〈BD〉「カスタムキューケースの世界~概論」――Detective “K” season6 episode 04

↑画像はイメージです。※このケースはカスタムケースではありません(市販のキッズキュー用のケース)
↑画像はイメージです。※このケースはカスタムケースではありません(市販のキッズキュー用のケース)

 

私の名はDetective K。

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

例年なら『全日本選手権』が終了し、

年末セールに向けてビリヤード用品に

対する物欲が高まる時期。

 

しかし、2020年はコロナウィルスの

影響で盛り上がりに欠ける。

 

「キュー1本いっとく?」

的なノリが出しにくい。

何をするにも気が重いな。

 

リンリンリン♪

 

BDからネット通話だ。

 

『最近、Kがキューを手に入れた

という話が伝わってきませんね。』

 

まあな。

エキスポやコレクターズショーなどの

イベントで、衝撃的な出会いがなければ

物欲も湧きづらいものだ。

 

『では、キューケースはどうですか?』

 

軽量コンパクトな、

3secondsのケースを昨年手に入れた。

素材持ち込みの特注を

まだ受けていた時期だったな。

 

『キュー同様、ケースもプレイヤーや

コレクターの好みが出るもの。

Kは限定製作や特注のケースなど、

これまでたくさん見てきましたよね?』

 

もちろんだ。

見てきたキューの本数よりは少ないがな。

 

『では、その中からBD読者に

知ってもらいたいケースを

見つくろってください。』

 

そいつは、素材やデザイン、

収納本数など色々な切り口があるぜ?

 

『それは任せます。』

 

わかった、俺はキュー探偵K。

その依頼、引き受けた!

 

まず今回は概論。

 

キューケースの変遷を

オレの主観でザックリと見ていこう。

 

******

 

キューの持ち運びや

保管に欠かせないキューケース。

 

第一の目的は「キューの保護」であり、

それを満たさないケースは

ケースと呼べない。

 

逆に言えば、キューが

守られるのであれば何でも良い。

 

1950年代~1960年代の日本では、

キューを新聞紙で巻いて持ち運んでいた

プレイヤーもいたと聞く。

 

1980年代半ばまでは、皮革や合皮を

縫い合わせたソフトケースか、

角型のハードケースで、

1バット・1シャフトが主流。

 

複数本収納できるケースを使っていたのは、

よほどの上級者かプロぐらいだったろう。

 

プレーキューとブレイクキューを

別にするとか、スペアシャフトを持つとか、

さほど考えていない時代だった。

 

そもそも、

玉は馴染みの店で撞くものであって、

キューは店に預けておくのが掟。

 

玉屋からキューを持ち出すのは、

試合に出るレベルの上級者だけで、

 

普通の常連なら、

 

キューを持ち出す=その店からの離脱=

他店へ移る=裏切り 

 

と思われかねない問題行動だった。

 

ありていに言えば、

昭和末期まで、キューケースは

なくても良い存在だったのだ。

 

******

 

その状況が一変したのが、

映画『ハスラー2』ブーム。

 

酒類やしゃれた食事メニューを提供する、

『プールバー』などと呼ばれた店が乱立し、

プレイヤー人口が一気に増え、

普通の玉屋にも客が押し寄せた。

 

その結果起きたのがプレイヤーの流動化。

 

待ち時間の短さや台のコンディションなど、

少しでも良い環境を求め、一つの玉屋に

留まらず渡り歩くようになった。

 

ここで初めて、

キューケースは大半のプレイヤーが

必要とするアイテムになったと言える。

 

そして「ブランドキュー」と当時呼ばれた

高級カスタムキューだけでなく、

様々なキューケースも

輸入されるようになった。

 

1988年製のジョー・ポーパー
1988年製のジョー・ポーパー

 

当時としては軽量かつ丈夫な構造の

『ジョー・ポーパーケース』や、

 

高級皮革を用いた、

ショルダーストラップ付チューブ型の

『ジョージケース』が人気となった。

 

もっとも、『フラワーケース』

『タッドケース』等の革ケースになると、

本当の上級者のみが持つ別格であり、

気軽に所持できるシロモノではなかった。

 

