〈BD〉「キュー保管にまつわる問題エトセトラ」――Detective “K” season6 episode 10

 

私の名はDetective K。

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

2021年6月。

 

日本列島の大半が梅雨入りしたが

コロナ禍はなかなか収まらない。

 

オレもそれなりの歳だが、

ワクチン接種はまだまだ先だ。

 

オリンピックが開催される状況でも、

イベントの開催制限はなお続くだろう。

ビリヤード場の営業や公式戦は、

どうなるのだろうか?

 

ピコピコピコ!

 

おお、BDからの連絡だ。

飲み会も減って、ヤツの顔も忘れそうだな。

 

『K、久しぶりです。

最近はYoutubeで活動しているとか?』

 

まぁ、ボランティアのようなものだ。

 

『見ましたが、ノリノリでしたよ。』

 

……余計なお世話だ(照笑)。

で、仕事の依頼か?

 

『そうです。梅雨時の高温多湿は、

キューにとって大敵。何もケアしなければ、

さまざまな問題が生じます。』

 

確かにな。コレクターともなれば、

本数が多くなるからなおさらだ。

 

『そこで、キューの保管方法や

ケア方法について調べてください。』

 

天然素材が主な材料のキューだからな。

長持ちさせるには手間が必要だぜ。

 

よしわかった。

おれはキュー探偵。

健康な限り、受けた依頼は全うするぜ!

 

******

 

木材、金属、プラスチック、革、ゴムなどを

組み合わせて製作されるキュー。

 

キューの本場アメリカでは、

一部を除いて空気が乾燥した地域が多く、

大半のプレイヤーやキューメーカーからすれば、

日本の高温多湿な気候は想像しづらいものだ。

 

逆もまた真で、1960年代に

日本からアメリカに輸出されたキューは、

木材が乾燥で収縮して曲がったり、

糸巻がほどけたりしたこともあったという。

 

キューは環境の変化で「動く」道具なのだ。

 

******

 

四季がはっきりしている日本において、

キューのコンディション維持には気を遣うもの。

 

特に6月から9月の雨が多い時期、

12月から2月の空気が乾燥する時期は要注意。

 

エアコンのそばや、

自動車内に置いておくことは厳禁だ。

 

主なトラブルについて、

オレの経験も交えて説明しよう。

 

 

【Case 1:カビ】

 

高温多湿でまず気を付けなければ

ならないのが、カビ。

 

キューをケースにしまいっぱなしにしていると、

水分の逃げ場がなくカビや雑菌が発生する。

 

特にアイリッシュリネン巻のグリップは、

ワックスや洗濯ノリのコーティングが

薄くなると、水分を含みやすくなる。

 

手汗や皮脂と相まって、

雑巾のようなニオイがすると最悪だ。

 

また、キューケースのインナーが分厚いと、

それ自体が水分を含み、

収納したシャフトにカビが発生する。

 

天然皮革や布のキューケース自体も、

汚れや水分を落としておかないと

カビが発生する。

 

対策としては、キューもケースも、

湿度が高く空気の循環が悪いところに

長期間置きっぱなしにしないこと。

 

ケースの中には乾燥剤を入れておく、

発生したカビは無水エタノールなどで

除去することだ。

 

カビによる変色が見られるシャフト画像
カビによる変色が見られるシャフト画像

 

【Case 2:ゴムの加水分解】

 

長らく使っていなかった

キューに見られるのが、

キュー尻のゴム、いわゆる「尻ゴム」が

ベタつく「加水分解」という現象。

 

時にはキューケース内部の内装材と

癒着してしまうことすらある。

 

オレ自身、数年ぶりにケースを開けると、

ゴムが糸を引いてケースの蓋に

くっついていた状況を経験したことがある。

これはなかなか衝撃的な光景だったな。

 

対策としては、湿度を避けることや

無水エタノールでベタつきをふき取る、

究極は尻ゴムを交換することだ。

 

 

【Case 3:塗装の軟化・割れ】

 

キューメーカーは、

バット部分の仕上げと保護のため、

透明な塗料で仕上げている。

 

最近では、製作時間の短縮化や、

より丈夫な塗装膜を形成するため、

紫外線を当てたり、2種類の液体を

混合したりすることで、化学反応を起こし

硬化するタイプの塗料も使われている。

 

カスタムキューによっては、

伝統的に溶剤に樹脂を混ぜた

「ラッカー」を使い続けていることも多い。

 

この塗料は、硬くなりすぎず

木材の振動を妨げない、手触りが柔らかく、

ある種の温かみを感じるという点で

優れているのだが、熱にはあまり強くない。

 

そのため、夏場の自動車内に放置すると、

塗装膜に収納したケース内部の跡が

付いてしまうことがある。

 

また、冬場は急に暖かい室内にキューを

持ち込むと、急激な温度変化により

塗装膜に「ヒビ」が入ることもある。

 

玉を撞く道具としては

大きな影響ではないのだが、

見た目が悪くなると同時に、

高価なカスタムキューの場合は、

価値を減ずることになるので注意が必要だ。

 

表面がひび割れたラッカー塗装
表面がひび割れたラッカー塗装

 

【Case 4:金属の膨張・酸化】

 

実は木材だけでなく、飾りリングや、

ジョイントピンやジョイントカラーなどの

金属パーツも、温度により変化する。

 

かつてオレは、

密閉され内部に照明器具がある

ショーケースの中で展示されていた

キューの金属製リングが膨張していた

ものを見たことがある(または木材が

収縮したためそのように見えた)。

 

ジョイントに使われる真鍮が酸化し、

変色しているのは良く見られるが、

錆取剤などを使って磨けば元の輝きが戻る。

 

また、表面に塗装が載っていても、

飾りリングが酸化し変色することがある。

 

この場合は、塗装を一旦はがして磨き、

再塗装する「リフィニッシュ」が必要。

プロのリペアマンに任せる範囲の作業だ。

 

ニッケルシルバーに含まれる銅が酸化したリング画像。ココボロのキューは塗装のひび割れもある

 

 

******

 

以上見てきたように、

キューはデリケートなもの。

 

温度を摂氏21度~24度・

湿度を55%にキープする保管室を設けた

アメリカのコレクターもいるぐらいだ。

 

しかし保管方法は決して難しい条件ではなく、

急激な変化は避け、かつ人間が心地よいと

思える程度の環境であれば、ほぼ問題はない。

 

そして、トラブルを避ける最も良い方法は、

そのキューをプレーに使うことだ。

 

普段から手にしていれば、

わずかなトラブルの兆候もすぐ気付く。

 

キューを多数保有するコレクターにとっては

大変な作業かもしれないが、

一本一本のキューと対話する良い機会だと

考えて、プレーに使用することが、

キューのコンディションを長く保つ秘訣だぜ。

 

また依頼を待っているぜ、BD!

 

…………

 

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