〈BD〉菅原利幸、タップのこだわり。その3「日常のメンテナンスと交換」

Toshiyuki Sugahara
Toshiyuki Sugahara

 

「違いのわかる技巧派」菅原利幸プロの「タップ論」。

 

3回目(最終回)の今回は、

菅原プロの日常のタップメンテナンスと

タップ交換についてうかがいました

(※1回目はこちら。2回目はこちら)。

 

…………

 

Toshiyuki Sugahara

1972年9月17日

JPBA32期生

『東日本男子プロツアー』優勝1度

『GPE』優勝4度

使用キューは『HAKU』(プレー、ブレイク、ジャンプ全て)

使用タップは『KAMUI BLACK S』(プレーキュー)

チョークは『KAMUI 1.21β』と『Masterプレミアムモデル』

ケースは『ジョーポーパー』

所属ビリヤード場は『アリス』(東京)

 

…………

 

 

―日頃、タップのメンテナンスは

どんなことをしていますか?

 

「日常的にやるものとしては、

タップの頭の『目起こし』です。

これを欠かすことはありません。

 

試合前に必ず1回やりますし、

普段の相撞きの時もやっています。

セットマッチであれば、

9先を1回やる間に1~2回ですね。

 

もうルーティンとして染み付いていて、

『目起こししなきゃミスキューしてもしょうがない』

ぐらいに思ってます。

 

でも、そんなにしつこくやっている訳ではないです。

ヤスリを軽く転がして、

天面に小さな凹みを作るぐらいの感覚です」

 

 

――さっき写真を撮っていて思ったのですが、

R(天面の丸み)はそれほど付いてないですね。

 

「たしかにそんなに丸くないと思います。

 

よく『丸い方が見越しが出にくい』とか、

『尖ってる方が思った撞点を捉えやすい』と

言われていますが、

結局それでは、絶えずRの形を気にしながら

撞くことになると思います。

 

それが僕には煩わしく感じられますし、

そもそもいつも同じ形状であれば

誤差も何もないだろうし、

見越しの量が変わる訳ではない。

 

ということで、このRは、

普通にチョークを塗り続けることで

できた丸みをずっと保ってるだけです。

特別に丸くすることはしないですし、

昔からこのぐらいのRです。

 

僕はチョークの塗り方が常に一定なんです。

だから、チョークの減り方も

タップの削られ方も変わりません」

 

――つまり、タップ交換の時に大まかにこのRにしたら、

後でもう補正しないということですか?

 

「しないです。もうそのまま、

チョークに削られるのに任せています(笑)。

ですから、目起こしの時も

Rを変えるようなことはしないです」

 

――側面のケアはどうでしょうか?

 

「濡れた布とかで軽くサッと拭くぐらい。

あとはたまにサンドペーパーの裏側で

キュッキュッと磨くぐらいです」

 

――タップ交換についてお聞きしますが、

どのぐらいのペースで替えていますか?

 

「通常であれば年間で5~6個でしょう。

 

ただ、集中的にタップをテストする

こともありますので、

それも含めるともっと多くなります」

 

――通常だとどんな時に替えるんですか?

 

「基本的には『試合日程を見て』ですね。

タップの厚みではなくスケジュール優先です。

 

本番2週間前には替えないようにしているので、

まだまだ使える状態であっても、

早めに替えるということはよくあります。

 

それが報われているかどうかは別として(笑)、

僕はずっとそういう風にやっています」

 

――では、試合が少ない時期などは

一つのタップを長く付けていることもありますか?

 

「ありますが、それでも3ヶ月はいかないと思います。

僕は筆圧ならぬ”チョーク圧”が結構強い方で、

タップが削られていっちゃうので

薄くなるのが早いんです。

 

ちなみに、チョークも割れやすいですよ。

チョークの角の部分って使ってる内に尖るでしょう。

あそこの部分がパキパキ割れちゃう(笑)。

それでも圧は変えずにそのまま塗っちゃいますけど」

 

――そうやって薄くなったタップと

付け替えた直後のタップは、

同じ硬度のものでも打感は異なりますか?

