梶原愛・第13期女流球聖位

苦闘の初防衛。キーポイントは

2022年4月

Photo : On the hill !(以下全て)
Photo : On the hill !(以下全て)

 

2020年11月に自身初となる

9ボール全国女子アマタイトル、

女流球聖位』を獲得した梶原愛。

 

それから約1年4ヶ月、

女王として初めて臨んだ防衛戦、

第13期 女流球聖位決定戦』は

6セット・10時間に及ぶ長丁場になった。

 

苦しみながらも

「崩れずに自分の球を撞いて」

守った女流球聖の称号。

 

決戦前から終了後までの心境、

そして戦いのキーポイントを

熱戦の翌日に聞いた。

 

Photo :  On the hill ! 

 

 

体力が回復するのと同時に嬉しさが湧いてきました


 

――初防衛から丸1日経ちました。

 

梶原:嬉しいです。試合直後は嬉しいのは嬉しいんですけど、とてつもない疲労感で感情が死んでいて喜ぶ体力すら残ってなかったです(苦笑)。一日経って体力が回復するのと同時に嬉しさが湧いてきました。

 

――改めてゲームボール入れた瞬間を振り返ってください。

 

梶原:今年も最後は自分で取り切らないで勝ったので、持ってると言えば持ってましたし、あっけないと言えばあっけない幕切れでした(※前回2020年の『挑戦者決定戦』は9番フロックで勝利、『球聖位決定戦』は相手9番ミス穴前残しで「OK」。今回は相手の8番インスクラッチ→手球フリーで9番を撞いた)。「まさか今年もこんな終わり方とは……」と自分でも思いました。

 

――タイトルを防衛する側での戦いを初めて経験しました。「守る戦い」は苦しかったですか?

 

梶原:やっぱり苦しかったですね。「失うものがあるというのはこういうことか」と前回との違いを感じました。昨年、『球聖戦・球聖位決定戦』(小笠原晋吾 vs 小宮鐘之介。2021年10月)を会場で見ていたんですけど、小笠原さんのプレーする姿に自分を重ねながら、「私も次はこの立場で戦うんだ。絶対苦しいだろうな」と覚悟してましたし、思った通りの苦しさでした。ただ、私はハウストーナメントなどどんな試合でも9番を撞く時とかに震えることがあるし、足もプルプルする時があるので、緊張感という意味ではいつも通りでした。終わってみれば最後まで頑張り抜けたかなと思いますし、そこは自分を褒められます。

 

――2020年11月に女流球聖になり、この防衛戦まで約1年4ヶ月。どんな心境でしたか?

 

梶原:どうでしょう……。周りからはやっぱり「女流球聖だ」と言われたり見られたりしてたので、ヘタクソな球は撞けないし、「こんなものか」と思われたくもないですし、球聖位になったからにはもっと頑張ろうと思ってやってきました。でも、私はもとからずっとモチベーションが高いままなので、タイトルを獲ったことに満足することなく、ちゃんと練習を続けてこられたと思います。

 

――今回の球聖位決定戦で心掛けていたこととは?

 

梶原:前回みたいな明確なテーマはなかったです。ただ、漠然とですけど「前より成長できた部分を出せたらいいな」とは思ってました。自分的にはそれは6割ぐらいは達成できたかな。でも、どうかなぁ……自分では上手くなってるつもりなんですけど、見ている人に伝わったどうかはわからないです。例えば、セーフティは上手くなったかなと自分では思いますけど、空クッションはダメでした。逆に、南部さんは空クッションがすごく上手くてセーフティで隠してもほぼ毎回当てられてた気がします。

 

私は私の球で最後まで戦えたかなと思います


 

――挑戦者の南部めぐみ選手とは昨年の『アマ全関東 女子級』決勝戦で対戦しています(※梶原選手が勝利)。

 

梶原:以前からハウスなどでお会いしても挨拶する程度でそんなに話をしたことはなかったんですが、今回初めて試合後にたくさん喋ることができました。気迫のこもったプレーをする方で、球のスタイルも男前ですよね。今回も「絶対勝つ」という気合いを南部選手から感じていましたし、最後まで諦めることはないだろうとわかっていました。私としては南部さんの気迫やプレーに引っ張られないようにしたいと思っていました。私は私の球で最後まで戦えたかなと思います。

 

――長丁場の戦い。勝因は?

