〈BD〉【寄稿】スヌーカーのマジックナンバー、“147”  by スヌーカーブログ『The First Break』

 

スヌーカーのプロプレイヤーが

いつか公式戦で達成したいと願い、

スヌーカーファンがその達成の瞬間に

居合わせることを願う

「パーフェクトなブレイク(取り切り)」。

 

それが、今回ご紹介する

「マキシマムブレイク」です。

 

「147」という3ケタの数字で

表現することの方が多く、

プール(ポケットビリヤード)のファンでも、

147という数字や、実際の147動画などを

見たことがある人は多いでしょう。

 

今回は、先日の

「センチュリーブレイク」の話に引き続き、

 

本場イギリスのスヌーカー事情に明るい

日本のスヌーカーブログ、

「The First Break」さんにご登場いただき、

 

「147」の難しさと奥深さ、

そして、スヌーカー史を彩る、

有名な「147」について解説していただきました。

 

…………

 

The First Break記:

 

 前回お話しした「センチュリーブレイク」がアマチュアプレイヤー達の1つの目標だとしたら、「147」はプロプレイヤー達の目標と言えるでしょう。

 

 スヌーカーでは連続で的球を入れることを「ブレイク」と言います。このブレイクがある一定、100点以上になるとセンチュリーブレイクと呼ばれますが、147点を獲得した場合、それはセンチュリーブレイクとは呼ばずに「147」(ワン・フォー・セブン)または「マキシマムブレイク」と表現されます。これはダーツで言う9ダーツ、ボウリングで言う300点と並ぶパーフェクトゲームという意味なのです。

 

 まず147の条件ですが、その名の通りブレイクで147点を獲得することです。ただし、間違えやすいポイントですが、スコアが147点になることではありません。レッド→ブラックの組み合わせ(8点)×15セットと、カラーボール(27点)の合計が147点になる。この取り方の条件を満たした時にマキシマムブレイクと呼ばれます(厳密に言うと、ルール上147点よりも高いブレイクを出すことは可能ですが、今回は触れません)。

 

…………

 

 では、この147の何がスゴいのかと言うと、まず36個のボールをミスすることなく連続で取り切るという事が1つ。もう1つは、スヌーカー独特のルールである、「ポケットに入ったカラーボールが所定の位置に戻って来る」というところに関係してきます。

 

 ブラックから次のレッドに繋げるのは、レッドの数が多い序盤こそ効率的ですが、後半になってくるとレッドがブラックから遠かったりレール際にあったり、ピンクボールにくっついていたりと色々な問題が表れてきます。

 

 本来はそれらの問題を解決すべく、状況に適した6色のカラーボールの内の最適な1つを選択してブレイクを続けていくのですが、マキシマムブレイクの場合は何が何でもブラックから繋ぐ必要があり、他の5色を使わないという非常に非効率的な選択をし続けなければいけません。

 

 しかし、非効率な道を選択し、ミスをすれば相手にチャンスを与え、フレームを失うリスクを受け入れて達成するからこそ価値のある記録なのではないでしょうか。登山で言えば、整備された登山道を選ばず、あえて断崖絶壁をロッククライミングで登っていくといったところでしょうか。そのチャレンジ精神こそが147の価値であり、達成した者が讃えられる理由です。この非効率でリスキーな選択を、特に終盤から続けなければいけないところが先に挙げたダーツやボウリングとの違いであり、147ならではの感動が生まれるのだと筆者は考えます。

 

 147を詳細に語ろうとすると時間がいくらあっても足りないので、前置きはここまでにして、ここからはメインツアー史に残る147をいくつか紹介していきたいと思います。

 

…………

 

 やはり誰もが気になるのは公式戦第1号となる147ですよね。これはご存じの方も多いかと思いますが、近代スヌーカーの第一人者、スティーブ・デイビスによって1982年に達成されました。↓

 

 

 この1982年の出来事からワールド・スヌーカーの147の歴史が始まりました。次に147が達成されたのは翌年の1983年の世界選手権でした。↓

 

 