 

「ええ、厚みが変わるとさすがに少し硬度が変わります。

『S』であっても、薄くなっていくと

やっぱり若干硬く感じますね。

 

ただ、KAMUIタップはその変わり方というか、

厚みによる硬化の変化の度合いは

非常に少ないと感じています。

 

それは競技者としてはすごくありがたいことで、

過去の単層タップの時代では

ちょっと考えられないぐらいの変化の小ささです。

KAMUIタップのクオリティの高さを

その点からも感じています」

 

――今、タップ交換はご自身では

やっておられないとお聞きしています。

 

「はい、もともとは自分でやっていて、

上手く替えられる自信もあるのですが、

 

レーシックの手術を受けてから、

老眼という訳ではないのですが、

手元が見づらい状態になってしまいました。

 

もし自分でやるとしたら

老眼鏡をかけないといけない。

でも、目のことを考えると、

できるだけかけたくないんですよね、老眼鏡は。

 

また、僕は日中は別の仕事をしていることもあって、

お店にいられる時間も限られています。

 

なので、付き合いが長くて気心の知れた

『アリス』(所属店)の店長にお願いしています。

 

スペアシャフトを持ってないものですから

店長はいつも怖がっていますが、

まだ一度も飛んだ(外れた)ことはないです(笑)。

 

それと、年に何回か

『HAKUキュー』の工房に行くことがあって、

最低でも年に1回は先角のチェックを

してもらうのですが、それと同時に

その場でタップを替えていただくことがあります」

 

――そのお2人は、菅原プロのタップの

Rの度合いまで熟知しているんですか?

 

「いや、2人とも私の基準より丸くしてくださるので、

直後に自分のRに戻すという感覚ですかね。

 

で、一旦自分のRになってしまうと、

その後は一切変えることがないです」

 

――タップ交換を他の方に任せるようになって

どのぐらい経ちますか?

 

「たぶん8年ぐらいです。

僕がレーシックの手術を受けてから

それぐらい経つと思うので」

 

 

――さっき撮影した革裁ちナイフを

アリスの店長に渡してやってもらうのですか?

 

「いや、あれは完全に自分だけで使ってます。

 

ハードショットの練習をしていたりすると、

『S』を使っているとわずかにサイドが膨らむことがあるので、

それを整えるのは自分でやってます。

その作業なら手元がはっきり見えなくても

感覚的にできますので」

 

――単なるイメージですが、

菅原プロはもともとタップ交換が

すごく上手そうな印象です。

 

「目のことがなければ、

今でも問題なくできると思ってます。

 

僕は以前、ここ(アリス)の従業員をやっていたので、

お店のキューからお客さんのキューまで、

たくさん替えてました。

クレームをもらったことはありません(笑)。

自分で付けたタップが試合で飛んだこともないです」

 

――KAMUIタップは付け替えた瞬間から

すぐ試合で使えると思いますか?

 

「やったことはないですが、

仮にそういう状況があったとしても

大丈夫だと思えるぐらい信用しています。

タップの品質にバラツキがないので、

その点ではなんの不安もありません。

 

ただ、タップの厚みが変わると

硬度がわずかに変わってしまうというのと、

キュー先と手球との距離感が変わってしまうので、

その2つの理由から、試合本番まで

最低でも2週間以上間隔を空けるのが理想です。

 

だから、本当に緊急の場合には、

新しいタップを付けて、すぐ削って、

厚みを古いのに合わせて使うでしょうね。

 

幸いなことに

そんな状況に陥ったことはないですが、

KAMUIタップなら、厚みさえ揃えれば、

その場はしのげるだろうと思っています」

 

(了)

 

菅原利幸のタップのこだわり。その1その2

 

 

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