私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
前編からだいぶ間が空いてしまったが、
「キュー尻フェチ」後編だ。
キュー尻の形態は、
メーカーによりさまざま。
プレイヤーやコレクターの嗜好も十人十色。
前編では、スタンダードなキュー尻や、
ポピュラーなキュー尻を紹介した。
後編では、個性派キュー尻や
レアキュー尻を紹介したい。
一部のファンのみに刺さる、
クセの強いスタイルばかりだぜ。
心が動いたBD読者は、
キュー尻フェチであると思ってほしい(笑)。
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◆ショートキャップ
前編で記したようにサウスウェストが
生み出した0.4インチ(約1cm)の
ショートバットエンドキャップは、
バットスリーブ部分における
デザイン領域の拡張をもたらした。
スペースが広ければ、その分
デザインの自由度も上がるからだ。
そこで生み出されたデザインが、
グリップ部を挟んで向き合うように
同じデザインを入れる、上下対称パターン。
バット上部のジョイントから
グリップ部までに入れられたハギを、
短縮してバット下部に入れる手法。
一つのデザインパターンを作って、
グリップの上下に入れれば
キュー全体のデザインが決まる。
その手法で多くのメーカーに
デザインを提供したのが、
ティム・リークという名のデザイナー。
彼は、1990年代から2010年代に
かけてのトレンドセッターとなり、
「メーカーは異なるがテイストは似ている」
キューが多数出現したのだ。
画像のキース・ジョーシィもそのひとつ。
この個体はオレが細かく指定して
オーダーしたものだが、
インレイのデザインは
ティム・リークの手によるものだ。
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◆キャップレス
「ショートキャップ」がトレンド、
つまり「短い程良い」とされるように
なったら、ファッション同様、
エスカレートするもの。
ではいっそのこと、
バットエンドキャップを無くしたら、
最高にセクシーではないか?
そこで作られたのが「ノーキャップ」。
構造的には、アメリカの玉屋で使われる
ハウスキューや、それに似せた
「スニーキー・ピート」と同じなのだが、
高価なカスタムキューとなると
ハナシは別だ。
画像のボブ・マンジーノは、
アンボニア・バール材の杢目を
全面的に露出させるため、
あえてバットキャップレスにしたもの。
芯材にはグリップ部から延びる
メイプルが通っており、そこに押し込み型
ラバーバンパーが取り付けられている。
しかし美しさと引き換えに、
床に立てかけるのも、
プレー中隣のテーブルとの間隔にも、
注意しなければならない。
「キャップレス」は、
「ぶつけたらヤバイ」という気持ちが
起きるところに価値があるのだ。
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◆ファンシー・バンパーレス
バット後端にラバーバンパーがなく、
黒のショートキャップ、その上に
白の飾りリングを入れたスタイルは、
「ホッペ・スタイル」と呼ばれる。
これはアメリカの名プレイヤー、
「ウィリー・ホッペ」(Willie Hoppe)の
名前を冠したブランズウィック社の
キューに由来する。
ラバーバンパーなしでは、
色々と不都合が生じるため、
この様式を手がけるのは、
今や利便性やメンテナンスを無視しても
許される少量生産メーカーに限られる。
スティーヴン・クレインの
ホッペ・スタイルは、
本来ウェイトボルトが露出すべき
後端部の中心に白いプレートをはめ込み、
ウェイトボルトを封印しているのが特徴。
しかもそのプレートに作者のサインを入れる
ファンシーさがコレクターの心をくすぐる。
プレー中の後ろ姿は、
ラバーバンパーがないキュー尻は、
たまらなくセクシー。
また、手玉を撞いた振動が
ストレートにキュー尻から抜けてくるため、
打音が心地よいのも特徴。
ただし、キューを立てかけられないため、
相手のプレー中は足の上に
キュー尻を乗せて待たなければ
ならないのが欠点といえば欠点だ。
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◆ロゴ・バンパー
プレイヤーの後ろ姿とともに、
最も目立つのがキュー尻であれば、
ラバーバンパーにキューメーカーの
ロゴを入れれば、最高のアピールとなる。
いわば尻が目立つバックプリントだな。
森高千里の『17才』PVにおける
”M” のような手法(笑)だ。
ラバーバンパーは
基本黒色や茶色などの単色で、
キース・カスタムの”K”マークや、
サムサラの”S”ロゴなどが
見られるようになった1990年代末までは、
あまり目立たなかった。
2000年代に入ると、
それがマルチカラーのバンパーに進化。
素材はラバーではなくPVC樹脂製なのだが、
複数色が使えることで、
遠目で見てもロゴがはっきりと
分かるようなデザインになった。
画像のポイズンもその例だが、
量産メーカーのブランドであるがゆえに、
製作コストがかかっても、
一個当たりの単価は安くなるので
実現したデザインだ。
最近はブレイクキューを除けば、
あまり見かけなくなった。
それは、後に述べるエクステンション装着が
トレンドとなったためだ。
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◆スモールバンパー
「ホッペ」スタイルのバットエンドは、
1.5インチのスタンダードなタイプが
広まる前、つまり1920年代から
1950年代頃のキューを想起させる。
そのクラシックな雰囲気は、
根強いファンがいるが、
先ほど述べた通りキューを
立てかけて置けないデメリットがある。
それを解決するため、
ガス・ザンボッティが
1970年代に生み出したアイディアが、
スモールバンパー。
通常よりサイズが小さな
ラバーバンパーを取り付けたのだ。
スモールバンパーは、
「ホッペ」の外観を損なわず、
かつキュー尻の保護にも役立つ
ナイスアイディア。
オレはこれを
「ホッペにホクロ」と呼んでいる。
ガス・ザンボッティは、
デザインの調和を図るとともに、
プレイヤーに余計な気を使わせず、
壊れたり傷ついたりしないので
リペアも必要ないという、
メーカーとプレイヤーの
Win-Winな関係を構築していたのだ。
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◆エクステンション
最近はやりのキューエクステンション。
2インチ程度の常時装着タイプから、
10インチ程度まで伸ばせる伸縮タイプまで、
各メーカーから発売されている。
キュー尻のラバーバンパーに
思わせぶりな穴が開いていて、
プレー中にエクステンションを
挿入してねじ込む。
その行為といい、着脱時の間合いといい、
とてもそそられる感じだ。
さて、キューメーカーでありながら、
パーツも市販するプレーサー社が
カスタムメーカーに供給しているのが、
汎用のエクステンション装着キット。
ラバーバンパーと一体化した雌ネジ側を、
ねじ込みタイプのラバーバンパーと交換すれば、
キュー側は無改造でエクステンションが
取り付けられるようになる。
少量生産メーカーにとっては、
ありがたいパーツだ。
もっともエクステンション自体は
各キューメーカーが製作しなければならないがな。
画像のトレードウェイは、
オレが作者のジョシュ・トレードウェイに
「エクステンションが欲しいんだが」と
尋ねたら、
「それだったらキューはどうだ?」と
逆セールスされて、
まんまと買わされたもの(笑)。
もちろんエクステンションもこのキュー用に、
余計に一個追加で買うことになった。
全くビジネスがうまくなったものだぜ、
ジョシュ(笑)。
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機能面・デザイン面とも
プレイヤーの嗜好が強く表れるキュー尻。
プレーの合間に眺めるのも、
あえて強く握りしめるのもよし。
オーナーの個性やビリヤードに対する
思い入れを表現するパーツとして、
意識してみて欲しいぜ。
またの依頼を待っているぜ、BD!
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