〈BD〉「色っぽいキューの話【Part 2】~バット多色時代~」――Detective “K” season6 episode 08

 

【Part 1】(3月4日掲載)から続く~

 

 

私の名はDetective K。

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

2021年、

緊急事態宣言は解除されるも

まん延防止等重点措置適用地域が

宣言される今日このごろ。

 

ギャグや下ネタを連発して

喜んでいる場合ではない。

 

収束の兆候が全く見えないなか、

ビリヤード界が日常を取り戻すのは

いつになるだろうか。

 

さて、今回はキューに関する

『色の話パート2』だ

 

(※パート 1はこちら)。

 

BDからの原稿の催促は再三あったが、

色の話は幅広い。

手間暇かかるテーマなんだぜ(笑)。

 

前回、業界標準となっていた

ブランズウィック社の

「タイトリスト」ハギとの

差別化を図るために、

様々な色合いのハギが生まれた

1960年代~80年代について述べた。

 

その後、20世紀末の

2000年頃までに、キューの色が

どのように変化したかを述べたい。

 

俺はキュー探偵。

受けた依頼は、完遂するぜ!

 

******

 

キューのデザインや色合いに

バリエーションをもたらしたもの。

 

それは

「キュー構造としての役割を放棄した『ハギ』」

という背景がある。

 

Detective "K"  episode 01

(2016年8月)で述べた通り、

 

木材同士を「接ぐ」(はぐ)、

つまり接合するために必要だったハギが、

製作技法の変化により不要になったためだ。

 

代わって登場したのが、

金属ネジを使った接合方法。

 

現代カスタムキューは、

構造的な制約から解き放たれたことで

始まった、と言っても良い。

 

構造的な制約がなければ、

キュー製作に用いる素材の自由度も増す。

 

「ハギがあった方がキューっぽく見える」

と思うなら、インレイ技法で

ハギっぽいカタチを表現すれば良い。

 

その結果、ハギにおける

色彩や形状の変化が生まれたというわけだ。

 

******

 

ハギの多様化が進んだ1980年代。

 

美しさや見た目、そして高級感を

競うための主要な手段となったハギは、

 

伝統的な様式美を持つ『剣ハギ』と、

自由かつ斬新なデザインを追求する

『インレイハギ』へと分化する。

 

そして、それまで使われてきた

黒檀やローズウッド、メイプル以外に、

様々な銘木を用いて、

自然の色合いや木目を生かしつつ

ユニークさを競うようになった。

 

この時代、様々な銘木を使用した

代表的キューメーカーが、

サウスウェスト/カーセンブロック。

 

サウスウェスト/カーセンブロックのキュー
サウスウェスト/カーセンブロックのキュー

 

パープルハート、

パーフェロー、

ゴンカロ・アルブス、

縞黒檀、

チューリップウッドなど、

 

キューにはあまり使われてこなかった

銘木を組み合わせたのだ。

 

伝統的なバット本体=メイプル、

伝統的なハギ=黒檀またはローズウッド

 

という組み合わせには収まらない

銘木の色合いは新鮮そのもの。

 

しかも長短6剣ハギという

シンプルなデザインで、

異なる銘木のコントラストを

際立たせたアイディアは画期的だった。

 

後で述べる「コア」構造に頼ることなく、

撞いた際の感触や重さ、バランスを

最適化して優れた特性を生み出し、

 

「バラブシュカを差し置いて

プレイヤーが唯一手にするキュー」

とまで言われるほど、高い評価を得た。

 

1980年代末以降、

登場した新興メーカーの多くが、

サウスウェスト/カーセンブロックの

影響を受け、メイプル以外の銘木を

用いるようになる。

 

キューを彩る役割を、ハギのベニヤだけが

担っていた時代の終わりだ。

 

******

 

スポルテッドウッド(左)、バールウッド(左2、左3)、スネークウッド(右2)、ピンクアイボリー(右)の使用例
スポルテッドウッド(左)、バールウッド(左2、左3)、スネークウッド(右2)、ピンクアイボリー(右)の使用例

 

1990年代は、キュー製作に

用いられる素材が一気に多様化した

「黄金時代」と言っても良い。

 

銘木は、

高価なスネークウッドや

ピンクアイボリー、

更には強度や比重の点でキューには

不適当とされていたバールウッド

(様々な木の根元近くにできる瘤部分)

までもが使用され、

素材の珍しさを競った。

 

これには

新たな製作技法の登場という背景がある。

 

コア構造の黒檀バット(右)と無垢の黒檀バット(左)
コア構造の黒檀バット(右)と無垢の黒檀バット(左)

 

バット製作に用いる銘木を筒状にくり抜き、

メイプル材等の芯を差し込んで

接着することで、

 

どのような木材を使っても、

重さや強度を一定の範囲に保つ

「コア」構造だ。

 

これにより、

素材によるキューの撞き味や重量への

影響を軽減できるようになった。

 

これで特に多用されるようになったのが、

撞き味が硬く、かつ重いキューになりがちで、

難しい素材とされていた「黒檀」。

 

漆黒のバットは、

ハギやインレイの輪郭がはっきりするため、

 

ターコイズやマラカイトなどの

石(大半は人造石だが)や、

スターリングシルバーや

18金などの貴金属は相性が良く、

 

それらは黒檀バットのキューに

インレイ材として多用されるようになった。

 

******

 

黒檀バットのキュー達
黒檀バットのキュー達

 

2000年代に入ると、黒檀バットは

高級カスタムキューにおける定番となる。

 

ローズウッドやココボロ、

ボコテやチューリップウッドなど

個性の強い銘木を使ったキューは、

 

漆黒ゆえ表情のない黒檀バットを

好まない層に対する選択肢だな。

 

相対的に、

撞き味という点においても

スタンダードだったバーズアイメイプルを

バット材として使用したキューは、

「クラシックなデザイン」

と認識されるようになった。

 

一言でいえば、

ベテランプレイヤーが好むキューだ。

 

その一方、黒檀を使わない

黒色バットの登場により、

世の中はカスタムキュー好きが

予想だにしなかった方向に進化してゆく。

 

次回はパート3。

続きは21世紀編だぜ、BD!

 

※近日公開の【Part 3】へ続く。

 

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