〈BD〉「不正ワックス塗布問題」へのWPA声明/ワックスの効果は?【動画】

 

今日2日さきほど、

WPA(世界プールビリヤード連盟)が、

「不正ワックス塗布問題」について

短い声明を出しました。

 

具体性に乏しい文章ですので、

訳文を載せた後に経緯を説明します。

 

※本稿は長いですが

「ワックス? なんのこと?」

という方にもわかるようにまとめています。

 

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◇ WPAの声明(訳文)

→原文はこちら

 

メディアリリース

試合中のボールへのワックス塗布に関するWPA声明

 

世界プールビリヤード連盟(WPA)は、試合中に一部の選手がボールにワックスを塗布しているとの情報を把握しました。また、一部の選手の間では、この行為を禁止するルールは存在しないと考えられているという指摘もあります。

 

WPAは、この行為が不正行為にあたることを明確にし、スポーツマンらしからぬ行為を規定するWPAのルールに基づき対処されることをここに宣言します。

このような行為が認定された選手は、WPA公認大会への永久追放を含む最も重い懲戒処分が科される可能性があります。

 

この問題に対処するため、WPAは今後のトーナメントにおいてチェックポイントの追加や用具検査の強化を実施し、この種の不正行為の発見と抑止に努めます。

 

WPAは公正なプレーとスポーツの公平性の維持に引き続き尽力していきます。

 

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以下、BDが知る限りで解説します。

 

◇ そもそも新品のボールにはワックスがかかっている

 

新品のビリヤードボールには

多少なりともワックス(に類するもの)が

塗布されていて、

ピカピカツヤツヤしています。

 

その状態の手球は、

ラシャやクッションとの接触(摩擦)で

失われるスピンが少なく

(スピンが保持されやすいので)

押し引きがかかりやすかったり、

クッションや的球との接触後に

スピンが空転しやすくなります。

 

使用に伴いワックスが薄れて

「普通」の状態になっていくと、

ニューボールらしい動きは

減っていきますが、

ワックス(シリコンスプレーなど)を

再度塗布すると、

見た目もボールの挙動も

新品に近い状態に戻すことができます。

 

ビリヤード場によって、

「ワックスは全く/滅多にかけない(ボール清掃はするがワックスははがれるまま)」

ところがあったり、

「定期的にワックスを塗布する」

ところがあります。

 

公式大会で使う手球は、

大会主催者・運営者が用意するのが一般的です。

 

「試合の時だけ使うボール」として

管理されていて、

基本的に状態は良好ですが、

ニューボールかそれに近いものもあれば

それなりに使用感が出ているボールもあります。

 

少なくとも選手が自分好みの

ワックス(量・種類)を塗布した手球を

持ち込むことはできません。

 

また、大きな大会の決勝ラウンドでは

レフェリーがいることが多く、

 

選手がプレー中に手でじかに

手球に触れられるのは

ブレイクの手球位置を決める時と、

(相手ファウル後の)手球フリーの時ぐらい。

 

※レフェリーはブレイクの前と

ファウル後に手球を取り上げて

白い布グローブやタオルなどで拭いて

選手に渡します。

 

仮にワックスを塗った手球を

意図的に持ち込んだり、

試合中なんらかの方法で手球に

ワックスを付着させることができたして、

 

「普通」とは異なる手球の挙動

(※後述の動画)に、

そう仕掛けた選手自身が

対応できなければ意味がありません。

 

ビリヤードは2人で一つの手球を使う競技なので、

相手だけを一方的に惑わせる

(相手のボールコントロール力を下げる)

のはなかなかの高等スキルです。

 

そして、試合中に後付けで

ワックスを手球に塗布する方法としては、

しっかりとワックス(シリコンスプレー)を

染み込ませたビリヤードグローブや

ハンドタオルなどを事前に用意し、

ラックの合間(ブレイク前)などに

手球に触れるというやり方が

考えられるようです。

 

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◇ 今回何があった?

