〈BD〉『カスタムの輝き』番外編。輝けなかったメーカー、「トム・トロット」編

 

カスタムキューを多数取り扱っている

UK Corporation

 

その代表、大原秀夫氏が所蔵している

キューを見ていく本企画。

 

(※過去記事はこちら

 

今回は番外編として、

これといって脚光を浴びることなく

ひっそりと消えていった

メーカーを紹介します。

 

その名は『Tom Trott』(トム・トロット)。

 

製作拠点はメリーランド州。

「TT Custom Cues」と

言う呼び方もあります。

 

現在、公式サイトはドメインが

切れている模様で、インターネットなど

各種情報の乏しさから判断するに、

現在キュー製作はしていないと思われます。

 

…………

 

今回紹介するこのキュー。

フォアアームのデザインは、

バーズアイメイプルをベースに

ココボロの長短6剣。

 

スリーブはココボロがベース。

 

フォアアームにもスリーブにも

白樹脂とアバロニの

インレイが施されています。

 

強い個性がある訳ではないものの、

なかなかよくまとまったデザインです。

 

 

大原氏がこれを購入したのは、

2008年の『スーパービリヤードエキスポ』

(SBE。フィラデルフィア開催)。

 

トム・トロットがブースを出しており、

大原氏は本人から直接

このキューを買いました。

 

「日本にあるトム・トロットは、

これだけなんじゃないでしょうか。

だからといって

価値が高い訳ではないですが」

と笑って振り返る大原氏。

 

今回はトム・トロットキューとの

出会いの顛末だけでなく、

『いなくなってしまうメーカーに

見られる傾向』を大原氏の視点で

語っていただきました。

 

大原氏・談:

 

「2008年のSBEで、

『新しいメーカーもチェックしておこうか』

ぐらいの気持ちで

トム・トロットのブースを見ていて、

このキューがなんとなく印象に残りました。

 

少しブラックボア風味のあるデザインで、

私の頭にちょっと引っ掛かった。

 

本人に尋ねると、メリーランド州で

作っているという。

 

当時の私の持論としては、

『寒い気候の方がキュー作りに適している』

というのがあり、それも満たしていました。

 

でも、すぐに買った訳ではなく、

最終日に『ちょっとキューが

足りないから何か買って帰ろうか』

となって、これを思い出したんです。

 

『キューが何を語っているか

まだよくわからないけど、

新しいメーカーだし、

ちょっと付き合ってみるか』と。

 

たしか1,200ドルぐらいだったかな。

 

今もしこれを買いたいという方がいたら

相談に応じますが、これから言う理由から、

あまりお勧め出来るものではありません(笑)。

 

よく覚えているのは、

購入した後、SBEの打ち上げがあり、

メーカー、プレイヤー、関係者で

球を撞いたりしていたのですが、

 

皆もこのキューが気になったようで、

『使って良いか?』と。

 

ドーン・ホプキンス(女子プレイヤー)や

リチャード・チュディ(メーカー)を

始めとして、何名もの人が撞いたんですが、

 

『うん、まあ……』とか

『ノーコメント』という人が多かった。

 

私自身も感じてはいたけど、

プレーアビリティは高くないという

お墨付きをいただきました(笑)。

 

まず単純に、プレーに使うには

軽すぎたというのがあります。

 

シャフトは2本付いていましたが、

一方が12.3mmでもう一方が12.5mm。

径が違ってました。

そして、どっちを付けても軽い。

 

たぶん、トム・トロット本人が

好きな仕様なんでしょう。

 

後日メールでそういう感想を本人に

伝えたら、『お代はいいから』と、

13mmのシャフトが送られて来ました。

それはフェアじゃないと思ったので、

支払いはしましたけどね。

 

その翌年(2009年)のSBEで

トム・トロットとまた会いましたけど、

結局それっきりでした。

今どこで何をしているのかは

わかりません。その頃を境に

もうキューは作ってないと思います。

 

最後の会話で覚えているのは、

『信じられないぐらい

ビジネスの調子は悪いよ(笑)』

という彼の言葉です。

 

 

 

 

せっかくですので、

なぜトム・トロットは成功出来なかったのか、

私なりの考えを述べてみます。

 

まず、デザイン。

 

決して悪くはないけど、独創性とか

売りになるものがなかった。

 

リングワークもシンプルすぎて、

個性は感じられないです。

 

こういう系統のデザインなら、

もっとお金を出してより有名なメーカー、

例えばその当時なら、ブラックボアの

安いラインを買おうか、などと、

多くの人が思うと思います。

 

次にプレーアビリティ。

 

このキューから感じられるのは、

購入した人がより楽しくプレー出来るとか、

良い球が撞けるようになるとか、

なにか役に立つものを

提供しようというよりも、

 

トム・トロット本人の趣味の

延長というか、自分の好きなものを

作って売っているという印象でした。

 

それも悪くはないですけど、

バランス感覚は必要だと思います。

 

あとは単純に、仕上げが雑です(笑)。

あまりクオリティーが高くない。

 

今ルーペで見てみたら、インレイの材料に

紙ヤスリを当てた痕が残っていたり。

それなりの金額を出してそれでは

落胆してしまいますよね。

 

私は数多くのメーカーの盛衰を

見てきましたし、

いなくなってしまったメーカーは

枚挙にいとまがありません。

 

キューメーカーの数も、

私がディーラーを始めた頃(1980年代)に

比べたら、3倍ぐらいになっていますので、

当然競争が激化していますし、

マーケットは飽和状態です。

 

なので、消えてしまったメーカーも

多い訳ですが、そういったメーカーは

だいたい今挙げたような『ダメな理由』が

多少なりともあったんだろうと思います。

 

余談ですが、反対に、

 

『成功を収めたがゆえに、

本人やキューが表に出てこない』メーカー、

 

つまり、事情を知らない人からすると

『消えたように見える』メーカー

というのも数多くいます。

 

名前を挙げると、

デニス・シアリング、

ロン・ヒーレー、

トーマス・ウェイン、

ジェイムス・ホワイト、などです。

 

彼らはコレクターからのオーダーが

引きも切らず、それを作って売るだけで

十分に仕事が成り立っているので、

 

忙しくて表に出て来る時間がなかったり、

出展するキューがなかったり。

 

作ったキューは確実に売れていくので、

表に出て来てプロモーションを

する必要もないのです。

 

そういうケースもあることを知っておくと、

『輝けなくて消えた』メーカーなのか、

『輝いているから表に出て来てない』

メーカーなのかを

見分ける参考になると思います」

 

(了)

 

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