーはその代表。

 

逆に知名度が高いのに少量しか製作しない

カスタムキューメーカー、

ジナ・サウスウェスト・タッド・ザンボッティ・

ブラックボアなどは、その希少性ゆえ、

見る=購入を即検討だ。

 

評価が高まりつつあるディヴィニー
評価が高まりつつあるディヴィニー

 

一方で「評価が定まっていなくとも、

使ってみたいと思わせるメーカー」の

登場を願うコレクター心理も無視できない。

 

エキスポやコレクターズショーの会場で、

見慣れないキューに見慣れた顔のコレクターや

キューディーラーが群がっていたら、要チェックだ。

 

最近ではピート・トンキン、

パット・ディヴィニーなどがその例に該当する。

 

オレの独断では、エディ・コーヘンや

ジェイク・ハルゼィ、ランディ・モブリー、

日本のハク・カスタムなどは、今後要チェックだな。

 

というわけでキューのブランドは、

キュー選びの最上位に位置する要素だ。

その上でポイントを列挙してゆくぜ。

 

*****

 

ジョシュ・トレードウェイのキュー達
ジョシュ・トレードウェイのキュー達

 

まず、バットのデザインと材料。

 

どのメーカーも、顧客の予算に応じるため、

価格に幅を持たせている。

 

価格の差は、使用する銘木、ハギの数、

そして飾りリングとインレイに表れる。

一言でいえば、

製作に手間がかかるキューほど高価になるわけだ。

 

もし、そのメーカーのキューを

初めて購入するのであれば、

誰が見ても一目でメーカーを言い当てられるような

デザインを選ぶだろう。

 

ジナのレインボーや、タッドの4剣、

サウスウェストの6剣などだな。

 

すでに所有しているキューと

同じメーカーの作品を選ぶならば、

まだ所有していないデザインのモデルが欲しくなる。

 

レアなデザインに魅かれるのも、

そのメーカーのスタンダードなデザインを

知ってこそ生まれる感情だ。

 

ただし、一つのメーカーに絞った蒐集は、

大変奥が深く危険な世界。

地図の空白を埋める作業のような世界がそこにある。

ハマったら抜けられないぜ。

 

*****

 

エキスポの人気投票ノミネートキュー。 デザイン至上に見えるキュー達でも「使える道具か否か」は重要なファクター
エキスポの人気投票ノミネートキュー。 デザイン至上に見えるキュー達でも「使える道具か否か」は重要なファクター

 

次にスペック。

重さと全長、付属するシャフトの仕様だ。

 

1960年代から70年代に製作された

ヴィンテージキューでは、現在の標準的な

重さ約19オンス、長さ58インチという

スペックから離れたものが多い。

バットも概して太目だ。

 

シャフトは、他社製のシャフトに

交換することを最初から目論むのであれば、

ジョイントのネジ規格も

頭に入れておかなくてはならない。

 

特殊な規格のネジでは、

交換用シャフトを特注しなければならないからな。

 

コレクターといえども、

キューの性能や特性は気にするもの。

使いづらかったり、

使えなかったりするキューには手を出さない。

「プレーする道具」であることは絶対条件だ。

 

*****

 

エキスポのディーラーブース
エキスポのディーラーブース

 

最後にコンディション。

 

中古やデッドストックの場合は、

塗装やグリップの状態、曲がりやビビリ音などの

トラブルの有無を確認しなければならない。

 

エキスポなどのブースでは、

キューを手に取って仔細にチェックができるが、

試し撞きが出来るとは限らず、

素振りだけで撞き味をイメージできる能力が必要だ。

 

ネットオークションでは、画像や出品者への

質疑応答でコンディションを推しはかるしかない。

 

掘り出し物に当たることもあれば、

偽物をつかまされたり、

予想外の不具合に泣いたりすることもある。

 

競った挙句、わずかな差で落札できず、

悔しい思いをすることは日常茶飯事。

 

ま、ネットオークションでキューを落札すること自体が

目的になっている「勇士」もいるが、

期待外れのキューをつかまされても、

それを受け入れられるだけの寛容さと

経済的な余裕がなければやっていられないはずだ。

 

*****

 

オレの勝手な分析だが、

目利きたちは、脳内に上記の

「デザイン」「スペック」「コンディション」という

3次元の座標を持つグラフを無意識のうちに描き、

そのキューがグラフのどのあたりに位置するかを、

判断しているんだと思う。

 

手にした本数が多ければ多いほど、

その3次元の脳内グラフ上には

多くのキューが存在している。

目の前のキューをそれらと比較して、

買う・買わないを判断しているってわけだ。

 

ただ、ごくまれに、感情がその脳内グラフを

吹っ飛ばして、「欲しい!」とだけしか

思えないキューに出くわすことがある。

本当の「一目惚れ」ってやつだな。

 

それを目指してコレクターは、

今日も球屋やイベント、

インターネットをさまよっているんだ。

 

……というわけで、Season 2 スタートだ。

 

また依頼があれば調べるぜ。よろしくな、BD!

 

(to be continued…)

 

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Detective “K”についてはこちら

 

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