〈BD〉カスタムの輝き・「ストレートモデル」編・後編

 

12月16日に掲載した、

“カスタムの輝き・「ストレートモデル」編”の

「後編」をお届けします。

 

→「前編」はこちら

 

トップ画像の下側の2本を、

大原氏のコメントとともに紹介します。

 

…………

 

◇ 下から2番目:トレッドウェイ

 

 

新進気鋭の若手カスタムキューメーカー

として注目を集める、

 

『Treadway』(トレッドウェイ)の

ブビンガストレート。

 

大原氏が初めて購入した

トレッドウェイキューです。

新品で2016年頃に購入。

 

…………

 

大原氏・談:

 

「代表のジョシュ・トレッドウェイのことは以前から知っていましたが、彼が独り立ちしてから改めて挨拶代わりに購入したキューです。『手頃な価格のストレートモデルを1本頼みたいんだ』とお願いしたら、『ブビンガで作れるよ』と言われたので即決しました。前編に登場したニッティのブビンガストレートと比べると、同じブビンガでも色味も杢目もだいぶ違って見えますが、木の個体差や仕上げの違いでしょう。

 

その後、私は2018年にトレッドウェイのブラックアッシュバールのキューを購入し、BDでも紹介しました。ジョシュはキューメーカーとしての腕が良いだけでなく、勤勉で誠実で他人のために動ける人物。私も個人的に助けてもらったことがありました。ブラックアッシュバールのキューは、そのお礼も兼ねて購入したものです。その前にこのブビンガストレートを買っていたこともあり、信頼関係も出来上がっていて、すんなり商談がまとまりました」

 

…………

 

◇ 一番下:マクウォーター

 

 

最後は、一見ストレートモデルですが、

よく見るとスリーブに

短い「剣」が入っているこの1本。

 

日本人好みの繊細かつ

エレガントなデザインで知られる

『McWorter』(マクウォーター)が

初期に製作したシンプルなキューです。

 

厳密に言えばストレートモデルでは

ありませんが、“準ストレート”として

今回はここで扱います。

 

ベース材はバーズアイメイプルで、

スリーブの茶色の12剣は材料不明。

リングはなし。

 

製作年も不明ですが、

大原氏の記憶によれば、

シリアルは「702番だった」とのこと。

 

…………

 

大原氏・談:

 

「これを手にしたのは25年ぐらい前かな。マクウォーターと仕事ができるようになってすぐにオーダーした、私にとって最初のマクウォーターキュー。トレッドウェイの時と同じで、お付き合いを始めるための最初の1本です。この時はまだジェリー(代表のジェリー・マクウォーター)と直接の面識はなくて、FAXか何かでやり取りをした記憶があります。

 

これ、一応カスタムオーダーなんですよ。当時のマクウォーターは『Simple is best』というキャッチフレーズを掲げていて、実際にシンプルなキューを数多く作っていました。でも、私は完全なストレートモデルが欲しい訳ではなかったので、『何か加えてよ』と伝えたところ、これが来た(笑)。このキュー以外でこのデザインを見たことは私はありません。多分ジェリー本人も失敗したと思ってたんじゃないかな(笑)。今となっては希少だと思いますけどね。

 

このキューはUK Corporationから販売したのですが、複数の人の手を渡り、結局私が買い戻したような形になりました。ジェリーとの長い親交の始まりのきっかけになったキューなので、もう売りに出すことはないでしょう」

 

…………

 

↑ 2019年9月にBDで掲載したTADストレート

 

 

最後に、ストレートモデルの魅力と

ディーラー視点で見た価値について、

大原氏にお聞きしました。

 

大原氏・談:

 

「私自身、杢目フェチなところがありますので、銘木そのままの美しさを感じられるストレートモデルは結構好きです。主張が強くないのもストレートモデルの良いところじゃないでしょうか。インレイがたくさん入ったキューや凝ったデザインのキューももちろん良いものですが、飽きたりくどく感じたりする時もあります。ですが、ストレートモデルはほぼ木そのものなので、飽きることもなければ、のめりこむこともありません。

 

そして、だいたいどれも安いので、私にとってストレートモデルは、気兼ねなく買ったり、売ったり、使ったりできるキューです。オークションサイトなどを見ていて『おっ』と思うものがあったら、ためらわずに入札したりもします。積極的にコレクションしている訳ではないけれど、気付いたら本数が増えている。それがストレートモデルでしょうか。

 

仕事の面でストレートモデルは、ここまでお話してきた通り、メーカーとの信頼関係を築く上での『最初の1本』になるという側面もあります。挨拶代わりにまず手頃なストレートモデルをオーダーする。そうするとちゃんとした仕事相手として認識してもらえますし、後々の取り引きが円滑に進み、カスタムオーダーに応じてくれるようになったりもします。ジェリー・マクウォーターとは、このキューを作ってもらってからどんどん打ち解けて、今も公私ともに仲良くさせてもらっています。たかがストレート、されどストレート。私にとってはそんな感覚ですね」

 

(了)

 

※「カスタムの輝き」シリーズの

他の記事はこちらから

 

 

 

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