増田真紀子・第15期女流球聖位

「眼力」で悔しさを晴らす初戴冠

2024年4月

© probilliardseries 2024
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応援幕の文字バックに無数に

散りばめられた「眼力」の文字。

 

まさに眼力を感じる戴冠劇だった。

 

西日本代表・増田真紀子は、

第12期以来、再び女流球聖最終決戦の場、

『マグスミノエ』に立ち、

 

東日本代表・坂田夕紀と

第14期球聖位・梶原愛を倒した。

 

第12期挑戦者決定戦で敗れた

「悔しさを晴らしたい」、

その一心で鍛錬してきた増田は、

 

2日間、強い決意と集中を

その表情にみなぎらせ、

鋭い眼力で的球を見つめ続けていた。

 

その引き締まった顔つきは、

ゲームボールを入れた直後、

一気に歓喜にほころんだ。

 

→ 大会結果記事はこちら

最後まで戦い抜くことができてホッとした


 

――長い2日間を戦い終えた今の心境はいかがでしょうか。

 

増田:もうただただ嬉しいです。勝った後、たくさんお祝いの言葉をいただきました。こんなにもたくさんの方が応援してくださっていたなんて思ってもいなかったので、本当に嬉しいの一言ですね。そして、ホッとしました。

 

――安堵の理由は?

 

増田:実は『西日本A級』(3月25日)の翌日に転んで腰の骨を折ってしまったんです。それでしばらく入院生活をしていました。

 

――ええっ、そうだったのですか。

 

増田:ええ。『西日本A級』とこの『決定戦』(『挑戦者決定戦』と『球聖位決定戦』)の間には、『アマナイン』の大阪予選もありましたが、お医者さんに言って無理やり退院させてもらいました(※予選通過)。そしてこの『決定戦』もちゃんと練習ができていない状況で挑みましたが、今まで練習してきたことに自信を持ってやるだけだと思っていました。その気持ちで最後まで戦い抜くことができてホッとしています。

 

――腰の怪我も抱えながらの2日間。体力は保ちましたか?

 

増田:もともと体力に不安のある状態で土曜日の『挑戦者決定戦』を戦ったんですが、一気に大きく削られた感覚でした。日曜日の『球聖位決定戦』はもう気力のみで撞きました。でも、ホームの『吹田中央』の皆さんをはじめ、応援団の皆様のサポートが最後まで背中を押してくれました。

 

――ちなみに、試合中も腰に痛みが?

 

増田:常に痛かったです。撞いていても椅子に座っていても。でも、そこは痛み止めと気力でなんとか。前回敗れてからせっかくもう一度いただけたチャンスなので、「絶対に逃したくない」という気持ちだけで乗り切りました。

 

――2日間の球の内容はどうでしたか?

 

増田:どちらもまあまあだったかなと思います。身体への負担も考慮しながらやっていましたし、普段なら撞けているのに撞けない球も多々あったんですが、それでも最後まで頑張って撞けたので、自分に対しては高評価をあげたいです。

 

――2日間ずっと集中した面持ちで球を入れ続けていた印象です。取り切りに迫力がありました。

 

増田:そうですか。それは、横断幕にも書いてあった通り「眼力」です(笑)。もう眼に力を入れて狙い倒してましたね。

 

――土曜日の『挑戦者決定戦』(vs 坂田夕紀)は3-0のストレート勝ち。前回(2020年第12期)の成績を一つ上回りました。

 

増田:この3年間は本当に悔しさから研究と練習をし直しました。その努力が報われたというか、練習の成果がちょっとは出せたのかなと思います。坂田さんもすごく上手な方なので、本当に気を抜かずに撞いていました。半分はラッキーをいただいた形で勝利させていただいたと思っています。

 

感謝の気持ちでゲームボールを入れました


 

――日曜日の『球聖位決定戦』(vs 梶原愛)の前夜や当日朝の心境は?

 

増田:自分の中の自分との戦いだと思って挑みました。前回梶原さんに敗れていますし、梶原さんのスタイルはわかっていますが、相手や展開は関係なく、自分の中の自分、弱気な自分、諦める自分……それを何とか食い止めたい。考えていたのはそればっかりでした。身体はきつかったですけど、とにかく集中して撞こうと。一球一球ゆっくりでいいから大事にしようと思っていました。

 

――形が出来た時には良いリズムで一気に取り切っていました。普段のスタイルやテンポが出た感じですか?

