〈BD〉「K的アメリカン・カスタムキューランキング」――Detective “K” season 2. episode 05

 

私はDetective K。

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

皆からは”K”と呼ばれている。

 

ビリヤード界も年末モード。

巷は、クリスマス・ペアマッチとか、

忘年会玉撞きとか、お楽しみだ。

 

探偵には関係ない。

仕事があるかないかの違いだけさ。

 

ま、強いて言えばボーナスで懐が潤う季節、

カスタムキューに手が伸びるクライアントから、

お目当てのキューに対する

調査依頼が来そうなものだ。

 

ピコッ! 

 

今月もBDからメッセージだ。

まさかヤツがカスタムキューを買いたい、

とでもいうのか?

 

『人気ランキングを発表してください。』

 

は? ランキング?

 

好きな女優の順位か? それならば……

 

『違います! カスタムキューです。』

 

くっ、やはりそうか……。

 

『Kの女優ランキングに、

どれだけ需要があるんですか!

 

コレクターとしての目線でチョイスすれば、

日本とアメリカでは、

人気のメーカーが異なるもの。

 

ランキングを比べれば、

見えてくるものがあるはずです。』

 

つまり、オレが決めるランキングで

日米の差を表現しろと?

 

『ありていに言えば、そうです。』

 

わかった、オレはキュー探偵。

その依頼、引き受けた。

 

*****

 

キューメーカーは、需要が供給を上回る

幅が大きいほど、人気とされるが、

コレクターやプレイヤーから選ばれるためには、

他メーカーとは違う何か、

いわゆる「個性」が必要。

 

デザインや構造のオリジナリティは重要だが、

更にそのキューを使用するプレイヤーや、

製作するメーカー自身にまつわる

「伝説」や「噂」などの「ストーリー」も、

大切な「個性」の一部だ。

 

それらの要素が広く共有され、

「良いメーカーのキューをお持ちですね」

と周囲から評価されることが、

オーナーの満足感を満たし、

キューの価値を決める。

 

しかし、数百は存在する、年間数本から

200本程度しか作らない少量生産メーカー。

現在・過去問わずランキングを付けるのは困難だ。

 

そこで現役の、

アメリカン・カスタムメーカーから選んでゆくぜ。

国産メーカーや、引退したメーカーは

今回対象外だ。悪しからず。

 

*****

 

まず、国内ベスト5

 

■ジナ(Gina)

 

 

「装飾された高級キュー」という、

現代カスタムキューの礎を固めた

アーニー・ギュテレスが、

1961年から製作するキュー。

 

プレイヤビリティ・デザイン・材料・

クオリティ・希少性すべてを満たす

トップメーカーだ。

 

30周年・40周年・50周年(画像)という

アニバーサリーキューに特別な価値を

持たせられるのもジナキューならでは。

 

*****

 

■タッド(TAD)

 

 

1963年から製作を始めたタッド・コハラ。

1970年頃から日本における

アメリカン・カスタムキューの草分けとして、

多くのプレイヤーが愛用してきた。

 

2013年に没するも、息子のフレッドが

その伝統を受け継ぎ、製作を続けている。

 

*****

 

■ブラックボア(Black Boar)

 

 

葉巻とバイクを愛するナイスなオヤジ、

トニー・シャネイラが1987年に製作を開始。

 

当初はクラシックな4剣デザインだったが、

貴金属や貝などを用いた

超絶技巧かつ微細なインレイで、

最高級カスタムの名声を得た。

 

「上級者しか、その良さはわからない」

と豪語するが、

いかんせん高価かつ少量生産のため、

プレイヤーからの評価を聞くのは稀。

 

*****

 

■ザンボッティ(Szamboti)

 

 

1960年代末から1989年に没するまで、

様々な色のベニヤを組み合わせた剣ハギと、

均整の取れたインレイパターンを生み出した

ガス・ザンボッティ。

 

1980年代後半の

『ハスラー2』(映画)ブームのさなか、

当時「ミスター」と呼ばれた

奥村健プロが使用していたことで、

国内では絶対的な地位を得た。

 

没後すぐに息子のバリー・ザンボッティが

引き継ぎ、その名声は衰えない。

 

アメリカ東海岸伝統のキューデザインを

現在に伝える貴重な存在だ。

 

*****

 

■マクウォーター(McWorter)

 

 

