喜島安広・第61期名人位

アベレージ23.1。5時間。横綱相撲

2022年9月

Photo : WCBS 2022
Photo : WCBS 2022

 

テーブルを挟んで運営席側から見る

喜島名人は、決定戦の間、

常に落ち着いていて、静かで良い

集中状態にあることは明らかだった。

 

早く的確な判断と高い実行力。

まるでローテーションの教材のようだった。

 

トータルアベレージは23.1。

試合時間はきっかり5時間。

 

防衛達成直後の談話取材でも、

喜島名人は穏やかに

喜びと充実感を口にしていた。

 

通算5期目の名人位在位を決めた

今年の決定戦はまさに横綱相撲だった。

 

→ レポートはこちら

 

今までの『決定戦』の中では一番自分の球を撞けた


 

――今年も防衛成功。今のお気持ちを。

 

喜島安広:ひとまず今年も『防衛』という形で終われて良かったです。そして、今までの『名人位決定戦』や『球聖位決定戦』の中では、一番自分の球が撞けたような感覚もあります。

 

――セットカウント5-0とスコア差が付きました。

 

喜島:展開が自分寄りだったということと、林選手がまだコンディションに慣れていなかった時に自分が先に取れたのが大きかったと思います。ローテーションは一つのミスだったり残り球だったりで展開が一気に変わってしまう種目ですし、今回はスコア以上にツキがあったと思います。

 

――どのラックも特に序盤はセーフティーもしっかり使って、落ち着いてゲームをコントロールしているように見受けられました。

 

喜島:ミスして自分からおかしくなるのは嫌だったので、「無理に攻めない」という方針でいましたし、それはゲームメイク的には良かったと思います。今回は自分の中で「ミスを増やさないこと。もしミスをしてもできるだけ引きずらないようにすること」を意識していましたが、その意味ではよく撞けたと思います。あとは、ブレイクは結構良かったと思います。前日練習の時に『ブラックジャック』ブレイクキューの方でブレイクしたら良い手応えがあって、それは本番でも出せたと思います(※喜島名人はプレーキューと同じくブレイクキューも2本持ち込んでいた)。

 

1日を通してずっと良い緊張感を感じながら撞けた


 

――展開的にカギになった部分はどこだったんでしょうか?

 

喜島:第3セットが大きかったですね(※喜島名人が300-154で取り、セットカウント3-0にした)。5セット先取の戦いでは、自分が取って3-0にするのと相手に取られて1-2になるのとではメンタル的にもだいぶ変わってくると思うので、あそこを取れたのは大きかったと思います。あの第3セットは林選手もランを伸ばせるタイミングがあったと思うんですけど、ブレイクノーインもありましたし、大きいランにはならなかった(ハイラン99点)。そこでこちらに撞き番が回って来たこともあって、僕的にはちょっと楽になりましたね。

 

――そして最後の第5セットは、第3ラックで2番から取り切って上がりました。上がり際の緊張感は?

 

喜島:最後だけ特別緊張感が高まったということはないです。1日を通してずっと良い緊張感を感じながら撞けたかなと思います。第1セットはやっぱり緊張はしてましたけど、少しずつちゃんと入り込めたというか集中できました。

 

――ゲームボールは12番コーナーバンクでしたね。

 

喜島:本当はどこかで12番周りのクラスターを割りに行くつもりだったんですが、10番にちょっと厚く出てしまったので考え直しました(※12番14番15番の3球がフットスポット近辺で密集。崩すなら10番を入れながら手球で当てに行く手があった)。そもそもクラスターを割りに行っても他のボールの位置的に残りの配置があまり良くならなさそうだったので、出たとこ勝負になるなと思ってました。で、よく見たら12番はコーナーバンクのラインがあって、加減すればアンドセーフになる球だったので、アンドセーフ気味に撞きました。

 

↓ 12番コーナーバンクのラインを確認する喜島名人

前日と当日は重圧でつらいです(笑)


 

――バンクが決まった瞬間は?

 

喜島:ほっとしました。『マスターズ』(9月上旬)はあんまり良くない負け方をしたので(ベスト8敗退。6度目の優勝ならず)、周りから「キューを変えたからじゃないか」って言われたりもしてて(苦笑)。あれから2週間、僕なりにかなり撞き込んで試合に臨みましたし、悪くない内容で防衛できたので、キューのせいにされることはなくなったんじゃないかなと思います(笑)。

 

――そういえば、プレーキューを変えられましたね。

 

喜島:8月から『ミステリーブラック』に変えました。まだ慣れていない部分もあるので、前の『オリビエ』も持ち込んでいて使い分けています。今回も『オリビエ』を2回ほど使いました。

 

――使い分けのポイントとは?

 

喜島:主に押し球のラインの違いですね。パワーのあるキュー(新キュー)とそんなにないキューでは押し球のラインが違ってくるんで、そこは配置によって使い分けてました。

 

――これで名人位在位通算5期目となります。

 

喜島:自分が試合をするのは、名人戦という長い戦いの中の『名人位決定戦』の1日だけなので、長期間プレッシャーを感じている訳ではないですが、それでも特に当日と前日は重圧を感じてつらいです(笑)。応援してくれている人もたくさんいるので、情けない球は見せられないなって毎回思ってます。

 

――わかりました。最後に応援してくれている方々へのメッセージをお願いします。

 

喜島:運営の方々をはじめ、『セスパ東大宮』のお客さんや『5&9』のお客さん、SPAの皆さん、そして他県からも応援しに来てくれた方も結構いらっしゃいますが、皆さんには本当に感謝しかないです。ありがとうございました。また来年防衛出来るように腕を磨いて行きますのでこれからもよろしくお願いします。

 

(了)

 


 

喜島安広 Yasuhiro Kijima

 

1983年1月7日生 埼玉県出身・在住

所属:『セスパ東大宮店』、『5&9』(ともに埼玉)、SPA

プレーキュー:ミステリーブラック、オリビエ

ビリヤード歴:約24年

現在ある「アマ個人全国タイトル」6つ全てを獲得している↓

『第55期、第58期、第59期~第61期名人位』

『第19期~第22期、第26期、第27期球聖位』

『プレ国体』(全国アマチュアビリヤード都道府県選手権大会)

『アマローテ』(全日本アマチュアポケットビリヤード選手権大会)

『アマナイン』(全日本アマチュアナインボール選手権大会)

『マスターズ』優勝5回

また、2016年、2017年、2022年『都道府県対抗』の優勝メンバー(埼玉県。SPA)

 

 

※喜島名人の過去の談話記事も多数掲載。

「聞いてみた!」の他のインタビューはこちら

 


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