プール(ポケットビリヤード)、
キャロム(スリークッションなど)、
スヌーカー、
チャイニーズプールなど、
競技・種目を問わず、
世界選手権やメジャーイベントの
公式クロス(ラシャ)として
採用されることの多い
『シモニス』(Iwan Simonis)。
シモニス社は、グループ企業の
サルク社(Saluc。アラミスボール)とともに
長くビリヤード競技界を支えている、
ベルギーが世界に誇る
ビリヤード用品メーカーです。
シモニス社は1680年に
羊毛紡績の工場として誕生。
産業革命や2度の世界大戦、
企業統合・合併など大きな変革の時代も
誠実で高品質なものづくりで乗り越え、
世界90ヶ国以上に流通する
No.1ビリヤードクロスメーカーになりました。
そんなシモニス社の、
日本、西ヨーロッパ、中東、ラテンアメリカ、
ベトナムなどを担当する
エリアマネージャーである
ジャン・フランソワ氏が今年春に来日。
シモニスクロスの製造方法とポリシー、
そして、なぜシモニスがNo.1なのか。
フランソワ氏に尋ねてみました。
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【シモニスクロスができるまで】
1:Beaming(糸を整え織機のビームに巻き取る)
2:Weaving(経糸〈たていと〉と緯糸〈よこいと〉を交差させ織り上げる)
3:Initial check(初期チェック)
4:Fulling(表面の毛羽を立たせて厚みと柔らかさを出す)
5:Dyeing(染める)
6:Wringing out(絞る)
7:Weft adjustment, Stretching Drying(糸の張り具合を調整し、乾かす)
8:Knitting(編み物のような動きで不純物を取り除く)
※女性スタッフがクロスの不純物を取り除いています。羊は一日中屋外で過ごすため、植物繊維が羊毛に付着しています。これらの繊維の一部は数段階の工程にわたって付着したままになることもあり、布を染色する段階で初めて現れます。表面を完全に平らにするために手作業で不純物を取り除かなければなりません
9:Shearing(毛羽を刈り取る)
10:Decatising(蒸気処理で縮みを防ぐ)
11:Final Check(最終チェック)
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語り手:Iwan Simonis エリアマネージャー・ジャン・フランソワ氏
聞き手:BD
――今回の来日の主な目的は?
「当社の日本の販売代理店である日勝亭とNew Artを訪問し、市場の現状とその変化を把握することが目的です。特に、近年シモニスクロスの注文が増えている一方で、アラミスボールの注文は安定している理由を知りたかったのです」
――シモニスクロスは昔から日本でも高い評価を得ていますが、シモニス社としては近年の日本市場をどのように見ていますか?
「日本のビリヤード市場は長らく安定しており、大きな変動が少ないのが特徴です。また、日本の市場は『品質の良いものにお金をかける』という傾向が強く、それは当社の製品とも非常に相性が良いと感じています」
――日本以外のアジアやアメリカではシモニスクロスはどのぐらい浸透していますか? 特に人気のある国や地域は?
「シモニスクロスは世界中に流通しており、ビリヤード業界では最も人気のあるクロスです。例えば……、
アメリカでは全ての州で非常に高いシェアを誇っています。『Simonis 860』シリーズはその知名度の高さから『シモニスグリーン』とも呼ばれるほどです。
また、中国ではヘイボール(中国式8ボール)やスヌーカーが盛んですが、それらのテーブルにはグループ会社のStrachan(ストラカン)クロスが使われています。
ベトナムは急成長中の市場で、外国企業(日本・韓国・中国など)からの投資も増えています。プールが主流となり、現在は『プール70%:キャロム30%』の比率です。キャロムでは高級なシモニスクロスと、ベトナム・韓国産などのリーズナブルなクロスが併用されています。
同じく市場が成長中のインドネシアでは、主にプールのクロスに需要があります。韓国は伝統的にキャロムが中心で、他社製のクロスが多く使用されています」
――シモニス社には大変長い歴史がありますが、クロスの作り方(織り方)は昔から変わらないのでしょうか?
「基本的には変わっていません。ウール(羊毛)は高級な天然素材であり、伝統的な製法を守ることが大切だと考えています。ただし、お客様や選手の高い品質要求にも応えるため、伝統と共に新技術の導入も進めています。日本のものづくりのように、伝統を重んじつつ革新を取り入れています」
――プール用、キャロム用、スヌーカー用など、種目によって織り方は変わるのでしょうか?
「はい。ウールにも繊維の長短があり、それによって織り方が異なります。シモニスは長繊維ウールを使用した『ウーステッドクロス』(worsted=梳毛〈そもう〉)を専門としており、これはキャロム、プール、ピラミッド(ロシアの伝統的なビリヤードゲーム)など、高速かつ正確なプレーが求められる競技に適しています。
一方、当社の英国支社であるWSP Textiles(Strachanブランド)では、短繊維ウールを用いた『ウーレンクロス』(woolen=紡毛〈ぼうもう〉)を製造しており、これはスヌーカー、中国式8ボール、イングリッシュプール向けの製品です。中でもStrachanの『6811』シリーズは、中国をはじめ世界中のスヌーカーや8ボールで最も有名なクロスです」
――シモニスクロスが世界中で高い評価を得ている理由はなんでしょうか?
「『伝統・名声・品質』が私たちのモットーです。全てのお客様に最高品質の製品を届けるため、日々努力を続けています」
――シモニスの歴史上でターニングポイントとなった出来事や、シモニスブランドを強く印象付けた商品はありますか?
「シモニスは世界で唯一、ビリヤードクロスの製造に特化した企業です。『ウーステッドクロス』の開発においてもパイオニアであり、今ではプール・キャロム・ピラミッドの分野で標準とされています。代表製品である『Simonis 300』『760』『860』は、精度・安定性・スピードにおいて最高水準を実現するために設計されました。
また、2021年の水害による工場損壊をきっかけに最新機械への投資を行い、品質をさらに向上。その成果として、新たなキャロム用標準クロス『Simonis 330』が開発されました(※従来のSimonis 300の改良版)」
――よく売れているクロスの色は何色ですか? 昔はグリーン。その後はブルー。そして、今はグレーが人気なのでしょうか。
「そうですね。かつてはグリーンが主流でしたが、次第にブルーへ移行し、現在はグレーが人気です。以前は『Simonis Tournament Blue』がよく使われていましたが、今はプール用はシャークグレー(Shark Gray)が多くなりました。キャロム用はプレステージブルー(Prestige Blue)が定番です」
――現在クロスを作るメーカーが世界的に増えていますが、競合が増えている状況をどう見ていますか?
「競争は市場にとって健全なものです。競争があることで、私たち自身も品質の維持・向上に努め続けることができます。実際、他のメーカーは自社製品をシモニスと比較することが多く、それだけシモニスが業界の基準となっていることの証でもあります」
――今後のシモニスブランドの展望や新商品の予定を教えてください。
「最近キャロム用に『Simonis 330』を新たに発売しました。これは従来のSimonis 300よりも速く、ボールの転がりや精度を保ちながら、より高い操作性を実現しています。これにとどまらず、今後も革新を求め続け、高品質な商品を出していきます」
(了)
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