1990年代以降、

ポスト『ハスラー2』世代のメーカーとして、

日本では早くから知られた存在。

 

シルバーのラインを多用した

コンテンポラリーなデザイン、

プレイヤビリティの良さから、

実戦向けのカスタムとして評価されている。

 

作者のジェリー・マクウォーターは、

何度も来日し、簡単な日本語の会話もこなし、

ついでにドラマーとして

国内のライブハウス回りも行うほど、

日本通であることが人気を支えている。

 

*****

 

続いて、アメリカ版ベスト5。

 

◯サウスウェスト(Southwest)

 

 

故ジェリー・フランクリンが、

後述のディヴィッド・カーセンブロックから

キュー製作を学び、

1982年に旗揚げしたメーカー。

 

多彩な銘木を用いた長短6剣ハギのデザインと、

卓越したプレイヤビリティで高い評価を得た。

 

1996年にジェリーは42歳で亡くなったが、

妻のローリー・フランクリンをはじめ

親族で製作を継続。

 

1990年代にはすでにウェイティングリストが

6年以上と言われていたが、

映画『プールホール・ジャンキーズ』での露出や、

台湾での人気により、

現在ではなんと10年待ち以上。

 

市場でそれなりの数が出回っているが、

新品・中古を問わず高値で取引されている。

 

*****

 

◯ジナ(Gina)

 

 

日本国内同様、

本国アメリカでもジナキューの人気は高いが、

実際のプレーに使用するというより、

コレクターなら少なくとも一本は持っていたい

キューであり、凝ったデザインの

高価なモデルがより多く流通している。

 

*****

 

◯シェアリング(Dennis Searing)

 

 

フロリダのキューヲタといえば、

デニス・シェアリング。

 

プレイヤーとしても一流で、ワンポケットが得意。

 

ザンボッティが生み出したデザインを、

わかる人にはわかる、細かすぎるコダワリで

ひとひねりして、より洗練させた点が、

コレクターの心をわしづかみにする。

 

全て受注生産で、

市場に出回ることはまずないが、

何かのはずみで売り物が出た場合は、

争奪戦となること必至の人気メーカー。

 

*****

 

◯カーセンブロック(Kersenbrock)

 

 

サウスウェストの師匠、というより、

現代キューにおける製作法や、

構造の基礎を築いた偉大な存在。

 

現在は、知らない人には会いたがらず、

かつ心身ともに健全であるときにしか

キューを製作せず、

米国内でもミステリアスな存在とされている。

 

心の内面を表現したような、

一見「ぶっ飛んだ」独特のデザインに心酔する、

限られた数のコレクターが

作品を分け合うような状況のため、

実物を目にすることは極めて稀。

 

*****

 

◯pfd Studio

 

 

マクウォーター同様、

ポスト『ハスラー2』世代のキューメーカーながら、

当初から高級路線を追求し、

 

さまざまな材料や装飾技法を

貪欲に取り入れてきたポール・f・ドレクスラー。

 

過去には、映画『ハスラー』の名場面を

スクリムショーに入れたキューを製作し、

ポール・ニューマン参加のチャリティを行うなど

話題先行の面もあったが、

 

ここ数年で急速にアメリカのコレクターが

注目する存在に成長してきた。

 

新作を発表する度にレベルアップしており、

いくつかのベテランキューメーカーに

取って代わる可能性を感じさせる。

 

*****

 

というわけで、

独断と偏見で日米トップ5を選んでみた。

 

ちなみに、ここに出ていないメーカーがダメとか、

嫌いというわけじゃねえ。

 

カスタムキューの人気は、時代と共に変わるもの。

 

少量生産メーカーの場合は、

特にその浮き沈みが激しい。

 

注文の増加に応じて設備を拡大し、

スタッフを雇って生産本数を増やした結果、

希少性を損なってしまうケース。

 

あるいは、評価を高める努力をせず、

生産本数を絞ったままにした結果、

知名度が上がらず、

マイナーな存在から抜け出せないケース。

 

既に「消費」されてしまった

キューメーカーも数多く存在するし、

将来が期待できるメーカーも生まれている。

 

K的ランキングも、数年後には

すっかり入れ替わっている可能性があるし、

そうなるべきだとオレは思っている。

 

もし新たな依頼があれば調べるぜ。

よろしくな、BD!

 

(to be continued…)

 

Detective “K”についてはこちら

 

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