喜島安広・第60期名人位

震えるほど苦しんだ防衛戦

2021年9月

 

 

ゲームボールを沈めた直後、

拳を握りしめて破顔一笑。

 

それは、胸中にたまりつづけ

発散する場面がなかった

ストレスとフラストレーションを、

一気に吹き払うような姿に見えた。

 

丸一日思うようには撞けず、

我慢の戦いを強いられた名人位決定戦。

 

 

重圧から解放されて

今までにないほどはっきりと

安堵感を顔に浮かべていた喜島安広に、

防衛への道程を振り返ってもらった。

 

…………

 

一日中気持ちが落ち着かず、腕に震えが来てました。

 

――2019年に続き今回も防衛に成功しました。在位4期目です。

 

喜島安広:すごく苦しい戦いで震えが来てましたけど、防衛が出来ただけで嬉しいです。今はもうそれが全てです。

 

――苦しんだ要因とは? テーブルコンディションでしょうか、それともこの特別な雰囲気でしょうか?

 

喜島:もちろん決定戦独特の雰囲気にも緊張しましたけど、一番はボールだったかなと。試合用にニューボールをおろしているんですが、その感覚を掴めないまま試合が終わった感じです。特にヒネった時の動きに合わせられなくて苦労しました。取り切れても「たまたま」という感じしかしなかったです。

 

――とはいえ、第1セットはまずまずの内容で取れたのではないかと。

 

喜島:ボールコントロールが出来てないなと感じながら、それでもなんとか繋がってくれた感じでした。先に自分が1セット取れたとはいえ気持ち的には全く落ち着かなかったです。一日中ずっとそうでした。それで腕に震えもきちゃってて。

 

――喜島選手が「震えた」と言うのは過去になかったように思います。

 

喜島:今まであまり経験ないです。本番前の1週間ぐらい良い感じで練習出来てたんです。ブレイクも決まっていてマスワリも結構出てました。でも、蓋を開けてみたら今日はブレイクもポジションも全然で(苦笑)。手球が言うことを聞いてくれなくてだいぶパニックになってました。練習との落差もあったからだと思うんですけど、ちょっと違う世界に行きかけてました。

 

イメージ通りのジャンプが出来た。そこはプラスの要素。

 

――そこまでだったとは……。逆に良かった点とは?

 

喜島:ジャンプショットだけはだいぶ良かったです。今回はジャンプキューを2本使ってたんですけど(キューテック『プロペル』とキースアンディ『ブラックジャック』)、その使い分けも上手く行きましたし、だいたいイメージ通りのジャンプが出来ました。ポジションミスをジャンプでリカバー出来た場面もあったんでだいぶ助けられたなと。そこは数少ないプラスの要素かなと思います。

 

――初対戦の挑戦者・木村善広選手については?

 

喜島:今日1日だけでわかったつもりにはなれませんし、木村選手自身にとって今日の内容がどのぐらいの出来だったかは全くわかりませんが、少なくとも今日撞いた限りでは、どんな場面でも落ち着いてやるべきことを考えることができて、きれいな球を撞く方だなという印象を持ちました。今回は急に繰り上げでの出場が決まったということもあって、納得行く準備ができていた訳ではないと思います。それでも正直言って今日は僕よりも落ち着いていたのではないかなと。ほとんど感情を表に出さずに冷静に撞いていましたね。

 

――2セット目を失って1-1に並ばれたましたが、その後は並ばれることなくリードを保って進みました(最終セットカウントは5-2)。

 

喜島:あの2セット目は取られ方が良くなくて結構痛かったです。僕がリードしてたんですけど(第2ラック終了時で喜島215点 vs 木村25点)、僕のミスから徐々に追い上げられて、結果的に逆転でセットを取られた。精神的にかなりきましたね。でも、3セット目を良くないなりになんとか取り切れて、セットカウント2-1に出来た。全く気持ち的な余裕はなかったですけど、展開的にはあの3セット目を取れたのはデカかったと思います。

 

――4-2で先にリーチを掛けた時も「行ける」「ここで決めよう」とは思えなかったですか?

