「神様」「生ける伝説」と言われる
プレイヤーは数あれど、
現代ビリヤード史でこの人を越える人は、
後にも先にもいないでしょう。
ベルギーが生んだ
スリークッション（キャロムビリヤード）の神様、
レイモンド・クールマンス
（Raymond Ceulemans）。
現在、77歳になるクールマンスは、
その功績を讃えられ、
国からナイトの爵位を与えられています
（名前に「Sir」の称号が付きます）。
知れば納得のその戦績は……
●世界選手権35勝
（スリークッションで23勝＋
他のキャロム競技で12勝）
●ヨーロッパ選手権48勝
●ベルギー選手権61勝
「主な」戦績だけでこれです。
勝ち星の多さを指して付けられた
ニックネームが「Mr.100」ですが、
100勝をゆうに超えています。
スヌーカーの世界にも
ポケットの世界にも
超一流と呼ばれる人がたくさんいますが、
ここまで圧倒的・支配的な人は
現代ビリヤードの歴史において
クールマンス以外にはいないでしょう。
…………
なんで、いきなり
クールマンスのことを紹介しているかと言うと、
撮れたてほやほやのプレー動画が
youtubeにアップされたから。
今も地元ベルギーでは試合に出ることも
あるというクールマンスですが、
海外で撮られた動画となると
かなり久しぶりなんじゃないでしょうか。
以下の映像は、
米カリフォルニアのビリヤード場
『ミリオンダラービリヤード』で開催された、
『USBAツアー・インターナショナル・オープン』
という試合の前日に、
急遽催されたという
40点先取のエキシビションマッチの模様です。
約55分ありますが、
始めの10分ぐらい観るだけでも
雰囲気が掴めると思います。
相手は、クールマンスの一世代下で、
こちらも超のつく「天才」、
スウェーデンのトルビヨン・ブロムダールです。
クールマンスの背中を追い掛け、
凌駕すべく戦い続けてきている
52歳のブロムダールは、
●世界選手権4勝
●ヨーロッパ選手権8勝
●スウェーデン選手権24勝
●ワールドカップ42勝
と、「神様」には及ばないまでも
現役世代では最高峰の戦績を誇っています。
…………
このエキシビションを観ればわかるように、
お客さんもそれほど多くなく、
ブロムダールの格好もラフで、
空気的には急造イベント感が漂ってはいます。
しかし、互いにさくさく撞いていく中にも
神様と天才、それぞれの持ち味が、
十分に出ているのではないかと思います。
クールマンスはとことん勝ち負けに
こだわるスタイルで厳格な球を撞くと、
過去に名勝負を演じた小林伸明先生
（1974年クールマンスを破って
初の世界チャンピオンに輝いた）
からうかがったこともあります。
ブロムダールは世界デビュー当時
「革命児」と言われたように
感性的でダイナミックなプレーをします。
こう言っては失礼ですが、
今もクールマンスの動きやストロークに、
高齢者であることを感じさせるような
緩慢さは全くありません。
このエキシビションマッチのアベレージは、
クールマンスが「1.0弱」で、
ブロムダールが「2.0」。
今はかわいいひ孫さんもいるクールマンス。
77歳で「1アベ」が出るなんて、
ちょっと信じがたいですが、
世界中のビリヤード愛好家に
「何歳になってもプレーできるんだ」
という勇気を与えてくれているようです。
日本で最後にプレーしたのは
2005年11月の
『ザ・チャンピオンズトーナメント』のはず。
幸いにも、
BDはそこでクールマンスのプレーを
観ることができたのですが、
あれから10年経っても
ほとんど衰えてないことにとても驚いた、
そんな動画でした。
なお、「神様」と「天才」を招聘して、
このエキシビションの翌日から開催された
トーナメント本番では、
あっさりブロムダールが勝ったようです。
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