〈BD〉「持ち主を不幸にする伝説のキューがあるってホント?」――Detective “K” episode 02

 

オレの名は、K。探偵屋だ。

 

だから皆オレのことをDetective "K"と呼んでいる。

 

ビリヤードの道具、キューの調査なら任せてくれ。

 

ぷるぷるぷる……。

 

おっと、BDからの電話だ。

 

今回の依頼は、

「不幸にするキュー」にまつわる調査だ。

 

「不幸のキューがあるって伝説、本当ですかぁ?」

 

ふっ。

 

迷信や霊感ってなものが、ビリヤードにあるのか?

 

探偵屋は、そもそも信じてないだろうって?

 

おっと勘違いするなよ。オレは信心深いんだ。

なにしろ敬虔な仏教徒だ。

数珠にはこだわっているぜ。黒檀で作られたやつだ。

 

……わかった。

あえて調査はせずに、オレの経験を話してやろう。

 

信じるか信じないかは、アナタしだ……。

いや、好きにしてくれ。

 

*****

 

もうずいぶん前のことだ。

 

「キューの価値を調べてほしい」

という依頼を受けた。

 

クライアントは、キューのオーナーから

相談され困っていたプロプレイヤー。

 

まぁ、よくある仕事だ。

 

クライアントに会って、

キューの画像を見せられて驚いた。

 

めったに出てこない、寡作メーカーの作品だ。

 

息が止まり、

同時に寒気がするような感覚に襲われた。

 

実物を見ない事には詳しいことは言えないと告げ、

次のアポを決めて別れた。

 

*****

 

その数日後、オレは突然、高熱を出して倒れた。

 

「貴重なキューが待っているうぅぅぅ……」

 

熱にうなされつつ一週間経過し、約束の日も過ぎた。

 

悪いな、仕事はなかったことに……と思い電話すると

 

「回復するまで待つ、とオーナーが言っている」

との意外な返事。

 

オレの事を評価しすぎだぜ……。

 

だが、さらに一週間動けなかった。

 

*****

 

 

二週間経過し、やっと動けるようになったオレは

クライアントに指定された玉屋に向かった。

 

朝10時。開店前の静まり返った店だ。

 

中に入ると、

華台の上に問題のキューが置かれていた。

 

動悸が高まる。

 

他に例を見ない、独特のデザイン。

贋作や他メーカーのキューではない。本物だ。

 

経年変化はあるものの、コンディションも悪くない。

 

「オーナーは、撞いても構わないと言っている」

 

クライアントは、真顔で静かにオレに伝えた。

 

二週間メシもろくに食えなかったんだぜ。

 

それでも撞かなきゃ、キューはわからない。

ったく、探偵屋ってのは……。

 

病み上がりの身体は、構えてもふらつく。

 

一球撞いてみた。

 

タップが、やや甲高い音を立てて手球をとらえ、

生き物が身震いするような感触がグリップに伝わった。

 

手球は確実に的球をヒットし、ポケットに沈めた。

素晴らしいフィーリングだ。

 

フォロー、ドロー、逆ヒネリ、キリカエシ、

極薄カット。どのショットもピタリと決まる。

 

ちょっと待て。

 

なぜ、オレがこんな球を撞けるんだ?

 

奇妙だ。

 

このキューにオレが操られている?

 

まさかな……。

 

気付くと、6番をバンクショットで

サイドに沈めれば取り切れる配置。

 

そこでオレは、

クライアントに思ってもいない言葉を口走った。

 

「このショット、入ったらオレがコイツを買う」

 

6番をサイドからワンポイント目に

クッションさせれば、手前のポケットに入る。

ショットラインが、妙にくっきりイメージできる。

 

……そう、ただそこに向かって撞けばいいんだ。

全ては思い通りだ……

 

思い通り、だって!?

 

その瞬間、オレはショットした。

 

最初から、そうなることがわかっていたかのように、

跳ね返ってきた6番は、

乾いた音を立ててサイドポケットに吸い込まれた。

 

その場でオレはオーナーに電話し、

 スイス銀行の秘密口座いや違った、

ネット銀行口座にある、

 ありったけの金を振り込むことで、

交渉が成立した。

 

*****

 

単に評価するだけだったはずのキューを

衝動的に手に入れた、数週間後。

 

このキューの素性や来歴を調べるため、

さる情報筋に当ってみた。

 

「そのキュー、あなたが手に入れたのですか?」

 

どういう意味だ!?

 

「私も又聞きですが、そのキューは、

最初の持ち主が病気で撞けなくなったため、

知人に貸し出していたそうです。

 

ところが、その知人は

無断でキューを売ってしまったそうです。

持ち主はそのことを知らないまま亡くなりました」

 

なんだって?

 

「それ以降、

持ち主は転々と変わっていったのでしょう。

キューは長らく所在不明だったのです。

今頃出てくるとは驚きです」

 

やっと気が付いた。

 

オレが高熱を出してぶっ倒れたのも、

このキューのせいだ……。

 

コイツは最初、オレに素性を調べられることを

拒んだんじゃないのか?

 

とすると、病み上がりのオレを操るようにして、

ナイスショットを連発させたのが、

コイツの意思だったとしたら?

 

次はオレの番じゃないか!

 

震えと寒気が止まらなくなった。

 

情報筋が、別れ際、一言つぶやいた。

 

「K、大切にしてくださいね。身体もキューも」

 

*****

 

で、そんなおっかねえキューをどうしたかって?

 

神社に奉納でもしたとでも思うか?

 

コイツは今、オレが封印している。

 

だがもし、オレがキューを譲りたいっていったら、

コイツかもしれねぇ。

気を付けた方がいいぜ(笑)。

 

不幸になるかどうかは、譲ってみなきゃわからんがな。

 

まぁ、手に入れることで、

彼女はできるわ身長は伸びるわ

期末テストの点数が上がるわ……という、

幸運のキューもどっかにあるかもしれんな。

 

ただ、これだけは言える。

 

キューコレクションという因果な趣味にハマることで、

不幸を招く可能性はあるってことだ。

 

またなんかあったら聞いてくれ。

 

よろしくね、BD!

 

(to be continued…)

 

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Detective “K”――ディテクティブKについてはこちら

 

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