〈BD〉2022年10ボール世界チャンピオン、ヴォイチェフ・シェブチック独占インタビュー

 

4月にラスベガスで行われた

10ボール世界選手権』で優勝。

 

初めてワールドタイトルを手にした

ヴォイチェフ・シェブチック

(Wojciech Szewczyk。27歳)。

 

現代のビリヤード強国・ポーランドを

代表する選手です。

 

大会を通してシェブチックのプレーは

ソリッドで完成度が高く、常に冷静。

 

優勝を決めて観客と相手に

深々と頭を下げた姿には

競技と大会への敬意が満ち溢れていました。

 

そんな新世界王者・シェブチックの

右手に握られていたのは

日本のMEZZキューです。

MEZZ契約プロになったのは

2021年1月とまだ日が浅いですが、

何年も慣れ親しんだもののように

自在に操っていました。

 

そこで今回、MEZZを通して

シェブチックにメールインタビューを

打診したところ、驚くほど

早く真摯に対応してくれました。

早速その回答をお届けします。

 

…………

 

ヴォイチェフ・シェブチック

(Wojciech Szewczyk)

生年月日:1994年9月1日

国籍:ポーランド

在住:ワルシャワ

使用キュー:MEZZ

プレーキュー:ACE-183。シャフトはIGNITE 12.2

ブレイクキュー:PBGG-H

ジャンプキュー:AD2-K

キューケース:MZ-35T

主な戦績:『ジュニア欧州選手権』優勝2回(2010年&2011年)、

『10ボール世界選手権』優勝(2022年)

『ユーロツアー』では準優勝が最高位

 

…………

 

 

語り手:ヴォイチェフ・シェブチック

聞き手:BD

コーディネート&翻訳協力:MEZZ

 

 

――10ボール世界選手権、優勝おめでとうございます。タイトルを手にしてから約2週間が経ちました。「世界チャンピオン」の気分はいかがですか?

 

W.S.:ありがとうございます! 信じられないぐらいいい気分で、今も全く飽きません。ビリヤードというスポーツは私の人生の大きな部分を占めていて、世界チャンピオンになることは常に究極の目標であり、夢でした。世界一に輝いた記憶と実績は、大きなことを成し遂げたという誇らしい感情とともに生涯を通じていつでも振り返られるようなものになると思います。私はいつも努力し続けていることを誇りに思っていました。それが今回の世界選手権優勝という形で実り、とても報われた気持ちです。

 

――ゲームボールを決めた場面はとてもエモーショナルでした。あの瞬間どんな感情が湧いてきたのでしょうか?

 

W.S.:あの一瞬はまさに感情が爆発しました。ああいう激しい決勝戦では、最後の1球がポトリと落ちるまで勝利を確信することはできません。いろんな気持ちが入り混じっていましたね。喜び、不信感、力強さ、深い感動……そして大会の数日間張り詰めていた緊張が解き放たれました。それから、決勝戦を見ていた観客からの拍手喝采と熱のこもった応援にとても感動し、誇りと感謝の気持ちが押し寄せました。また、クリストファー・テベス(ペルー)も素晴らしい対戦相手でした。テベスはすぐに満面の笑みと拍手で私を祝福してくれました。彼は偉大なスポーツマンです。

 

――優勝できた理由はなんだと思いますか? 今回は何が良かったのでしょうか?

 

W.S.:今回は本当に調子が良く、運にも恵まれました。しかし、運勢はこういった大規模な大会で勝つためには常に必要なことです。また、準備も万全だったのでこの幸運を活かすことができたと思います。私は最高のプレイヤーになるために懸命に努力していますし、自分の進歩を確信しています。また、何があろうとも忍耐強く冷静でいることを心掛けていました。メンタルコーチのアンカ・ヴォズニアックの素晴らしいサポートにより、私のプレー面での良い資質がさらに強化されました。彼女の協力を得られたことはとても幸運でした。 

 

――あなたのプレーはとてもソリッドで、メンタルも波がなく落ち着いているように見えます。そのスタイルはどうやって確立されたのですか?

 

W.S.:まだ毎回できてはいませんが、あなたの言う通り、できるだけ冷静になるように心掛けています。それが私の性格に合っているのだと思います。ある状況下では、テーブルの周りを速く走り回り、ダイナミックにプレーする時もありますが、それはその時々のベストな状態に合わせるようにしているだけです。「冷静でいる」というのは、怒りなどのネガティブな感情を表に出さないということです。それはまさに私のなりたいプレイヤー像なので、意識的に取り組んでいます。

 

――普段ポーランドにいる時は、どこでどんな練習をしているのですか?

 

W.S.:ワルシャワという大都市に住んでいるにも関わらず、私のいる地域にはフルタイムのプロが誰もいないので、大会と大会の合間の期間で実戦形式のスパーリングを十分にすることができないのが今の課題です。普段ほとんど一人で練習していますが、自分で開発したトレーニングプログラムを使って、プール(ポケットビリヤード)の全ての領域を体系的にカバーするようにしています。テーブルから離れた時には、健康で長く活躍できるようにするためのフィジカルトレーニングと、自分の考えを構築するメンタルトレーニングもやっています。それによってビリヤードだけでなく日常生活もよりバランスよくコントロールできるようになりました。さらに、賢く休息をとることも重要です。

 

――今ポーランドからはあなたを始めとしてたくさんの優れた若い選手が国際イベントで活躍しています。なぜポーランドは強いのですか?