 

喜島:全くです。むしろ早く終わってほしいと願うような心理状態でした、苦しすぎて(苦笑)。

 

今まで経験したことのないパニクり方でした。

 

――最終セット(第7セット)の終盤、165点ランで撞き切って上がりました。これがこの日のハイエストでした。

 

喜島:あのランも手球がコントロールできてなくてしんどい気持ちのまま撞いてました。例えば8番から9番とか、自分では撞きづらにしないようにコントロールしているつもりだったんですけど、撞きづらになってしまう。ホントに大変でした。

 

――ゲームボールを入れた瞬間は?

 

喜島:「ホッとした」の一言です。今までも優勝コメントで何度かそう言ったことがあると思うんですけど、今日は今までと安堵感の次元が違います。負けてもおかしくないような内容だったと思うし、自分のメンタルが安定していた時間は少なかったし、今まであんまり経験したことのないようなパニクり方、チビリ方をしてたと思います。

 

――そこをどうこらえて撞いていたのでしょう。

 

喜島:とにかく我慢して撞いていました。今の自分の状態では出来ることは限られているからそこでベストを尽くすしかない。その姿勢だけは絶対に貫こう、そして、どう展開が動いても一喜一憂せずにいようと。……もうそれどころじゃないぐらいに追い詰められてましたけど(笑)。

 

まだまだ伸びしろがいっぱいあるんじゃないかなと。

 

――裏返すと、得るものが多かった戦いでもあったのでしょうか。

 

喜島:すごく良い課題をいっぱいもらえました。他の大会でなかなかここまでの精神状態になることはなかったですし、それはたぶん、ボールへの対応も含めて技術面で足りないものがあるからそうなったとも言えると思います。良くない状態の時の実力の底上げをしないといけないということに気付かせてもらえました。

 

――技術とメンタルの両輪ですね。

 

喜島:はい、これは前から自分でもわかってるんですけど、すごく良いショットをした後とポジションミスをした直後が課題で、気持ちの切り替えがちゃんとできてなくて悪いショットをすることがあります。今日もそれが出てしまっていたし、意識していてもなかなか解決できないです。そう考えるとまだまだ伸びしろがいっぱいあるんじゃないかなと思います。

 

――わかりました。最後に応援してくれた方々へ一言。

 

喜島:コロナ禍で入場制限もある中で、『セスパ東大宮店』と『5&9』のお客さんやお世話になっている方々に会場とライブ配信で見て応援してもらえたことは本当にありがたく思っています。そして、準備や運営をしてくださったセスパ東大宮店のスタッフとSPA・JAPAの方々にも感謝しています。特に今回SPAの奈良崇さんは、SPAとしての仕事や会場設営もしながら、練習にも付き合ってくれました。ありがとうございました。次は今のところ『アマローテ』(11月)に参加する予定です。今日の経験を活かしてより良いプレーができるように練習します。

 

(了)

 

 

Yasuhiro Kijima

1983年1月7日生 埼玉県出身・在住

所属:『セスパ東大宮店』、『5&9』(ともに埼玉)、SPA

プレーキュー:オリビエ

ビリヤード歴:約23年

現在ある「アマ個人全国タイトル」6つ全てを獲得している↓

『第55期、第58期、第59期、第60期名人位』

『第19期~第22期、第26期、第27期球聖位』

『プレ国体』(全国アマチュアビリヤード都道府県選手権大会)

『アマローテ』(全日本アマチュアポケットビリヤード選手権大会)

『アマナイン』(全日本アマチュアナインボール選手権大会)

『マスターズ』優勝5回

また、2016年&2017年『都道府県対抗』の連覇メンバー(埼玉県。SPA)

 

 

※「聞いてみた!」の他のインタビューはこちら

 

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