2016年

8月

13日

〈BD〉「ハギは長くて尖ってるほど良いってホントですか?」――Detective "K"  episode 01

 

オレの名は、K。探偵屋だ。

 

BD最初の依頼は、「ハギ」に対する調査だ。

 

長い方が良いのか? 尖っている方が良いのか?

 

ふむ、至極まともな疑問だな。

 

まず「ハギ」というのは、

「接ぐ」(はぐ)という日本語が語源。

つまり二つのものをつなぎ合わせること。

 

キューの「バット部分」を製作するとき、

十分な長さを確保するため、

二種類の木をつないだ部分を

「ハギ」と呼んでいるんだ。

 

そいつは、接合する木材に切り込みを入れて、

嚙み合わせて接着したもの。

こいつを丸く削ると

先端が鋭く尖った山型の接合面が現れる。

 

↑ Richard Chudy(リチャード・チュディ)の「スニーキーピート」(1997年作)

 

 

これが「ハギ」の正体だ。

先端が尖っていることから「剣ハギ」とも呼んでいる。

 

つまり、「ハギ」は

必要な強度さえあれば良い「構造」だった。

 

*****

 

ところが、アメリカのカスタムキューメーカーたちが、

1960年代にとんでもないことを考え付いた。

 

「二種類の木をつなぐなら、

金属のボルトでいいんじゃね?」

 

これは実に合理的な手法だった。

しかし、プレイヤーは常に保守的だ。

 

「ハギがないとキューらしくない」

 

そこでボルトでバットの前半と後半をつないでも、

ハギは残した。

 

ハギは構造上の強度を受け持つ役割を放棄し、

重量バランスを整えるという役割だけを残し

デザインの一要素に変わった。

 

*****

 

しかし、アメリカ東海岸と西海岸では、

そのやり方が違った。

 

東海岸のバラブシュカやパーマーは、

一旦組んだ剣ハギを切断し、ボルトでつなぎ直した。

 

60年代末には、

ザンボッティが最初から切断された状態のハギを組み、

ボルトでつなぐようになった。

 

どちらも糸巻や革巻きで根元を隠せば見た目は変わらない。

ニューヨークやシカゴあたりの、

保守的なプレイヤーの好みだったんだな。

 

少量生産メーカーではリチャード・ブラックや

ティム・スクラグス、ポール・モッティなどが

フォロワーとして登場し、

量産メーカーではメウチ、

更には日本のアダムがこの手法にこだわった。

 

一方、西海岸メーカーはぶっちゃけていた。

 

「見た目がハギっぽいインレイ入れても一緒じゃね?」

 

ジナキューが、ハギと同じ形に溝を彫り、

ハギで使われる銘木を

インレイとしてはめ込む手法を考えついた。

 

これはデザインに大きな自由度を与え、

ハギに使う高価な銘木の量も節約できることもあり、

いいことづくめだった。

 

ただ、インレイゆえに

ハギの先端を限りなく尖らせることは、

当時の技術では困難だった。

先端が丸いハギの誕生だ。

 

↑JOSS(ジョス)の「モデルNo.8 4剣インレイハギ」(1987年作)

 

 

この「インレイハギ」はタッドやシュレーガー等、

アメリカ西海岸のメーカーを中心に広がった。

 

陽光降り注ぎ、サンセット大通りを美女をはべらせ

ビーチボーイズをかけながらコンバーチブルで飛ばす、

お気楽極楽なカリフォルニアの連中は、うらやましい

……いや違った、伝統にこだわらなかったんだな。

 

*****

 

早い話、ハギづくりは二派に分かれたわけだ。

その後はどちらも進化し、過激化する。

 

「昔ながらの剣ハギが良い」

という一派は、剣ハギの精度や美しさに磨きをかけた。

 

ハギのルネッサンス(古典回帰)を目指した、

ボルトを使わずハギに強度を持たせたキューを作る

ハーセックやブラッククリーク、

 

剣ハギをどんどん長くして、

ジョイント部まで届くまで伸ばした

ランブロスやカポーンといったメーカーも出てきた。

 

ただ、製作時に高価で貴重な銘木を削りまくり、

手間もかかるこの手法は、今や少数派だ。

 

「自由なインレイハギが良い」

というもう一派は、ハギの本数を増やしたり、

様々な形のハギを生み出した。

 

更に進化すると、ハギがあるべき位置に大振りな、

ハギとは言い難い形のインレイを入れた、

コグノセンティなどのメーカーまで登場した。

 

工作機械の精度が上がった最近では、

エクシードのように、剣ハギと見まがうばかりの

精緻なインレイハギを持つキューも珍しくない。

 

生産効率の良さから、

80年代半ばごろから数々の量産メーカーにも

広く採用されるようになったこともあり、

今や主流となったのはこっちだ。

 

*****

 

結局のところ、

キューの強度を受け持たなくなった時点で、

 

長い・短い、尖っている・丸いは、

どうでも良くなったってわけだ。

 

それで価値が決まるわけでも、

入らない球が入るようになるほどの

違いを生み出すわけでもねえ。

 

「ハギは長ければ長いほど良い」とか

「尖っている方が本格的」、

「丸い方がカワイイ」とか言うのは……、

 

まぁ、あれだ、オトコのロマンってやつだな。

 

ただ「イカすぜ!」って思えたら、それでOKだ。

 

細かいところにこだわりすぎると、

キューコレクションの迷路にはまり込むぜ。

オレみたいにな。

 

またなんかあったら聞いてくれ。

 

報酬はスイス銀行の口座に……って嘘うそ。

ネット銀行の口座で良いでーす♪

よろしくね、BD!

 

(to be continued…)

 

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Detective "K"――ディテクティブKについてはこちら

 

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