 

W.S.:私達は常に成長しているのだと思います。その成長スピードが早いのかどうかはわかりませんが、私たちはすでに何年も遠征に行っていますし、今もそれが続いていて、その結果世界のどんな大会でも勝てるようになりました。また、ポーランド選手同士お互いに支え合うことも多くなったと思いますし、友情を築き、こうして共に前進出来ていると思います。グループであればより多くのことを成し遂げられるのは普遍的な事だと思います。

 

 

――あなたのキューについても聞かせてください。いつどこでMEZZキューと出会いましたか?

 

W.S.:MEZZを知ったのはだいぶ前のことです。多くの友人が私より先にMEZZキューを使っていました。私はMEZZについての良い評価がいつも気になっていました。当時私は何年間も友人のカスタムキューを使っていましたが、色々な場所で様々なキューで試打をすることがありました。MEZZを試すたびに、品質が一流であること、そして私のお気に入りのキューになることを容易に理解することができたのです。なので、1年以上前(2021年1月)に契約プレイヤーになった時、新しいキューに慣れるのにそれほど時間はかかりませんでした。

 

――今あなたは『ACE-183』(エース183)のバットに『IGINITE 12.2』(イグナイト)シャフトを付けています。10ボール世界選手権でも力になってくれましたか?

 

W.S.:まさに。私は背が高くてほんの少し長いキューがしっくりくるので、プレーキューには『2インチエクステンダー』(EXCEED)を付けています。ACEシリーズ、特に183モデルは、シンプルでありながらどこか変わったデザインでとても気に入っています。イグナイトシャフトとの相性も抜群ですし、イグナイトシャフトは直感ですぐこれにしようと思いました。初日からこのシャフトが気に入ったのですが、撞く頻度の少ない特殊なショットではちょっとした撞き方の調整が必要なことも認識していました。同時に、このセッティングで私が忍耐強く練習し続ければ、長期的に見て私のパフォーマンスが向上するとわかっていましたし、実際そうなりました。もちろんミスをした時は、キューのせいではなく、自分のせいだということもわかっています(笑)。

 

――あなたが思うMEZZキューの特徴や、MEZZというブランドの印象は?

 

W.S.:細部へのこだわりがすごいと思います。じっくり見ると、MEZZのキューはとにかくよくできています。プレイヤーは質の高い打球感と正確なレスポンスを得ることができ、他に余計なものを感じることはありません。また、商品のアップグレードのたびに、発売までにどれだけの時間と注意が払われているかもわかります。それは情熱に突き動かされた終わりなき探求のようなもので、スポーツ選手の姿勢にとてもよく似ています。もちろんMEZZも企業ですし、ビジネスです。しかし、MEZZのビジネスには何よりも優先される価値観があります。私はその中でも「使う人へのリスペクト」が最も重要なのだと考えています。

 

――日本に来たことはありますか? 日本という国や文化についての印象は?

 

W.S.:残念ながらまだですが、早く訪れたいですね! 今のところ日本については、幸運にも日本に滞在したことのある友人たちの話からでしか知りません。学校では日本文化について何度も学びました。それはとても魅力的で、多くの分野で手本となるものです。何世紀にもわたって受け継がれてきた労働倫理、技術の発展、さっきも述べた他者へのリスペクトなど、日本について考える時、そんな事柄が頭に浮かんできます。そしてもちろん、豊かな歴史やこれまでインターネットでしか見たことがないような素晴らしい場所にも惹かれます。また、日本料理も好きですが、私が味わったその料理が本当に伝統的な方法で作られたものかどうかはわかりません(笑)。今「どこの国に行きたいか」と問われたら、一つは日本、もう一つはニュージーランドです。

 

――プレイヤーとしての今後の目標とは?

 

W.S.:もっともっと良くなっていきたい。自分のキャリアをプロフェッショナルなものにして、まだ成長できる分野でもっと頑張り、新しい挑戦を探すことです! この2年間で何歩か前進したとは思うのですが、まだまだ改善できることがたくさんあります。具体的な目標を言うなら、『ユーロツアー』で初優勝したいですね。ユーロツアーにはジュニア時代から何年も挑戦しているので、勝つことに大きな意味があると思います。もちろんさらに重要なのは、今回の『10ボール世界選手権』のようなビッグトーナメントでもっと勝ち進んで行くことです。

 

――最後に日本のプールファンやMEZZキューユーザーにメッセージをお願いします。

 

W.S.:私はただ、皆さんがこのプール(ポケットビリヤード)というゲームからたくさんの情熱と楽しみを得られることを祈るだけです。プールには、結果そのものだけでなく、それ以上の達成感を与えてくれるものがあると信じています。皆さんもくじけずに(don’t scratch!)それを探求し続けて下さい!

 

(了)

 

2015年9ボール世界選手権(シェブチックは5位タイ。カタール開催)。BD撮影↓

 

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