 1980年の世界王者クリフ・ソーバーンが時間をかけてゆっくりとポットし続け、ラストブラックを入れた瞬間に膝から崩れ落ちるのをみると、世界トッププレイヤーでもいかに147達成が困難で、プレッシャーに押しつぶされるような極限状態にあったかが伝わってきますね。

 

 イギリスでのスヌーカー人気絶頂期となった1980年代はこの2つを含む8回の147が達成されました。1年に1回出るか出ないかのパーフェクトフレームでしたが、1990年代にはスヌーカープレイヤーの全体のレベル上昇とともに頻繁に達成され始めます。その先頭に立ったのは、センチュリーブレイクの達成数同様、1990年代最強の男、スティーブン・ヘンドリーでした。

 

 

 1997年のこの試合(↓)は、若かりし頃のロニー・オサリバンとの決勝戦、しかも競りに競って試合はディサイディングフレーム(8-8のヒルヒルで迎えた最終フレーム)へと向かいます。

 

 

 この局面でヘンドリーは果敢にも147への挑戦を選びます。幸いにもレール際にレッドが残っていなかったため、選択しやすい配置だったのかもしれません。とはいっても99%のプレイヤーはここでわざわざ難しい147を選択しないでしょう。この大胆な決断こそが自信の表れであり、この時代のヘンドリーの他を寄せ付けない強さにもなっていました。

 

 ヘンドリーに1本取られたオサリバンですが、この後ヘンドリーの持っていた最多147記録(11回)を追い抜き、現在は「15回」という最多記録を保持していることはご存じの方も多いでしょう。さらにアメリカン・プール・プレイヤーでも多くの人が視聴済みであろう最速147(5分8秒。当時は5分20秒と発表され、後に計測し直された)は1997年に達成されました。これは知っている人の方が多いのでここでは触れる必要は無いかと思います。

 

 

 代わりといってはなんですが、筆者が個人的に好きなオサリバンの147を2つご紹介します。1つめは2007年のUKチャンピオンシップ準決勝戦のディサイディングフレームです。↓

 

 

 33点目のレッドはリカバリーショットのようですが、結果的に序盤で難球を処理できたので、比較的147を狙う決断をしやすかったのかもしれませんね。80点目のブラックを入れてからのパック(ボールのかたまりを割るショット)も完璧でした。もうこうなったら手をつけられない状態です。

 

 では、オサリバンがアンタッチャブルなモードに入ったフレームをもう一つ。2008年の世界選手権での試合です。↓

 

 

 なんといっても見所は97点目を入れた後のブラックからのパックです。このショットではトップクッション(手前の短クッション)から上に真っ直ぐ走らせるために、わずかにキューに傾斜を付けて、ブラックに当たった後ジャンプさせて弾かせています。その結果、キューボールはピンク真下のレッド左側に当たり、147への道が開けました。

 

 こんなプレーはオサリバン以外には絶対に出来ないプレーですよね。自分の中でオサリバンを象徴するショットを1つ選べと言われたら間違いなくこのシーンです。このような多彩なショットを放てるからこそ、他のプレイヤーでは諦めるしかない局面も切り抜け、1,000回以上のセンチュリー、15回の147を達成できたのでしょう。

 

 このオサリバンの147はワールド・スヌーカー公式の62回目の147でした。1982年のデイビスから始まり、2000年代が終わる頃、つまりスヌーカーの公式戦が行われた27年間で合計69回の147が生まれました。そして2019年4月1日現在までに達成された公式147は合計150回です。2010年代の10年間でどれほどスヌーカープレイヤー全体のレベルが上がり、147が量産されるようになったのか一目瞭然ですね。

 

 ちょうどきりがいいので、今回は「2000年代までの147の歴史」という事で話を締めさせていただきたいと思います。多くの公式147はYouTubeにアップロードされているので、自分の気に入ったフレームを探してみるのも一興ですよ。

 

(了)

 

…………

 

The First Breakさん、

ありがとうございました!

 

【寄稿】スヌーカープレイヤーのマイルストーン、「センチュリーブレイク」とは?

 

 

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