 

増田:いや、自分では特に試合ではゆっくり焦らずに撞いているつもりなんですけどね。平場ではもっと速くてもっとミスする感じです(笑)。今回は冷静さは欠かさずに、とにかく目の前に来た球をどうするかだけを考えようと思っていました。

 

――テーブルコンディションには合わせられましたか? 引きやすいテーブルだったかと思います。

 

増田:そうですね、引けやすいし、クッションが思った以上に伸びる印象で難しかったですね。でも、あまりそれに左右されてしまうと余計おかしくなるので、ちょっとずつ合わせたり変えたりはしていましたけど、基本的には普段通り撞くようにしていました。

 

――『球聖位決定戦』の最終セット(第7セット)は梶原選手に先行される展開となりましたが、焦りなどはなかったですか。

 

増田:焦りはなかったです。劣勢でしたし、ちょっとだけ諦めかけた瞬間もありましたけど、試合は最後まで何が起こるかわからないので。最後の9番、ゲームボールを入れるまでなんとか持ちこたえられた感じです。「最後の最後まで諦めない」というのはいつも試合で自分に言い聞かせています。

 

――最後は相手の5番セーフティの後、5番カットから取り切りました(第7セットを7-6で勝利)。あの配置を迎えた時の心境は?

 

増田:5番をカットで入れると、2クッション目でサイドへのスクラッチがある形だったので、それは少し気持ち悪かったんですけど、「スクラッチさえしなければ行ける。この5番さえクリアできたら取れる」と自分を信じて撞きました。

 

――ゲームボールを入れた直後、拳を突き上げ、表情を緩ませてご主人と抱擁していました。

 

増田:この2週間、主人は何から何までサポートしてくれましたので、感謝の気持ちでゲームボールを入れました。あのハグは「2人でこの2週間を乗り切ったんだ」という気持ちが出たハグでしたね(笑)。

 

↑ 最終第7セット。6--6の最終ラック(第13ラック)は1h54minより

このタイトルを関西に取り返せたことも良かった


 

――初めて女流球聖位になりました。

 

増田:もちろん私個人としても嬉しいんですけど、女流球聖というタイトルをやっと関西に取り返すことができたことも良かったです(※2010年・第2期の久保田知子〈現JPBAプロ〉以来)。「私達もやれる」と関西の女子アマ皆の士気が上がって行って、皆で頑張れたら良いなと思っています。

 

――逆に今回見えた反省点や課題とは?

 

増田:たくさんあります。まだまだ上手く撞けない球やネキストが出せない球がありますし、テーブルコンディションに合わせる能力も低くて……本当にいっぱいありますね。怪我が治ったらもう一度今回のプレーを復習して、ゆっくり一つずつ練習しようと思います。

 

――今後の目標は?

 

増田:今年もまだこれから大きい大会がいっぱいあります。近いところでは『アマナイン』です。その他も出られるものには全て出て、さらにタイトルを勝ち取って行きたいです。

 

――最後に応援してくれた方々に一言。

 

増田:ずっとサポートしてくれた主人をはじめ、『吹田中央』の皆さん、普段練習に付き合ってくれている皆さん、応援してくれた皆さんに本当に感謝しています。ありがとうございました。今後もこの女流球聖という称号に恥じない球を撞きたいので、もっともっと練習していきます。来年もまた応援していただけたら嬉しいです。

 

(了)

 

西日本代表 :増田真紀子(ますだ まきこ)

出身:北海道/在住:大阪府

所属店:『吹田中央ビリヤード』(大阪府)         

使用プレーキュー:ADAM JAPAN 『MUSASHI 十二単』(シャフトは  ACSS PRO、タップは ZAN S)   

ビリヤード歴:約12年(※間に約12年の休止期間あり)

女流球聖戦参加歴:今回が5回目(これまでの最高戦績は第12期西日本代表)

全国アマ公式戦入賞歴:

2020年(第12期)『女流球聖球聖戦』西日本代表       

2022年『アマナイン』(全日本アマチュアナインボール選手権大会)優勝

2024年『第15期 女流球聖位』

 

 

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