〈BD〉「最後の9番から10番。手も脚も震えてました」――GPW-1優勝。浅野正人の談話

Masat Asano, the winner of 2021 JPBA Grand Prix West stop #1.
Masat Asano, the winner of 2021 JPBA Grand Prix West stop #1.

 

先週末(3/28)の

グランプリウエスト第1戦 in 愛知R.T.B』で、

 

プロ入り初優勝を飾った

浅野正人プロの談話をお届けします。

 

大会翌日に話をうかがいました。

 

…………

 

Masato Asano

JPBA44期生(2010年プロ入り)

出身・在住:ともに大阪府

生年月日:1973年1月19日生

使用プレーキュー:『9hearts』。シャフトは『Vantage』。タップは『斬PLUS2 M』

所属:9hearts(ILC Cue)、ZAN Tip

 

…………

 

 

――まずは初優勝のお気持ちを。

 

「決勝戦を撞くのも初めてでしたし、めったにないチャンスをものにすることができてめっちゃ嬉しいです。試合が終わったのは深夜でしたけど、愛知から大阪に戻る車中でも今まで見たことないぐらいたくさんLINEやメッセージが届きました。こんな俺でも、試合を見てくれてお祝いを言ってくれる人がこれだけいるんだなと。それも嬉しかったですね」

 

――初の決勝戦、楽しめましたか? 緊張しましたか?

 

「楽しかったかと言えば楽しかったですし、緊張もしました。始まる前は、決勝戦まで行けたことにちょっとホッとした瞬間もあったけど、気持ちを切り替えて臨みました。『勝ちたい』という気持ちもあったんで、試合が始まったら舞い上がってぐちゃぐちゃになるかもしれないと思ってたんですが、意外と冷静に撞けてたなと思います。相手の吉岡(正登)プロに0-4まで先に行かれましたけど(※7ラック先取)、彼がよく入れるのはわかってるんで焦ることはなく、回って来た球を冷静に取って行けたと思います。以前なら腐ってたかもしれないですけどね(笑)」

 

――決勝戦序盤の心境は?

 

「初めはだいぶ緊張してましたけど、吉岡プロが5-0にする10番を飛ばして、僕が1点取った時に『これで完封負けはなくなったな』と。その瞬間だいぶ気が楽になって平常心で撞けるようになったというか。あの1点目に救われましたね。そのぐらい大きかったです」

 

――追い上げて、並んで、逆転して、7-5で上がりました。

 

「逆転して6-5で僕が先にリーチをかけた時は、まだ『優勝』という言葉はそこまで意識してなかったです。でも、あの上がりのラックで相手ミスで8番が回って来た時に、ものすごいプレッシャーを感じました。8番は穴前だし9番もポケットに近いから入れミスはないだろうけど、9番から10番への出しが怖かったです。手球がサイドスクラッチすることも頭をよぎったけど、10番に厚く近く出したい。あの瞬間は手も脚も震えてました」

 

 

 

――そうだったんですね。

 

「あの日一番緊張したショットです。気が弱ってたら、サイドスクラッチのないラインで遠い所に出してたかもしれません。でも逃げずに近い所に出したかった。たぶん優勝を経験しているプロ達はあんな状況にも慣れてるんだと思いますけど、僕はもう一生懸命でした。思った通りに10番に出せてガッツポーズしてます(笑)」

 

――プロ入り13年目での初タイトルです。

 

「プロになった頃はとにかく下手くそだったし、予選突破が目標でした。その後何度か賞金圏内に入れるようになった頃に、高校の先輩で今もお世話になっている竹中(寛)プロに『行けるでぇ』と言われるようになって、『優勝』を少し意識するようになりましたけど、やっぱりそんなに上手くは行きません(笑)。色々と葛藤もありましたけど、この数年は『優勝したい』というよりも、『変なことをせず、自分のビリヤードをしたい』という気持ちでした。でも、さすがに昨日は初めての決勝戦で『優勝したい』も出てきましたけどね(笑)」

 

――1年ぶりのプロランキング対象試合は楽しめましたか?

 

「楽しかったです。試合を待ちわびてましたね。去年(2020年)の3月から『9hearts』のキューを使ってるんですけど、1年経って今回の試合が新キューでの初公式戦だったんです。それで優勝できたというのも嬉しいです」

 

――約1年コロナ禍で試合がなかったですが、モチベーションは保てていましたか?

 

「モチベーションが全く下がらなかったと言えば嘘になりますけど、黒田(祐介)プロ、曽我部(光貴)プロ、山川(英樹)プロ、竹中プロという方々と一緒に練習をすることがありましたし、これまでと同じように利川(章雲)プロに教わってました。だから、試合がないというだけで球は普通に撞いてました。GPW-1の開催が決まってからは竹中プロと撞くことが多かったですね。僕は昔から竹中さんに追い付きたい一心でビリヤードをやってきたところがありますから、一緒に練習できるのは光栄です。そういったお世話になっている先輩方やプロ仲間が僕の優勝を喜んでくれたこともすごく嬉しいです」

 

――今後の目標とは?

 

「これで満足することは全くないので、もちろん2回目3回目の優勝を目指します。全国オープンも……という気持ちももちろんありますけど、グレードとかは気にせずどんな試合でもいいからプロ公式戦でまた優勝したいです」

 

――さらに磨いていきたい部分とは?

 

「僕ももう48ですし、シュート力は今がほぼマックスでしょう。自分でも今回はまあまあ入れてたなと思いますけど、やっぱりもっと手球に取り組んでいかないと勝てないと思います。それはテーブルコンディションへの対応を含めての話です。今回のような難しいコンディションの時にもっと早く勘が冴えて対応できるようにならないといけないなと。やっぱり結果を出してる人たちは対応が早いですよね。僕はまだまだ対応力が足りてないです。……そうそう、最近スリークッションもやってるんですよ。やればやるほど、クッションとかセーフティとかその返しとか、ポケットに役立つことが多いなと実感しています。これも続けていきたいと思います」

 

――最後に、応援してくれていた人たちに向けて一言。

 

「今回の優勝は今まで僕を支えてくださったり、関わってくださった全ての人や全てのビリヤード場のおかげだと思います。『タツミ』の斎藤健悟プロ、斎藤慎太郎プロにも長年お世話になってきましたし、やっぱりずっと教えてくださった利川プロには感謝しかありません。出来の悪い弟子ですが(笑)、やっといい報告が出来たことを嬉しく思います。他にもたくさんの方に応援をしていただきました。ありがとうございます。またいい報告ができるようにこれからも頑張ります」

 

(了)

 

 

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