〈BD〉「先角の構造と特性」――ショールームMECCA Facebookの人気投稿まとめ

 

神奈川の『MECCA Yokohama』内にある

ビリヤードプロショップ、

『ショールーム MECCA』。

 

同店のFacebookページでは

所属プロの青木絵美プロを始め、

様々なスタッフが定期的に新商品情報や、

ショップスタッフならではの記事を

投稿しています。

 

ショールーム MECCAは国内でも珍しい、

「リペア工房併設のお店」なので、

リペア担当スタッフの声が読めるのも

楽しみの一つですね。

 

さて、以下は、過去5回に渡って

Facebookに掲載された、リペア担当スタッフによる

「先角」(さきづの)記事のまとめです。

 

マニアックと言えばマニアックですが、

BDも興味深く読んだシリーズでしたので、

ショールーム MECCAの承諾を得て、

5編を一つにまとめてみました。

 

キュー先の、あの白いパーツには、

こんな構造・素材・機能があるんです。

 

※なお、リペア工房の9月の作業は

全て予約で埋まっており、

新規の依頼については、

問い合わせ順に10月の予定を案内中とのこと。

詳細はショールーム MECCAまで。

TEL: 045-326-6451

Mail: repair@mecca-web.jp

 

…………

 

 

第1回「先角の基本構造」

 

こんにちは、工房からスタッフTです。

 

今回から、

シャフト先端部にある主に白系のパーツ、

「先角」(さきづの)について、

その構造や機能などをご紹介したいと思います。

 

早速ですが、

代表的な3つの先角とそれに対応した

木部の構造をご覧ください

(※先角の素材は左からイージス2、MPI、ABS。

詳しくは後述します)。

 

A:ノーマルシャフトによく見られる構造。

「キャップ式」や「フタ付き」とも言われ、

木部の”軸”がネジ切りされています。

 

B:一般的に「突き通し」と言われる構造。

先角は空洞状になっており、

タップとの接着面まで木部が露出します。

 

C:ハイテクシャフトによく見られる構造。

AやBに比べて、木部の軸の径が太く、

短いのが特徴です。

 

初めて見た方もいるかもしれませんが、

シャフトの木部と先角は

このように凸凹(おうとつ)に

組み合わさっているのが基本的な構造です。

 

先角はキューのパーツの中でも

特に衝撃を受けやすく、耐久性が求められます。

 

さらに、シャフトの性能や打感、

音などに大きく影響する部分だということもあり、

メーカーごとに研究開発が進められ、

独自の構造や素材を採用していたりもします。

 

逆に言えば、性能面で

「もう少しトビ(ヒネった時の手球の横ズレ)を

少なくしたい!」や、

 

「もっと硬めの打感にしたい」などという

ユーザーのリクエストには、

 

先角の構造や素材を変更することで

ある程度対応できます。

 

では、具体的に、これらの構造や素材を

変更することで何がどう変わるかというと……。

 

それは続編のお楽しみということで!

 

…………

 

 

第2回「シャフトの種類による先角の構造の違い」

 

今回は先角(さきづの)の構造の違いで

何が変わるのか少しお話したいと思います。

 

先角に求められるのはまずは「耐久性」です。

 

先角はシャフトの木部を保護するために

付いているので、木部に比べて硬く、

そのため重たい素材が使われるのが一般的です。

 

画像は、

一般的なキャップ式のノーマルシャフト(右)と、

あるハイテクシャフト(左)の先角を、

軸となる木部が見えるまで

フタの部分を削り落としたものです

(※使われている素材は同じものです)。

 

注目していただきたいのは、

2本の先角の「側面の厚み」。

 

ノーマルシャフトの先角は厚く、

ハイテクシャフトの先角は薄く、

大きく異なることがわかります。

 

削り落としたフタの部分に関しては、

厚みはほとんど同じで耐久性に差はありませんが、

 

先角の長さ自体もノーマルシャフトより

ハイテクシャフトの方が短く、

側面の耐久性の違いは一目瞭然です

(※ただし、先角に加わる衝撃を

低減するような内部構造やテーパーになっています)。

 

先角側面の耐久性が低いと、

縦にヒビが入って割れたり、

プレー時にかかる圧力によって膨らんだりします。

 

先角にヒビや膨らみが見られるシャフトを

お使いの方は、木部にダメージが加わる前に、

お早めに先角を交換することをおすすめします。

 

最近ではハイテクシャフトの

ユーザーが増えていますが、

やはりこの構造からか、ノーマルシャフトに比べて

先角にまつわるトラブルが多いように感じます。

 

では、なぜ耐久性を落としてまで

先角の厚みを薄くした構造にしてあるのかというと

……それはまた次の機会に。

 

…………

 

 

第3回「先角の素材による性能の違い」

 

今回は「先角の素材」について

お話したいと思います。

 

