〈BD〉【寄稿】スヌーカープレイヤーのマイルストーン、「センチュリーブレイク」とは?  by スヌーカーブログ『The First Break』

 

スヌーカーのトッププレイヤー、

ロニー・オサリバン(画像)が、

前人未到の偉業を

達成しようとしています。

 

それは「センチュリーブレイク、1,000回」。

 

現在「991回」のオサリバン。

 

早ければ、今月(2019年2月)中旬に

行われる『ウェルシュオープン』で

1,000回達成か!? とも囁かれています。

 

(※2/5追記:

オサリバンはウェルシュオープンの

1回戦で敗れてしまいました。

次の試合は3月の

『プレイヤーズチャンピオンシップ』です)

 

そこで、今回は改めて、

スヌーカーのセンチュリーブレイクとは何か。

 

そして、どんなプレイヤーが

どれだけの記録を有しているのか。

 

そういった

「センチュリーブレイクの歴史」を、

 

本場イギリスのスヌーカー事情に明るい、

日本のスヌーカーブログ、

「The First Break」さんに

教えていただきました。

 

…………

 

The First Break記:

 

 スヌーカーにおいて「連続でボールをポット(シュート)する」ことを「ブレイク」と言います。このブレイクの数値が、その選手の状態や試合のクオリティを判断する重要な要素になっています。全ての選手が1フレームの中で目標とするのは「センチュリーブレイクを記録すること」でしょう。

 「Century(センチュリー)」とは「100」を意味する英単語(語源はラテン語のcenturia)ですが、スヌーカーでは100点以上のブレイクを「センチュリーブレイク」と呼びます(50点以上のブレイクは「ハーフセンチュリー」)。では、センチュリーブレイクを行うためにはボールをいくつポットすれば良いのでしょうか? 最も効率的に見積もると、25個のボールを連続でポットすると達成可能です。

 このセンチュリーブレイク達成がどのくらいの難易度なのか。説明が難しいのですが、アマチュアプレイヤーは一生に一度も達成できずに終わる人が大半でしょう。もしあなたがセンチュリーブレイク経験者なら、周りのアマチュアプレイヤーからは尊敬の眼差しを向けられることは間違いありません。ちなみに数年前の話ですが、日本人でセンチュリーブレイクを達成した人は20人ほどしかいない、という話を聞いたことがあります(真偽は定かではありませんが)。

 

 センチュリーの話は深掘りをすると終わりが見えなくなるので、今回は「メインツアー」(スヌーカーのワールドトッププロ達が戦っている一連のトーナメント)とセンチュリーブレイクの歴史を紹介していきます。

 

…………

 

 現在までメインツアーで記録されたセンチュリーは、合計すると2万回を超えていますが、初めて映像で記録されたセンチュリーは、スヌーカー黎明期の伝説のプレイヤー、ジョー・デイビスが出したものです。

 

↑ 1962年。J・デイビスのセンチュリーブレイク

 

 

 厳密にはこの時、ジョーは公式戦からは引退していて、これはエキシビション・マッチの映像です。もちろんメインツアーのセンチュリーブレイク第1号はこのジョー・デイビスで、1930年に記録したと言われています(1928年という説もあり)。


 意外なことに、この後しばらくは、特記すべきセンチュリーブレイカーは現われません。スヌーカー人気が低迷していて試合数が少なかったというのも理由の一つですが、やはりテクニックが確立しておらず、ブレイクビルディングのレベルが低かったというのが理由でしょう。

 

…………

 

 しかし、1980年代に入り、新たな風を吹き込むスーパースターが登場します。現代スヌーカーの立役者、スティーブ・デイビスです。彼の抜きん出たブレイクビルディングスキルに他のプレイヤーは全く太刀打ちできず、1980年代の大会のほとんどはデイビスが優勝を収めています。

 

 デイビスは2014年にメインツアーを引退しましたが、この時までに公式戦で記録したセンチュリーブレイクの数は「355回」でした。参考までに、同時代に活躍したジミー・ホワイト(現役)のセンチュリーは「317回」、1985年に伝説の死闘を演じたデニス・テイラーは「79回」となっており、いかにデイビスが飛び抜けて偉大なプレイヤーだったのかという事がわかりますね。

 

↑ 1986年。S・デイビスのセンチュリーブレイク

 

 

 デイビスの登場により、1980年代は空前のスヌーカーブームが起こり、イギリス全土でスヌーカーホールが次々とオープンしたそうです。そのスティーブ・デイビスを見て育ち、後に1990年代のスヌーカーシーンを支配したのが、”キング オブ クルーシブル”、スティーブン・ヘンドリーでした。