 

梶原:苦しみましたけど、崩れずに戦えたことだと思います。

 

――具体的にプレー面で良かった点とは?

 

梶原:ブレイクスクラッチを1回もしなかったことですね。私は基本的に引きブレイクをするので結構ブレイクスクラッチャーなんですけど、今回はブレイクイリーガルはありましたけど、スクラッチはしませんでした。

 

――ブレイクでのボールの動きを見ていても再現性が高かった印象です。

 

梶原:そうかもしれません。あの引きブレイクが私にとっては一番安定しているし、配置も悪くなりづらくて、調整もしやすい。ブレイクはすごく気を付けていたところですし、まずまず良かったと思います。色気を出して配置を作りに行ったらイリーガルになりがちでしたけど。

 

――良かった点は他にもありますか?

 

梶原:前回撞いた時よりは新(さら)ラシャに対応できたかなと。いや、十分わちゃわちゃしてたんですけど(苦笑)、ほんとにちょびっとだけですけど対応力は上がったかなと思いますし、「そうそう、こういう感じだったよね」と前回を思い出しながら撞けました。それでも新ラシャはやっぱり難しかったですね。球の動きが違うから、普段通りのチョイス・撞き方ができなくてどうしても苦しい形になってしまう。今回も撞きながら「嫌い!」って思ってました(笑)。

 

――反対に反省材料は?

 

梶原:さっきも言いましたけど、空クッションが下手でした。あとは9番をたくさん飛ばしたことですね(苦笑)。特に序盤は新ラシャにビビって置きに行く撞き方になってたので、周りからも「キュー出てないよ」って言われました。第2セットからは多少良くなりましたけど、薄くなった9番をサイドに取る形は結局全部ミスしてたと思います。

 

あの4番セーフティがキーポイントだったと思います


 

――印象深いショットや場面はありますか?

 

梶原:第4セットの第9ラックです(上記動画1h27min〜)。第4セットは南部さんが序盤から先行していて、私は離されないようにするのが精一杯でした。なんとか4-4に追い付いた後の第9ラック、あの4番セーフティはすごく上手く撞けました。あれは終わった後に自分で褒めてあげたくなったショットです。あれでファウルを奪って取り切って5-4。流れを取り戻してそのまま7-4でセットを取り、セットカウント3-1に出来たのが良かったです。自分ではあのセーフティがこの戦いのキーポイントだったと思います。

 

――わかりました。今後の予定と目標は?

 

梶原:まず今週は『ナインボールクラシック・10ボールチャンピオンシップ』(4月17日)に出ます。(男子アマばかりの中で)ベスト16に残りたいです。その翌週は『関東レディースオープン』(プロ公式戦。23日&24日)。2日目(ベスト8)を撞きたいです。あと『アマナイン』(6月)は今までベスト8が最高なのでもっと上に行きたいです。プレイヤーとしては今後も変わらずどんな試合でも貪欲なスタイルで挑んで行きたいです。出る以上は優勝を目指してますし、そんな簡単に他の人に優勝させたくない。女流球聖戦もそうですけど、女子アマの大会では高い壁でいられるようにしたいです。

 

――最後に、応援してくれた方々へのメッセージを。

 

梶原:会場まで来てくれた応援団の皆さん、ライブ配信を観てくれた皆さん、『相馬』の皆さん、職場の方々、長い時間応援してくださってありがとうございました。会場に来てくれた応援団は、なかなか私が決め切れない姿を見て心臓が痛くなってたみたいですが(苦笑)、ずっと応援してくれてありがとうございました。あと、めっちゃかわいい横断幕をデザインしてくれたカナさんもありがとうございます。また来年、球聖位を防衛できるように引き続き精進して行きますので、これからも応援よろしくお願いします。

 

(了)

 

 

Ai Kajihara

生年月日:1986年10月30日

出身・在住:東京都

所属店:『ビリヤード相馬』(東京)        

使用プレーキュー: アートカンタンド(シャフトは314-3、タップはエルクマスターを締めたもの)

所属連盟:なし           

ビリヤード歴:約15年

女流球聖戦以外のアマ公式戦入賞歴:

2019年『第18回鹿児島国体県民参加プログラム大会・アマチュアビリヤード都道府県選手権大会』準優勝、

2021年『全関東ビリヤード選手権大会・女子級』優勝

 

※2020年女流球聖位初戴冠時のインタビューはこちら

 

 

※「聞いてみた!」の他のインタビューはこちら