先角の素材には様々な種類があり、

各キューメーカーの製作時期やシリーズなどで

使用されているものが異なります。

 

弊社で取り扱っている先角の素材は

基本的に以下になります。

 

●キャップ式ノーマルシャフト用

LBM、AEGISⅡ、IVORINEⅢ・Ⅳ、

白ベーク、XTC、ABS

 

●突き通し用

FIBER、MPI

 

●ADAMハイテク用

白ベーク、IVORINEⅢ、XTC、ABS

 

●MEZZハイテク用

NX

 

その他、

314/BK用「イソプラスト」

(廃盤商品のため在庫限り)や、

 

先角一体型用として

「キャンバスフェノリック」(茶・黒)もございます。

 

しっかりとした打感や耐久性を求める方、

手球を撞いた時に高い音がするのがお好みの方は

硬めの素材のLBMやAEGISⅡが、

 

左右の撞点を撞いた時の

手球のトビを少なくしたい方は

柔らかめの素材のABSやNXがおススメです。

 

ところでみなさんは、

先角を削っているところを

ご覧になったことがありますか?

 

上の2枚の写真は、硬めの素材と柔らかめの素材を

それぞれ旋盤で加工しているところです。

 

硬めの素材は削ると細かい粉になっているのに対し、

柔らかめの素材は繋がったまま削れています。

 

見た目にはそれほど違いはないのに、

削ってみると違いがはっきりして面白いです。

 

…………

 

 

第4回「先角交換作業例・その①」

 

今回は実際に、

ハイテクシャフトの先角交換をしながら、

性能がどう変わるかご説明したいと思います。

 

作業するシャフトは、プレデター社の『314-2』。

 

10枚貼り合わせ構造で、

ヒネった時の「トビ」(ズレ・見越し)が

少ないことでおなじみのシャフトです(※註1)。

 

合わせるバットが柔らかいので

シャフトは硬めの感触にするため、

オリジナルより4ミリ程度長い先角を

付けたいと思います。

 

シャフトの全長は変えずに、

木部の「軸」を4ミリ程度延長するという作業です。

 

まずはもともと付いていた先角を削り落とします

画像①)。

 

軸となる木部を延長する加工をします。

長くなったのがわかるでしょうか(画像②)。

 

この長さに合わせて先角も加工してから取り付け、

整形して、タップを付けて出来上がりです。

新品のシャフトと比べてみると、

長さの違いがわかりやすいかと思います(画像③)。

 

今回は先角の素材は『XTC』、

タップは『モーリ』のSを取り付けました。

 

実際にこのシャフトでプレーしてみると、

撞いた感触は少し硬くなり、

柔らかいタップにも関わらず、

「コキン!!」と良い音がします。

しかもトビはそこまで増えていません。

 

高めの音が好きな方には、XTCという材料は

軽くて粘りもあるのでトビが少なくおススメです。

 

(※註1)

残念ながら、314-2シャフトはすでに廃盤のため、

メーカーからのパーツ支給が終了しました。

在庫限りはメーカーでの先角交換も可能ですので

純正品の交換についてもお気軽にご相談ください。

 

…………

 

 

第5回「先角交換作業例・その②」

 

最終回となる今回は、

ノーマルシャフトの先角を加工して、

ヒネった時の「トビ」(手球のズレ・見越し)を

少なくしてみたいと思います。

 

作業するノーマルシャフトは、

弊社で使用しているハウスキューで、

軸となる木部がちぎれるように折れているもの

画像①)。

 

まず、軸の再生のため、木部の先端に穴を空けて、

そこにメイプルの棒材を入れ、新しい”軸”にします。

 

元の状態に戻すのであれば、

ここから軸のネジ切り加工をするのですが、

 

今回はシャフト先端部を軽くするため、

軸を太く短くし、それに合わせて先角も加工します

画像②。“軸”が白くて真新しい状態です)。

 

今回使用する先角の素材は「アイボリンIII」です。

 

先角を取り付けた後、タップを接着・加工して、

シャフト先端部がしなりやすくなるように

少しテーパーの調整をして出来上がりです。

 

画像③をご覧ください。

 

下が今回作業したシャフトで、

上は一般的なノーマルシャフトです。

 

素材は両方ともアイボリンIIIですが、

長さは1センチくらい違います。

 

実際に撞き比べてみましたが、

下のシャフトを使ってみると、

ヒネった時のトビが明らかに低減され、

使いやすくなっていることがわかります。

 

今回使用した先角の素材、アイボリンIIIは

硬くて重たい素材ですが、

柔らかくて軽い素材(ABSなど)に交換すれば、

さらにトビは減ります。

 

ノーマルシャフトをお使いの方で、

「トビ」でお悩みの方はぜひご相談ください。

 

(了)

 

…………

 

出典:ショールーム MECCA Facebookページ

 

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