 

…………

 

↑ 1992年。S・ヘンドリーのセンチュリーブレイク

 

 

 ヘンドリーのセンチュリーに関しては興味深いエピソードがあります。彼の自伝によると、ヘンドリーは13歳の誕生日プレゼントとして両親から6フィートのテーブルをプレゼントされ、そこからスヌーカーに熱中し、毎日毎日練習するようになりました。誕生日から3、4ヶ月経った頃のこと、地元のスヌーカーホールで父親とゲームを楽しんでいた時に「事件」は起こりました。ヘンドリーがボールを入れ続け、ラストブラックを入れてクリアランスを達成。この時のブレイクはなんと102点!! 球撞きを始めてわずか数ヶ月でセンチュリーブレイクを達成したというのです。にわかには信じがたい話です……。

 

 そのヘンドリーが2012年に引退するまでにメインツアーで積み上げたセンチュリーの数は「775回」で、スティーブ・デイビスの倍以上。同時代に活躍したピーター・エブドン(現役)は「374回」、ケン・ダハティー(現役)は「340回」となっており、ヘンドリーの記録には遠く及びません。

 

…………

 

 2000年代に入るとロニー・オサリバン、ジョン・ヒギンズ、マーク・ウィリアムズが本格的に台頭してきます。

 

 まず、紹介するのは昨年(2018年)、15年ぶりに世界王者となったマーク・J・ウィリアムズ。

 

↑ 2018年。M・ウィリアムズの世界選手権(優勝)でのセンチュリーブレイク

 

 

 2000年代初期に持ち前のポッティング技術でスヌーカー界を制圧したのがウィリアムズでした。ウィリアムズはこれまでに「457回」のセンチュリーを記録しています。

 

 さらにセンチュリーを量産しているのはジョン・ヒギンズです。

 

↑ 2018年。J・ヒギンズの世界選手権(準優勝)でのセンチュリーブレイク

 

 

 1975年生まれのこの3人の中で、26年間最も安定してランキング上位に位置しているのはヒギンズです。最近は再びスランプ期に突入しているようですが、2017年&2018年世界選手権・2年連続準優勝のヒギンズは、今年4月の世界選手権に合わせて復活するのでしょうか。ヒギンズがこれまでに築いたセンチュリーは「739回」、ヘンドリーの記録まであと少しです。

 

…………

 

 さて、ヘンドリーが残した記録、「775回」のセンチュリー記録を上回っているプレイヤーと言えば、たった一人、オサリバンしかいません。2012年、センチュリーの数が600回を超えたところで引退発言&メインツアー1年間休場などがありましたが、その後は大会を選びながら徐々に復帰してセンチュリーを積み重ねていきます。

 

 そして、2015年の『マスターズ』の1回戦第6フレームにセンチュリーブレイクを記録して「774回」に。勝利へリーチをかけた第10フレームにまたセンチュリーのチャンスが訪れますが、最後のイエローが絶望的な配置となり、ヘンドリーの「775回」に並ぶ歴史的な瞬間はお預けか、と会場にいる全員が落胆したところでしたが……。ここから起こる奇跡はぜひ下記の動画でご確認を。

 

↑ 2015年。R・オサリバンの775回目のセンチュリー

 

 

 現時点(2019年マスターズ終了時点)までにオサリバンが築き上げてきたセンチュリーの数は「991回」。恐らく今月中に前人未踏の「1,000回」のセンチュリーを達成すると思われ、スヌーカー界は今、この話題で盛り上がっています。Xデーはいつなのか。個人的な予想だと、2月11日から始まる『ウェルシュオープン』で達成するのではないかと思われます。いずれにせよ、今シーズン中(5月まで)に達成する確率は99%以上でしょう。

 

…………

 続けて、オサリバン世代以降の20代~30代のプレイヤーや、今後想定されるセンチュリー事情についても言及しなければならないのは理解していますが、それはオサリバンの1,000回目のセンチュリー記録達成の余韻が冷めてから、かつ、続編希望の声があれば、とさせていただきたいと思います(^_^;)

 

 なにはともあれ、オサリバンの1,000回目のセンチュリー達成の時は間もなく。欲を言えば、大会の決勝戦で、勝利にリーチをかけたフレームで見たいものですね。

 

(了)

 

…………

 

The First Breakさん、

ありがとうございました!

 

近日、The First Breakさんには

再度ご登場いただく予定です。

 

 

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