〈BD〉「『ママで優勝』という形を示せたことが嬉しい」――『東海レディースグランプリ』優勝・青木知枝の談話

 

先週の『東海レディースグランプリ』で

大会初優勝を飾った

青木知枝プロの談話をお届けします。

大会翌日に話を聞きました。

 

※男子優勝の栗林達プロの談話はこちら

 

…………

 

――プロ公式戦5年ぶりの優勝です。

 

青木:ひとまず『ママになって初優勝』というのが嬉しいですね。産休・育休が明けてからは一般企業で働いているので、今の私は『会社員』で『ママ』で『ビリヤードのプロ』です。それでもこうやって優勝できることもあるので、育児や仕事をされているプレイヤーやそれを考えているプレイヤーの方々の希望に少しでもなれたのなら嬉しいです。ビリヤードを理由にママになることをためらったり、逆にビリヤードを諦めたり、様々な方がいらっしゃると思いますが、私はもともと一番の目標として、「そういった部分と上手く付き合っていく方法もありますよ!」と示せる人になりたいというのがありました。今回『やっとその形が一つできた』とホッとした感がすごくあります。

 

――出産・育児で休みを取り、そして近年はコロナもありました。試合に出られない時期、試合がない時期も常に競技に対して前向きな気持ちでしたか?

 

青木:前向きに思えている部分と思えていない部分がありました。もちろん「勝ちたい」とは思っているんですけど、実際子供ができて辞められるプロの方たちの気持ちもわかってしまうんですよ。前までなら「仕事帰りに練習しよう」と思っていたのが、「その時間で子供と過ごそう」とか。ビリヤードが嫌になったとかじゃなくて、もっとしたいことができてしまったような感覚です。でも、これはこれで楽しいと思っていて、そうやってプレイヤーの時間が減った分「もっと濃い練習を」とか考えながら取り組む方向にシフトチェンジしている感じですね。

 

――今回の東海グランプリ、内容を自己評価すると?

 

青木:2日間通して言うと、今の自分からしてみれば上出来だと思っています。ただ1回戦と決勝戦はちょっとひどくて。1回戦はリードしていたのに自分の悪い癖がどんどん出てきて追い付かれて、テンパって悪い感じになってました。で、2回戦の途中で自分の大切なルーティンを思い出して、それを心掛けるようにしたらそこからは結構良い感じで撞けましたね。

 

――話は決勝戦に飛びますが、見ている側にも緊迫感が伝わる競り合いで、互いにミスもありました。久しぶりの決勝戦ということで、意気込みが気負いになったりもしたんでしょうか?

 

青木:気負いがなかったとは言わないですけど、それで「絶対勝たなきゃ」と思ったり、変になりすぎたということはなかったです。むしろ、元廣プロとは同期決勝だったので、麗子ちゃんも私もテンション上がってました。プロ入りしてお互い予選を通れない頃から『いつか同期で決勝戦したいね』って言ってたので、『やっと実現したね、楽しもうぜ』みたいな感じではあったんですけど……。

 

――始まったら堅くなってしまった。

 

青木:そうです。1ラック目、穴前の8番から9番がめちゃくちゃ引けて、薄いけど入る球だと思って構えたのに、スキッドさせるような撞き方をしてスクラッチさせてしまって。『なんかこれ、嫌な展開の予感…』って。第3ラックのブレイクも当たりは最高だったんですけど、手球が蹴られてスクラッチ。『もつれる気配しかないな』と思いました(苦笑)。

 

――4-4まで取って取られての展開でした。

 

青木:4-5にリードされた時にタイムアウトを取って気持ちを切り替えたのは大きかったです。たくさんの方に見ていただいていることとか、終わった後のみんなの顔とかも想像しました。たしかにグダグダな内容でしたけど、結果優勝なのか準優勝なのかで応援してくれた人たちの気持ちがどれだけ違うか。そうやっていろんな角度から自分に発破をかけました。いつもならそれで堅くなりすぎる時もあるんですけど、(会場に応援に来ていた)娘からもパワーをもらって適度に緩むこともできたので今回は大丈夫でした。

 

――相手がさらに1点を取って、4-6で相手リーチ。

 

青木:タイムアウトから帰って来たものの元廣プロのマスワリ。もしそのまま2連上がりをされたら、もう『麗子ちゃん、ナイス!』って言うしかないし、心の準備もしてました。でも、もしターンが回って来たらどんなにダサくてもいいから、泥臭くがむしゃらにやろうっていうのは思ってましたね。以前『GPW-2』で優勝した北谷好宏プロが語っていた言葉を反芻していました。途中まで「この決勝戦、すごく時間かかってる。早く撞かなきゃ』みたいな気持ちも少しあったんですけど、最後の3ラックは『もうわがままになれ』と思って一球ずつ納得ずくで撞いていました。

 

――最終ラックの3番からの取り切り。自信はありましたか?

 

青木:いきなり3番が難しかったですね。ヒネらないとサイドスクラッチがある球なのに、ヒネると手前の5番に手球がかすってしまうので、ヒネらずにキュー出しで割れるようなショットをしました。その3番も含めて、あの時はあえてテーブル全体は見ないようにしました。それまできれいに取り切ろうとして失敗していたので、「一球入魂で頑張れ」って切り替えて撞きました。

 

――ゲームボールを入れた瞬間の気持ちは?

 

青木:元廣プロと思わず笑っちゃいました。お互い準決勝の内容が良くて、良い調子だなと感じていた状態からのあの決勝戦だったので(苦笑)。でも、直後に走って来た娘を抱っこした時に『ああ、優勝だ~』と。ホッとしたり嬉しかったり、いろいろな感情が入り混じってました。一晩経って、今は純粋に『勝てて良かったな』と喜ぶことができています。今まで優勝した大会では決勝戦の内容が良かったんですけど、今回は逆でした。ダメな内容でも勝てたのはビリヤード人生の中で一つの大きな経験になると思います。

 

――今後プレイヤーとしてどのような目標やテーマを?

 

青木:「これをできるようにしたい」とか「上に向かって」というよりも、「今できることをもっと研ぎ澄ませたい」と思っています。あとは試合での気持ちの切り替えをもっと上手くしたいです。例えば、『ふにゃふにゃモード』と『戦闘モード』を使い分けて、自分の番の時だけでも『戦闘モード』に切り替えて集中するとか。それと、最初にも言いましたけど、ママプレイヤー・女性プレイヤー・一般のお仕事をされている方々が頑張れる形をもっと示せるようになりたいというのは、これからもずっと一番の目標です。

 

――最後に、応援してくれた方々へのメッセージを。

 

青木:2日間ずっと見てくださり応援してくださった方々や運営の方々には本当に感謝しかありません。娘が生まれて、今までよりももっとたくさんの方々を巻き込んで達成できた優勝だと思っているので、あらゆる方々への感謝が全てです。ありがとうございました。

 

(了)

 

…………

 

青木知枝 Chie Aoki

1984年1月29日生

JPBA44期生

愛媛県出身・埼玉県在住

2016年『全日本女子プロツアー第3戦 in 富山リボルバー』優勝

2017年『北陸オープン』優勝

2022年『東海レディースグランプリ』優勝

他、入賞多数あり

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