ブーム絶頂期には、

これらのキューケースを

担いで歩くだけでトレンディ。

 

プレイヤーをファッショナブルかつ

スタイリッシュな存在に仕立てる

アイテムだったのだ。

 

******

 

『ハスラー2』ブーム終焉後の1990年代、

カスタムキューの需要は無くならず、

むしろメーカーの数が増え、

同時にキューケースメーカーも多数出現した。

 

ウィットン
ウィットン
こちらもウィットン
こちらもウィットン
ジャスティス
ジャスティス
インストローク
インストローク
ロン・トーマス
ロン・トーマス
ニューヨーク
ニューヨーク
ムーナック
ムーナック

 

ジナなどの高級カスタムキューに

付属することで知られた

『ウィットンケース』。

 

正統派皮革ケースの定番となった

『ジャスティス』や『インストローク』。

 

古き良き時代のケースを再現した

『ロン・トーマス』。

 

ハンドバッグやベルトなどの

革製品を作っていたメーカーが手掛けた

『ニューヨークケース』。

 

格闘技の防具メーカーがその技術を

生かした『ムーナック』など、

多彩なメーカーが競い合った。

 

↑余談となるが、ムーナックはオレの知る限りダブルストラップケースの元祖。そして、作者のジム・ムーナックはNYPDの警官に護身術を教えていたという。それも頷ける剣呑な雰囲気をまとっていた。

 

******

 

また、キューとデザインを統一した

「マッチングデザインケース」が、

高級カスタムキューの世界で広まった。

 

 

ジナのシルバーキュー(左2)
ジナのシルバーキュー(左2)
シルバーキューとのマッチングケース
シルバーキューとのマッチングケース
リチャード・ブラック
リチャード・ブラック
ビル・シックのケースはインレイの端材をリサイクル
ビル・シックのケースはインレイの端材をリサイクル

 

その元祖と言えば、

1960年代に作られた『ジナ

シルバーキューとケース。

 

21世紀に入ると、

『リチャード・ブラック』や

『ビル・シック』などの

カスタムキューメーカーが、

キューとケースを同時に製作し、

セット販売するようになった。

 

しかし、

ケースとの「抱き合わせ販売」は、

高級カスタムキューの

価値を高めるためであり、

玉を撞く道具としての性能を

向上させるものではない。

 

ケースはプレーに影響しない、

あくまでも付属品だからだ。

 

結局のところ、

高級カスタムキューの限界を

自ら表したようなものだとオレは思う。

 

******

 

販売促進のために、

業者やキューメーカーが、

キューのオマケにケースを付けるなら、

コストが低いに越したことはない。

 

そのため、

大量生産による安価なケースも増えた。

 

ケースがないよりマシ、

という程度であればそれで十分なのだが、

2010年代になると大手キューメーカーは、

総合ビリヤード用品メーカーと

呼んだ方が良いような変化を遂げてきた。

 

プレデターやマクダモット、

そしてメッヅ/エクシードなどは、

より良いプレーを実現するために、

キューだけでなくグローブやチョーク、

そしてキューケースも自社ブランドで

販売するようになったのだ。

 

こうなると、単に安い製品を

仕入れてロゴを入れただけの

キューケースでは不十分。

 

キューの保護だけでなく、

プレイヤーにとっての使いやすさや

メーカーのイメージを損なわない

デザイン、そして品質を追求した

製品作りが求められる。

 

MEZZが2020年にリリースしたスポーティー&カジュアルな 『MS-24』
MEZZが2020年にリリースしたスポーティー&カジュアルな 『MS-24』

 

早いハナシ、

他スポーツの用品メーカーと

同等のレベルにまで成長したと

考えれば、わかりやすいだろう。

 

******

 

キューケースは、

楽器やスポーツ用具などの

他分野に見られないほど

バリエーションに富んでいる。

 

次回では、

キューを保護し持ち運ぶという、

基本的な機能を満たした上で生まれた、

様々なキューケースを紹介してゆくぜ。

 

それじゃ、またなBD!

 

※近日公開の【後編】へ続く。

 

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