 

今回声を上げたのは、

先日の『9ボール世界選手権』の

ベスト32で敗れたE・カチ(アルバニア)。

 

カチは自身のSNSで、

「試合終盤、手球の挙動が明らかにおかしくなった。試合中に対戦相手がグローブまたはタオルを使い、故意に手球にワックスを塗布していたのではないかと思う。こういった不正行為の疑惑は以前からあった」(※意訳)と投稿。

 

一連の投稿は今も閲覧できます

 

もちろんカチの言い分に確たる証拠はなく、

負けた腹いせに相手に言い掛かりを

つけているようにも見えます。

 

相手選手の母国、

フィリピンのビリヤードコミュニティは、

自国選手を悪人扱いされたことに怒り心頭。

プロ・アマ・ファンが猛然と反発しています。

 

カチのコメントを切り取ったSNS投稿の

コメント欄は炎上状態に。

 

ですが、カチは投稿を撤回していません。

それどころか、思わせぶりに

フィリピン選手の「ある動き」の

動画を投稿しています。

 

それはブレイク前に手球を

クッションに押し付けるようにして

手でくるくる回す動き。

 

これは国籍や

グローブの着用・非着用問わず

様々な選手がやっている動きで、

BDも以前から見ています

 

手球に付いたチョーク痕・汚れ・

パウダーなどを払い落とすためだと

説明を受けたことがあります。

 

言われてみれば、

これをやっているフィリピン選手は

他の地域・国の選手より多い気もします。

 

でもそれは、

フィリピンのビリヤードテーブルの

多くは激しく使い込まれていて

清掃も追い付いていないので

手球に汚れが付着しやすい。

だから、「手球くるくる」をする

フィリピン選手が多く、

海外で撞く時もそれが手癖のように

なっているのだろうと認識していました。

 

ですが、カチは

「この時にグローブで手球にワックスを

付けているのではないか」

と言いたげです。

 

世界選手権が閉幕した翌日、

前年度覇者であり今年の準優勝者

F・ゴースト(アメリカ)も

「私もそういう例(不正なワックス塗布)を以前から見聞きしている」

SNSに投稿

 

個人名や大会名などは出していませんが、

疑惑そのものは以前から、トップ選手の間で

ささやかれていたことを示しています。

 

プレースタイルと同じく冷静で理性的な

ゴーストがそう投稿したことで、

ビリヤード界の世論は

真っ二つになった印象です。

 

少なくともゴーストは

今回や過去の疑わしき事例の

調査や制裁を求めてそう発信した訳ではなく、

 

疑わしい事例の存在を提起し、

統括団体や主催者に認識してもらい、

今後、疑惑が生じる余地すらないような

規制の明示と、「万が一発覚した場合の」

厳正な対応・処分を求めています。

 

……という状況のもとで

WPAが声明を出したというのが

今までの流れです。

 

WPAとしては、

これだけ論争がヒートアップしてしまったら、

そもそも事の真偽は不明で

まだ何も規制やルール作りはできていないけれど、

「事態は把握している」という姿勢を

見せざるを得なかったのだろうと思います。

 

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◇ ワックスの有り無しで手球の動きはどう変わる【動画】

 

タイミングよく今日2日さきほど、

元イギリスのトップ選手であり、

現在WNT.の解説者として活躍している

K・ボイズが、自身のYouTubeチャンネルで

こんな動画をアップしました。

 

「手球ワックス論争について」

 

この動画内の試打シーンを見てみると、

ワックスが塗布された手球と

されてない手球で、

クッションからの出方(ボール挙動)や

引き球の距離などに

わかりやすい違いがあることがわかります。

 

仮になんらかの方法で試合中に

手球にワックスを塗布することができ、

しかも、そのことを相手が

知らなかったとしたら、

相手を戸惑わせるには十分でしょう。

 

特にボールの挙動に鋭敏な

プロ~上級者であればあるほど、

おかしくなってしまうかもしれません。

 

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