カスタムキューを多数取り扱っている
その代表、大原秀夫氏が所蔵している
キューを見ていく企画『カスタムの輝き』
（※過去記事はこちら）。
今回は「番外編」として、
少々……いや、
だいぶ風変わりなキューをご紹介します。
それがこの
ジョー・ポーパー『ショットガンキュー』です。
ジョー・ポーパー
（Joe Porper's Creative Inventions）と言えば、
社名になっているように、
発明品的なノリの数々のビリヤードアイテムや、
大ヒットしたキューケースでお馴染みの
アメリカの総合ビリヤードメーカーです。
今も会社はありますが、
創業者であり名物"発明王"でもある
ジョー・ポーパー氏は経営にタッチしていません。
そのジョーの発明品の一つがこのキューです。
名前は「ショットガン」。
大原さんが入手したのは2006年頃。
バットとシャフトが一本の特殊な構造の
ジョイントピンで繋がっていて
完全に分離させることはできません
（蝶番型ピンとでも言いましょうか）。
弾込めのために銃身部を折った状態の
ショットガンに似ています。
プレーする時はシャフトを立ててねじ込むだけ。
シャフトまたはバットの紛失の危険性を減らし、
脱着の手間を減らしている……ということでしょう。
ものぐささん向けなキューですね。
一度は誰もが考え……ないと思いますし、
思い付いたかと言って実際に作って売ろうという人は、
世界広しといえど、ジョーぐらいしか
いないんじゃないでしょうか。
こんな構造ゆえ、
普通のキューケースに収まらない可能性があるので、
専用のケースが付属しています。
もはや便利なようなそうでないような……。
大原氏談：
「ジョーが引退して2年ぐらいした後に、
一度だけ彼が『スーパービリヤードエキスポ』で
ブースを出していたことがあって、
そこで入手しました。
彼とはよく一緒に食事したりしていた
間柄だったので、
その時も、『これ、すごいだろ』って感じで
見せられたんですよね。
うーん……と思いながら、
珍しいには違いないから買っちゃった（笑）。
たしか600ドルだったかな。ケース付きで。
これ、（キューメイニアの）
K. Kagomiyaさんも購入したはずです。
ジョーはアイディアマンだから、
常に新しいものをいっぱい作ってて、
とにかく手広くやってました。
旋盤まで売っていた。
中でもキューケースは大ヒットしましたね。
一時期日本でも海外でも、
たくさんの人がポーパーケースを使ってたんじゃない？
ユダヤ人だからなのか細かい金額にもうるさくて、
『俺は値引きはしない』と常に公言しているような
商売人でもありました。
まあ、小さなグッズを多く作ってたから、
値引きのしようがなかったとも言えますが。
で、このキューは……。
シャフトとバットがバラけない方が、
組んだり持ち運んだりする時に便利だろうという
アイディア一発勝負のキューですね（笑）。
『これでもう失くならないぞ！』という。
そして彼はこう付け加えるんですよ。
『かなり硬いけど、あのピンを外せば、
シャフトを取り替えることもできる。
ハイテクシャフトも使えるぞ』
ガッチガチで、キシキシ言いますが、
確かにシャフトからジョイントピンは抜けますし、
3/8-10山という汎用性のあるピンなので、
他のシャフトを付けられます。
そんな気ないけど（笑）。
これも結局、他の多くのアイテムと同じく
大して売れなかったと思います。
でもいいの。
ジョーは数撃ちゃ当たる方式でしたから（笑）。
たまに失敗の山から本当の成功品を生み出しちゃう。
他のメーカーがめんどくさがってやらないような
ことを試すし、変なところに労力をかける。
それで話題と驚きと、
たまに本当に使えるものを提供していた。
一時代を築いた面白いおじさんですね」
（了）
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