今年も現球聖位・増田真紀子の
ラック奪取力、すなわち入れ力が
光る一戦だった。
2026年『女流球聖戦 球聖位決定戦』。
各セット、序盤〜中盤は両者並走。
互いにブレイクが決まらず
マスワリで走れる展開にならず、
プッシュアウトの駆け引きや
セーフティ戦を経て
ポイントを取り合う展開に。
挑戦者・鳥谷奈央にもチャンスはあった。
しかし、セット終盤に
ここぞという球をズバッと決めて
取り切っていたのは増田だった。
意図的に攻めに比重を置いたり、
いちかばちかの勝負に出たという
雰囲気では全くなく、至って自然な、
通常モードと言えるプレー。
一言、強かった。
その戦いぶりと、
「もう来年の防衛戦に向けて
研究を始めています」という言葉に、
長期政権誕生の予感を抱いた。
大会翌日に試合を振り返ってもらった。
→ 大会結果記事はこちら
――2年連続の防衛達成。在位3期目となりました。
増田:今年も去年と一緒で、本当に「ホッとした」という安堵の気持ちが一番です。
――その安堵感は「勝利」という結果に対してですか?
増田:それもあるんですけど……「1年の練習の成果が無駄になってしまうような試合にはしたくないな」という気持ちに対してですね。日々腕を磨いて来た自負もあったので、「この1日で1年の練習を無駄にしたくはない」というプレッシャーがありました。
――昨年はご自身のプレー内容について「50~60点ぐらい」と言っていましたが、今年はどうでしたか?
増田:今回も良いところ半分、悪いところ半分って感じです。だから何点なんだろう、防衛は出来たので60~70点ぐらいというところですね。
――「球聖位決定戦」を撞くのは今回が3年目。近年の増田さんの年間カレンダーは決定戦の日程を中心に決まって行くのでしょうか。
増田:はい。今回も試合が終わった直後からもう来年の球聖戦に向けて気持ちが入ってます。昨日の試合映像も数回チェックしました。悪いところも良いところも全て頭に叩き込んでビリヤード場で練習します。
――それはすごい。今年は当日に向けてどんな練習や準備をしていましたか? そして、どんなテーマを持って当日に臨みましたか?
増田:練習では主にフォーム、撞き方のところで改善できる部分を改善してきました。おかげで以前よりちょっとは安定してきたかなと思います。当日はとにかく「自分の世界に入れたら良いな」と。いざ試合が始まってみたら入れたり入れなかったりで、「あれ、違うぞ」と思う時も結構ありましたけど(苦笑)。
――テーブルコンディションにはすんなり対応できましたか?
増田:いや、時間がかかりました。前日夜に会場(マグスミノエ)で練習させてもらった時と当日ではコンディションがちょっと違ってました。当日はちょっと重めに感じられて、力加減を合わせるのに少し時間がかかりましたね。
先週の『女流球聖戦 球聖位決定戦』。防衛に成功した増田真紀子選手が「あれでスイッチが入った」と語る、第1セット第5ラックの3-6コンビ。いや、すごい。※音声はありません。もうすぐインタビュー公開します。 pic.twitter.com/8042vTIk3T
— Billiards Days (@BD_koba_ta11) April 10, 2026
――第1セット、スタートから相手に4点先行されました(0-4。7先)。この時の心境は?
増田:落ち着いてました。早くコンディションに合わせて自分の球を撞きたいという気持ちはありましたけど、展開は気になってなかったです。自分に「大丈夫」と言い聞かせてましたし、焦ったりはしなかったです。
――第5ラックにようやく1点目(1-4)。3-6コンビも含めて力強い取り切りでした。
増田:あの3-6コンビでスイッチが入ったような感覚がありました。やっと球の神様が降りてきてくれたような。まだ1点取っただけなので先は読めなかったですし、「行ける」とかは思わなかったですけど、気持ちはすごく落ち着きました。
――第1セットは1-5ビハインドから増田選手が6ラック連取で獲得しました(7-5)。最初のセットを取れたことはとても大きかったのではないかと。
増田:その通りです。第1セットって本当に大事なのでプレッシャーのかかり方が違います。思うように撞けてたり撞けてなかったりで内容はまだチグハグでしたけど、「何が何でも食らい付いて行ってやる」っていう気持ちでやってました。
――第2~第4セットは、序盤は競り合いでしたが、中盤から増田選手が点をもぎ取っていく迫力を感じました。まさに横断幕の「入れて入れて入れて入れて、入れてまいります」というコピー通りの決定力で。
増田:ああ、そうでしたか。自分でもどんどん自分の世界に入って行っている感覚がありました。思ったように撞ける球が増えて来て、「良いショットが出来たな」「行ける行ける」と自信も出てきました。
――とはいえ、ビリヤードはミスが避けられない競技です。増田選手は入れミスをした時にどう気持ちを整えていますか?
増田:いや、別にないですね。ただ「下手だな」「帰って練習しよ」って思って処理するだけです。少なくとも引きずることはありません。試合中にミスを引きずったらダメなんで、宿題として溜め込んでいって、試合が終わってからその球を練習するようにしています。
――増田選手は試合中に相手選手の球はしっかり見る方ですか?
増田:見てます。鳥谷選手が上手なことは前からわかってましたし、球を見て気持ちが揺れたりすることはなかったです。私は私でこの1年間努力してきた自負があるので「負けないぞ」という気持ちでした。
――セットカウント3-0で王手をかけて迎えた第4セットは、さらに状態が上がっていたように感じました。
増田:そうかもしれません。やっとテーブルコンディションがわかってきて、力加減なども合ってきました。本当はそれでは遅いんですけどね(苦笑)。先にリーチをかけてたし、ちょっとだけ気持ち的に余裕が出てきたのかもしれません。
――今回は互いにブレイクがきれいに決まらなかったですね。的球が入ってもなかなか良い形にはならなくて。
増田:前日練習では結構良かったんですけど、当日はダメでした。自分があまりブレイクが上手じゃないっていうのもあるんですけど、それにしても良くなかったです。試合中に撞き方をちょこちょこ変えてました。後半は力が抜けてちょっとだけ良くなったと思うんですけど、全体的に見るとダメでしたね。「これも宿題やな」と。
――1日を振り返って印象に残っているセットや場面は?
増田:やっぱり第1セットをまくれたことが大きかったです。あそこを落としてたら、流れが鳥谷さんに行っていた可能性がありました。それは始まる前からわかっていたので、「絶対第1セットは欲しい」と思ってました。
――優勝を決めたラストラック(第4セット第10ラック)は、増田選手が土手ロングの2番を入れてから3番で一旦セーフティーを挟み、相手のジャンプショットの後のオープンな配置を取り切りました。あの時の心境は?
増田:あの2番が難球でしたし、3番のポジションが出ないというのはわかってたんで、とりあえず2番を入れて考えようと。あの2番、自分の中で入るか入らないか賭けをしてました。難球だけど、キューを真っ直ぐ振れてたら入るはず。それを確かめたくて。入れられたら、3番はセーフティーでしのげば何とかなるはずだからと。
――その3番のセーフティもしっかり決まりました。
増田:あれは上手いこと行きました。セーフティは基本的にその時の閃きで撞いてるので、上手い時もあれば下手な時もあります。
――相手のジャンプショットの後の3番からは?
増田:もう「取り切れる」、いや「取り切らないと」って思ってました。3番は色んなことをしたら外しそうだったんでイレイチです。あと、5番から7番は勝利目前で力が入ってしまったのか、ちょっと引き過ぎましたね。
――結果的に7番は少し遠くなりましたが、上がりの直前にあの距離の球を撞くのは嫌ではなかったですか?
増田:全然嫌じゃないです。外す気はしてなかったです。
↑ 第4セット。増田の上がりラック(第10ラック)は1h04min.より
――これで「球聖位決定戦」で3年連続で勝利しました。過去2回とは心境は違いますか?
増田:今回は西の鳥谷選手と東の小宮選手、どちらが挑戦者になっても決定戦を撞くのは「初」だったじゃないですか。「初めて決定戦に上がって来る選手とあの舞台で戦える」と思ってすごくワクワクしてました。始まってみたら悪いところも出ましたけど、自分の世界に入って撞けた時もあったのでそこは良かったです。
――過去2回の決定戦と比べて、ご自身の成長や進化を感じられたところは?
増田:はた目からはわからないと思うんですけど、自分の中ではショットの安定感は前よりも出てきてるかなと思います。そこは意識して取り組んできたところで、1年間の努力の成果が今回出ていたと思います。
――これで在位3期目になました。もう「球聖」として見られることに慣れてきましたか?
増田:いや、慣れてきたとは思ってないです。周りから「女流球聖位」と言われるとなんか照れ臭いです(笑)。ありがたいことなんですけど。
――冒頭で語っていたように、もう来年の防衛戦に向けて準備を始めているとのこと。具体的にはどんなところを強化していきたいですか?
増田:まだまだ知らない球も下手くそな球もたくさんあるんで、ちょっとずつ学んで、出来るようにしていくしかないです。ビリヤードは課題が無限にありますから。技術的な部分――ショットに関しては、自分でどこが悪いかわかってるので直しやすいと思うんですけど、難しいのはやっぱり「頭」ですよね。私は試合中は常に「心頭滅却」でいようと心掛けているんですけど……
――「雑念を払って心を無にすることで困難を乗り越えられる」と。
増田:そうです。でも、無になりすぎて何にも考えられない時もありまして(笑)。撞き終わってから、「今の、厚み見た?」とか「加減、忘れてない?」みたいなことがたまにあります。そこを改善して、全部の球で頭を回して行きたいと思ってます。
――わかりました。最後に応援してくれた方々に一言。
増田:応援してくださっている方、支えてくださっている方には本当に毎年感謝しかありません。自分が防衛という結果を出すことによって少しは皆さんに恩返しが出来ているのかなと思います。その意味でも今回も防衛出来て良かったです。特に感謝を伝えたいのは、家族と、(所属する『吹田中央ビリヤード』の)井上淳介さんと、中央の皆さんです。皆さん、いつもありがとうございます。また来年防衛出来るように今から練習に励みます。これからも応援していただけたら嬉しいです。
(了)
※2024年 球聖位初戴冠時のインタビューはこちら
※2025年 初防衛時(在位2期目)のインタビューはこちら
西日本代表 :増田真紀子(ますだ まきこ)
出身:北海道/在住:大阪府
所属店:『吹田中央ビリヤード』(大阪府)
使用プレーキュー:ADAM JAPAN 『MUSASHI 十二単』(シャフトは ACSS PRO、タップは KAMUI ATHLETE)
ブレイクキュー:MEZZ POWER BREAK G
ジャンプキュー:CUETEC プロペル
ビリヤード歴:約26年(※途中約12年の休止期間あり)
全国アマ公式戦入賞歴:
2020年(第12期)『女流球聖球聖戦』西日本代表
2022年、2024年、2025年『アマナイン』(全日本アマチュアナインボール選手権大会)優勝
2024年、2025年、2026年『第15期・第16期・第17期 女流球聖位』
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